農業研究本部

ベニバナインゲン未熟子葉からの植物体再分化系の確立と体細胞育種への応用

玉掛 秀人,中川 善一,南 忠,佐藤 仁

北海道立農試集報.82,103-112 (2002)

 不定芽経由による植物体再分化系の培養法は,変異体の作出が可能なことから,ベニバナインゲン未熟子葉を用いて同培養系を確立した。最も効率的な植物体再分化は,7~11mmの未熟子葉を外植片とし,MS基本培地に0.05mg/l NOA,5mg/l BAP,1~2mg/l ABA,45~60g/l ショ糖,2g/l ゲルライトを添加した不定芽形成培地への置床で得られた。この条件により,置床した外植片当たりの植物体形成率は15%程度を示した。未熟子葉培養により再分化した植物体(R1世代)あるいはその後代(R2世代)より採取した未熟子葉の培養では,不定芽形成率,植物体形成率ともに高まる場合が多かった。幾つかの実験で得られた再分化個体は系統番号を付し,節培養により増殖し,温室にてポリポットに鉢上げした。鉢上げ個体の活着は,鉢上げ後の天候に大きく左右されることが多く,活着率は平均50%程度であった。圃場へ移植した再分化個体は,湿害の影響がないときには順調に生育し,移植系統の70~90%から後代種子を得ることができた。再分化当代(R1世代)の百粒重は,広い分布幅を示し,培養変異出現の可能性が示された。また,再分化当代と次世代(R2世代)の百粒重に正の相関関係が認められ,再分化当代での大まかな粒大選抜が可能と思われた。再分化個体からの大粒選抜によって,原品種より明らかに百粒重の重い系統(R7世代)を選抜育成することができた。


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