農業研究本部

サイレージの凍結と、それが貯蔵中の栄養分の損耗におよぼす影響

坪松 戒三、斎藤 久幸

北海道立農試集報.10,15-30 (1963)

 牧草を埋蔵したコンクリート・塔サイロについて、サイレージの凍結状況、貯蔵温 度の推移などについて調査し、あわせてサイレージの凍結が醗酵状況と栄養分の損耗 におよぼす影響を試験した。その結果は次項のとおりであった。 

1.密閉サイロ中のサイレージの表層と地上部北側壁際が30~50㎝の厚さに、氷 塊状もしくは氷屑状に氷結した。取り出し中のサイロでは、1夜の寒冷により表 面が210㎝の厚さに凍結した。
2.サイレージの水分含有率が高いと、凍結の程度ははげしくなるが、凍結部分の厚 さは小さくなる傾向がみられた。
3.サイレージの凍結はサイロ内気温の低下によると同時に、直接にサイロ壁の熱貫 流によっておこることがうかがわれ、このために、サイロの南側は直射日光の輻 射熱により凍結が防止され、北面は北風の冷却作用によって凍結が促進される関 係にあることが認められた。
4.外気温の低下によるサイレージの貯蔵温度の低下は、地上部は地下部より大きく サイロの北側は南側より大きい。サイレージ表面の貯蔵温度は平均2℃の日周的 変動をするが、サイレージ内部の温度は明らかな日周変動を示さない。
5.サイレージの凍結は表層部においては12月下旬より3月上旬まで続き、地上部 北側のサイレージは1月下旬より凍結し、その融解には4月上旬までを要した。
6.サイレージのpHの上昇、脂肪酸組成の劣化ならびにアミノ酸分解作用は凍結融 解後に著しい。長期の埋蔵期間における栄養分損耗の増加量の大部分は凍結融解 後の排出液による損耗であった。
7.サイレージの醗酵成分の状態と栄養分の回収状況に対する凍結の悪影響は、凍結 初期ならびに融解期における、凍結一融解の反覆による脱水作用で、排水液が増大することに原因しているものと考えられる。


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