農業研究本部

水稲の雑種初期世代集団に関する調査
主として出穂頻度、遺伝力及び遺伝相関について

柴田 和博、野村 稔、菅原 市男

北海道立農試集報.5,62-71 (1960)

 水稲育種における知見を増すために初期世代雑種集団5組合せの調査を行ない、次のようなことが知られた。

1.組合せ親の一方に極晩生種を用いた組合せではF2集団中の極晩生個体が自然淘汰を受けて、F3集団は急速に早生化する。また、F2で採種可能な出穂期のものが全体のわずかな部分にすぎない場合があり、このようなときには相当多数の個体を養成するか、あるいは採種可能個体数を増すための手段を考えなければならない。
2.稈長、穂長、穂数、穂重及び全重などを含む12形質の遺伝力を調査した。これらの中で広義の遺伝力の高かった形質は稈長、平均1茎重、平均1穂粒数及び不稔歩合の4形質であり、特に稈長と不稔歩合は組合せによらず安定した高い値を示した。穂重、全重、穂重歩合及び全粒数の遺伝力は最も低かったが、組合せによって多少違っていた。
3.1組合せのF3集団について、主として穂重及び不稔歩合と他形質の表現型、遺伝及び環境相関を計算した。表現型相関と遺伝相関とは多くの場合にほぼ同じ値であった。穂重は表現型では穂揃指数以外の全形質と有意な相関があったが、特に高かったのは全重、平均1穂重、穂重歩合及び不稔歩合との間であり、これらとは遺伝相関も比較的高かった。不稔歩合は稈長、穂重、全重、平均1穂重及び穂重歩合と相当高い負の相関関係があった。
4.出穂に関して主働因子が働いている場合はもちろんであろうが、本道のように出穂期の1~2日の差が不稔歩合等の形質に大きな影響を与えるような条件下では遺伝分散を正確に評価するために、雑種集団の分散を出穂期によって分割する必要があろう。


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