農業研究本部

小麦新品種「チホクコムギ」の育成について

尾関 幸男、佐々木 宏、天野 洋一、土屋 俊雄、上野 賢司、長内 俊一

北海道立農試集報.56,93-105 (1987)

 秋播小麦「チホクコムギ」は,1969年北海道立北見農業試験場小麦育種指定試験地で,「北見18号」×「北見19号」のF1を母,「北系320」を父として交配し,以後同場で系統育種法によって選抜固定したものである。1973年「北系747」の系統番号が付され,特性検定試験および生産力試験,1974年には系統適応性検定試験に編入され,1976年には「北見42号」の地方番号を付し,奨励品種決定調査により全道各地の適否を検定した。その結果,1981年11月農林水産省に新品種「小麦農林126号」として登録され,「チホクコムギ」と命名された。本品種は,「ホロシリコムギ」に比べて,成熟期で1日遅く,稈が約5cm短い。稈質は強剛で耐倒伏性は強く,多収で特に多肥密植栽培に向く。千粒重は「ホロシリコムギ」に比べやや軽く,粒は豊満で外見品質は良い。「ホロシリコムギ」に比べ製粉性はすぐれ,粉は白く,蛋白含量はやや少ない。めん適性は極めて優れる。うどんこ病,赤かび病には「ホロシリコムギ」より弱く,耐穂発芽性も劣るが,成熟期後の粒水分の乾滅が早い。耐雪性がやや劣り,栽培適地は網走と十勝および石狩,空知,上川,胆振,日高管内の平年融雪期が4月15日以前の地帯である。


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