タマネギの生育期と Erwinia carotovora ssp. carotovora による軟腐病の発病との関係
田中 民夫、斎藤 泉
北海道立農試集報.57,61-66 (1988)
ほ場で生育中のタマネギの茎葉に軟腐病細菌を噴霧接種した。 その結果、軟腐病の発生は接種時期によって変動し、ある特定の時期に接種した場合にのみ、軟腐病が多発生した。 すなわち、6月中・下旬では、軟腐病の発生は遅れ、しかも少発生のまま推移した。7月になると接種時期が遅くなるにしたがって発生量が増加し、7月5半旬の接種により最も激しく発生した。この接種時期以後、まもなくタマネギの生葉数が最も多くなり、鱗茎肥大の最盛期となった。 したがって、生育の旺盛な時期に軟腐病細菌の感染がおこりやすく、ほ場における軟腐病の発病率が高まると考えられた。 一方、生育ステージの異なるタマネギに軟腐病細菌を噴霧接種すると生育が進んでいる個体ほど発病しやすいが、生育日数が100日に満たない場合には発病しなかった。 さらに、軟腐病細菌を葉身に注射接種した場合(1.18×10e6~3.86×10e6cfu/ml)、6月下旬の接種では発病しなかったが、7月および8月中旬の接種では、いずれも軟腐病の発病率が高かった。 注射接種で80%の個体を発病させるのに必要な菌密度は接種時期が遅くなるにしたがって減少した。すなわち、6月下句には3.86×10e7cfu/ml~3.86×10e8cfu/mlの範囲内にあったが、8月中句には1.56×10e2cfu/ml以下となった。
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