1 サイレージ添加剤としての蟻酸

中央・天北・根釧農試、滝川・新得畜試

1目的
牧草に添加し、サイレージの品質改善と栄養損耗を防止する効果について試験を実施したが、サイレージの品質、酸組成、乾物保持効果、消化率などに加えて、家畜に長期給与した場合の家畜の健康、生産性、繁殖に及ぼす影響について試験した。

2 特性
蟻酸は強い酸臭と刺激臭をもつ無色の液体で、蟻酸濃度90%以上のものは消防法で危険物として貯蔵場所や使用についてはきびしい規制下におかれるが、サイレージ用は85%の濃度でこの法から除外されているが、有機酸で強酸であり(濃硫酸・濃塩酸と同じ)その取扱は厳重な注意を必要とする。

3 結果
(1) サイレージ調製に当っては添加剤は原則として用いず調製技術の原則を守つて調製すべきであるが、用いる方法として、いね科主体牧草には0.2~0.3%、まめ科主体牧草では0.3~0.5%の添加をおこない、その効果はあったが、この場合はプドー糖・乳酸菌の併用条件下で実施した。(中央)

(2) まめ科生牧草を刈取り、青刈給与時に0.5%添加し緬羊に採食せしめたがよく採食し、乾物消化率に変化はなかった。(滝川)

(3) いね科主体牧草に0.45%添加したサイレージを肉用育成牛に5ケ月間連続給与したが、動物臨床上の異常は認めなかった。(新得)

(4)混播牧草、アルファルファに0.2~0.5%添加したものは、乳牛育成牛はよく採食し増体量もよく、乾物消化率も向上した。

(5) 0.26%添加したサイレージを泌乳牛約30頭に193日間(日量約41Kgを)給与したところ、産乳量も普通に推移し体重も正常であり、血液、尿性状についても異常はなかった。(根釧)

4 指導上の注意事項
(1) 蟻醸は高水分原料牧草、まめ科主体牧草に添加効果が高い。

(2) 一般に85%濃度のものを使用するが、いね科牧草には0.3%、まめ科牧草に0.4%、混播牧草では0.35%とする(原料草に対する重量比)添加量が少いため均一に材料と混和させるよう措置すること。

(3) 原料草に添加する場合、フォーレージハーベスタにアプリケータ(添加装置)を装着し、ほ場での刈取時に添加する方が安全であり添加量を規制しやすい。アプリケータに菜液壜を装着する場合は軍手で作業をおこなわないでゴム手袋使用のこと。
また作業中トラクタに手洗い用の水、またはアルカリ性稀釈液を少量携行し、危害防止に対処しうるようにしておくこと。

(4) 高水分原料に添加するため、水分排出が促進されるため、必ず排汁処理ができるように措置しておくこと。

(5) 蟻酸は皮膚、粘膜をおかし、チョッパ、ヘイエレベーター、ワゴンの金属に錆を招くため、取扱時には防水メガネ、ゴム手袋を用い、機械類は使用後かかさず十分に水洗いし、刃類には塗油してやること。
また蟻酸容器は安全な場所に保全管理をし、子供等の手のとどかないところに保管すること。

(6) コンクリートサイロはモルタルの腐蝕を起すことが考えられるため、ビニールフイルムの使用、耐酸塗料によるサイロ壁面の保護につとめること。

(7) 蟻酸は水と炭酸ガスに分解しやすいが、動物体内における代謝作用については現在のところ十分な追求はおこなわれていない。

(8) 添加サイレージを開封後長期間給与する場合は、カビの発生の抑止には効果がなく、カビ発生を招くおそれが多い。

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