農業研究本部

Pseudomonas adzukicola A.Tanii T.Baba nov.sp.によるアズキの茎腐細菌病

谷井 昭夫、馬場 徹代

北海道立農試集報.42,29-42 (1979)

 1971年以来、北海道の富良野市以南の地方で、アズキに一種の細菌病の発生が認め られていた。  本病は初生葉および第一複葉の葉身と葉脈に斑点、条斑を形成し、それらは葉柄を 経由して主茎に達し、主茎は折れ易くなる。  この病徴から病名を茎腐細菌病(bacterial stem rot)とした。病原細菌は好気性桿 菌、グラム染色陰性、大きさ0.8-2.3×0.5-0.9(平均1.4×0.6)μm、運動性で1~3 本の極性鞭毛を有する。本病原細菌DPA(L)3菌株の加熱菌体抗血清は凝集反応で供試 した全ての植物病原Pseudomonas属細菌と反応した。寒天ゲル内二重拡散法では、本 病原細菌は種特異的な2個の耐熱性抗原を所有していたが、それらはD(K)1菌株を除 く8株のP.glycineaにも共通であった。本病原細菌は人為噴霧接種でアズキをはじめ、 インゲン(大正金時)、ササゲ、フジマメに病原性があったが、インゲン(大手亡)、ダ イズ、ソラマメ、エンドウ、ナタマメには寄生しなかった。  アズキ品種では大粒品種が小粒品種に比較して感受性の高い傾向にあった。本病原 細菌の細菌学的性質はbean halo blightグループの病原細菌に似ており、特にゼラ チン液化、マンニットールの利用、リパーゼ活性の点からP.glycineaに近かった。 しかしながら、本病原細菌はダイズに病原性なく、食塩を含まない肉エキス・ペプト ン培地での貧育、低耐塩性、尿素分解能、トレハロース、D-酒石酸、β-アラニンの 利用能の点で特徴があった。それ故本病原細菌にPseudomonas adzukicola A.Tanii  et T.Babaの学名を与えた。  なお本病の防除法として、カスガマイシンを3%含む粉衣剤による0.3%種子粉衣 と発芽直後からの銅水和剤による茎葉散布は有効であった。


全文(PDF)