成績概要書(作成 2007年1月)

研究課題名:新品種候補だいず「中育52号」

担当部署:中央農試・作物研究部・畑作科
予算区分:指定試験
研究期間:1993−2006(平成5〜18年度)

 

1.  特性一覧表

系統名 だいず中育52号    組合わせ 新丹波黒/ツルムスメ

 注1)調査場所のⅤ,Ⅵは北海道産豆類地帯別栽培指針(平成6年3月農政部)」による地帯区分を示す。
 注2)道南農試の値は平成17〜18年の2カ年平均。
 注3) 色調は色差計(MINOLTA CM-3500d型)を使用し、D65光源、10度視野にて測定した。L*は数値が大きい方が明るい。
 注4)粗蛋白および全糖含有率は近赤外分析法(Infratec1241)による測定値(乾物当たり%、窒素蛋白質換算係数は6.25)。
 注5) 煮豆の硬さはテクスチャーアナライザー(SMS社製、TA-XTi)による測定値。

 障害抵抗性および加工適性(中央農試 平成15〜18年)

  注) − 印は検定試験ないし試作試験を実施していないことを示す。

 

2.だいず「中育52号」の特記すべき特徴

「中育52号」は、百粒重が60g以上と「ユウヅル」よりかなり重く、裂皮の少ない晩生の白目極大粒系統である。生豆の種皮色は「ユウヅル」よりやや暗いが、蒸煮豆の明るさは同程度であり、納豆、煮豆等の加工に適する。

 

3.北海道で優良品種に採用しようとする理由

北海道の南部(以下「道南」という)地方の大豆は、温暖な気象条件を生かし他の地域では栽培困難な晩生の「ユウヅル」(昭和46年育成)や「晩生光黒」(昭和10年育成)などが栽培され、平成18年には2,082haまで拡大し、土地利用型作物として重要な品目となっている。
「ユウヅル」は、地域品種銘柄“つるの子”として白目の極大粒で食味に優れることから高級な煮豆など差別化商品向けの需要を担っているが、裂皮の発生が多く等級や製品歩留まりが劣るため生産は不安定である。一方、「晩生光黒」は、黒大豆の地域品種銘柄 “光黒”の中でも極大粒のため、煮豆などの需要に応えてきた。しかし、最近の黒豆ブームによる中生品種「いわいくろ」(平成10)の道央・十勝地方での急激な生産拡大、さらに商社等による原料の開発輸入により、平成18年には供給過剰となり光黒銘柄の価格が大きく低下した。こうした中、道南地方の生産者や農業団体からは、“つるの子”や“光黒”とは異なる付加価値の高い銘柄となり、さらに品目横断的経営安定対策にも対応する黄大豆での新品種が強く望まれている。
「中育52号」は、百粒重が60g以上あり、これまでの道産白目黄大豆にはない粒大をもつ系統である。そのため、“つるの子”銘柄の規格より更に大きいふるい目9.7㎜以上の収量が多いことから、極大粒大豆を使用する実需者からは、その特徴を生かした納豆、煮豆、煎豆および甘納豆の原料として評価が高く、新たなブランドとしての期待が大きい。
以上から、「中育52号」を道南地域における付加価値の高い特産品種として普及することにより、生産者と実需者の協働による新たなブランド形成、これを通じた地域農業の活性化および大豆関連産業の振興への貢献が期待される。

 

4.普及見込み地帯

北海道の大豆栽培地帯区分Ⅴ,Ⅵの地域およびこれに準ずる地帯。

Ⅴ 渡島南部(道南農試): 86%、+5日
   檜山北部        :109%、+7日

Ⅵ 檜山南部       : 92%、+4日

   注)各地帯における「ユウヅル」との子実重
   および成熟期の比較(平成17年〜18年)

 

5.栽培上の注意

 1)      ダイズシストセンチュウ抵抗性は“弱”なので、発生圃場への作付けは避ける。
 2)      ダイズわい化病抵抗性は“弱”なので、適切な防除に努める。
 3)      種子消毒その他の肥培管理及び収穫調製は従来の極大粒品種に準じて行う。