農業研究本部

融雪期の表面流去水が河川の水質に及ぼす影響
酪農地帯における肥料成分の流出と水質保全(第4報)

大村 邦男、黒川 春一

北海道立農試集報.62,35-45 (1991)

 融雪期の表面流去水が河川の水質等に及ぽす影響について調査を行った。
1.早春の河川流量及び水質の変化は融雪前期、融雪盛期、融雪後期の三つの時期に分けられ、融雪盛期における流量及び水質の変動が最も大きかった。
2.融雪期に農地で発生する表面流去水は各種栄養塩類を多量に含んでおり、当該流出水の河川への流達は水質に大きな影響をもたらすものと考えられた。
3.表面流去水の流下過程における成分濃度の変化は、地形及び植生の有無によって傾向を異にした。流水中の成分濃度が起点における濃度の10%以下となる距離は、裸地条件ではほぽ平坦地で50m程度であるが、傾斜地(斜度8~14度)では平坦地の2倍以上の距離を要するものと推測された。一方、草地では傾斜地(斜度8~10度)でも20mの距離でほぽ同等の低滅効果を表した。
4.流去水によって搬送された懸濁態成分等で形成された河川の底質は、有機態及び可溶性形態の成分割合が高く、栄養塩類の河川流水への供給源として水質に長期的な影響を及ぽすことが予想された。


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