新品種候補(作成 平成18年1月)
作物>冬作物>小麦>1−2−001−1
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育種事業課題名:小麦新品種候補系統 「北見81号」の概要
担当研究室:北海道立北見農業試験場・作物研究部・小麦科
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キーワード:秋まき小麦、製めん適性、製粉性、多収
1. 特性一覧表
系統名    小麦「北見81号」 組合せ    北見72号(きたもえ)/北系1660
特性     長所  1.灰分が低く、製粉性に優れる。
             2.粉色およびゆでうどんの色が優れ、製めん適性に優れる。
             3.多収である。
        短所
採用県および普及見込み面積   北海道  60,000h

試験場所 北見農試(育成地)中央農試上川農試十勝農試
系統・品種名北見81号ホクシンきたもえ北見81号ホクシン北見81号ホクシン北見81号ホクシン
形   質 (対照・標準)(比較) (対照・標準) (対照・標準) (対照・標準)
叢性直立直立直立
株の開閉
早晩性やや早生やや早生やや早生やや早生やや早生やや早生やや早生やや早生やや早生
出穂期(月日)6/116/106/126/76/76/106/96/96/7
成熟期(月日)7/287/267/287/227/197/197/187/247/22
稈長(cm)848583979484828587
穂長(cm)8.58.67.49.29.18.78.78.68.8
穂数(本/㎡)785760762898749779676634612
芒の多少・長短無芒無芒無芒
穂型棒状棒状棒状
ふの色淡黄淡黄淡黄
耐寒性
耐雪性やや強やや強やや強
赤さび病抵抗性やや強やや弱やや弱
うどんこ病抵抗性やや強やや強やや強
赤かび病抵抗性やや弱やや弱
コムギ縞萎縮病抵抗性やや弱やや強
耐倒伏性
穂発芽性やや難やや難
子実重(kg/a)85.174.869.790.271.873.766.068.958.6
対標準比率(%)11410093126100112100118100
リットル重(g)824819815802798789779800794
千粒重(g)38.938.939.037.337.836.035.939.238.3
原麦粒の見かけの品質中上中上中上
原粒粗蛋白質含量(%)8.89.69.79.99.99.310.27.68.4
原粒灰分含量(%)1.371.461.391.501.601.521.541.411.58
粉質粉状粉状粉状
製粉歩留(%)72.567.067.770.165.470.165.969.764.0
ミリングスコア87.481.782.684.778.685.479.185.977.1
60%粉 粗蛋白質含量(%)7.58.08.18.58.47.88.56.37.2
60%粉 灰分含量(%)0.380.400.380.390.420.370.420.370.43
カラーバリュー-1.46-1.11-1.19-0.42-0.36-1.56-0.37-1.44-0.91
粉の明るさ(L*)90.4590.4290.0690.1189.8790.3390.0290.6390.28
粉の赤色み(a*)-0.87-0.73-1.04-0.90-0.51-1.06-0.69-0.98-0.65
粉の黄色み(b*)16.7515.8718.4317.9716.2217.8915.9517.3316.49
アミログラム最高粘度(BU)607817528660835750952665832
ファリノグラム バロリーメーターバリュー454945
エキステンソグラム伸長度(E, mm)186210178
        伸長抵抗(R, BU)251228204
        形状係数(R/E)1.341.071.12
ゆでうどんの官能検査(色)18.114.017.517.514.017.914.018.414.0
  〃    (粘弾性)17.417.515.517.317.517.217.517.417.5
  〃    (合計)74.170.071.373.570.073.670.074.370.0
試験年度(播種)平14〜16年度平14〜16年度平14〜16年度平14〜16年度

注1)品質特性はビューラーテストミル製粉による成績。
注2)品質特性は標準播栽培の成績。ただし、北見農試品質特性のファリノグラム、エキステンソグラムは平成14年は標準播栽培、平成15年はドリル播標肥栽培、平成16年はドリル播多肥栽培の成績。

 

2. 「北見81号」の特記すべき特徴
 成熟期は「ホクシン」より2日遅い。稈長、穂長は「ホクシン」と同程度である。穂数は「ホクシン」よりやや多い。赤かび病抵抗性は“中”、穂発芽性は“やや難”で「ホクシン」より優れる。コムギ縞萎縮病抵抗性は“やや弱”である。子実重は「ホクシン」より多い。原粒粗蛋白含量は「ホクシン」より0.8%程度低い。
原粒灰分含量は「ホクシン」より0.1%程度低い。製粉性および製めん適性は優れる。

3. 優良品種に採用しようとする理由
 北海道は国内で最も大きな小麦の産地であり、作付面積では国内産全体の54%、収穫量では62%を占めている(平成17年産)。小麦の流通は平成12年から民間流通に移行し、実需者からは高品質で安定した小麦生産が求められており、また、平成17年に策定された新たな「食糧・農業・農村基本計画」では、平成27年の国内産小麦の生産努力目標を近年の最大生産量の86万トンとし、品質・生産性の向上に向けた取り組みの必要性が示されている。具体的な目標としては実需者ニーズに応じた計画的な生産、めん色・製粉性の工場した加工適性の高い品種の育成・普及の加速化、雨害の軽減等による生産コストの低減である。さらに平成17年より麦作経営安定資金および契約生産奨励金は、灰分含有率、蛋白含有率、容積重、フォーリングナンバーの4項目の分析値による新ランク区分が導入された。これらのことから生産者、実需者ともに、より一層の品質の向上と生産の安定性を求めており、これらに対応する新品種の普及が必要となっている。
 北海道では「チホクコムギ」の育成により、日本めん用小麦としての品質は国内産としてはトップクラスに評価されるようになった。その後「タイセツコムギ」、「ホクシン」、「きたもえ」が育成され、品質および安定性は更に向上し、道産小麦に対する評価は高い。しかしながら、日本めん用小麦として西オーストラリアから輸入される小麦と比較すると粉色や製粉性などが劣っている。
 「北見81号」は従来の日本めん用小麦品種に比べて、灰分含量が低く、製粉性に優れており、粉色および製めん適性が優れている。また、多収で穂発芽耐性に優れており、耐病性についても「ホクシン」並か「ホクシン」より優れている。
 以上のことから、「北見81号」を「ホクシン」の一部に置き換えて普及することにより、北海道産小麦の品質および生産の安定性向上、生産コストの低減が図られると期待される。

4. 普及見込み地帯     北海道一円

5. 栽培上の注意
 1)コムギ縞萎縮病抵抗性は“やや弱”であるため、多発圃場での栽培を避ける。