4 サイレージ添加剤及び防カビ剤としてのプロピオン酸 
中央・天北・根釧農試、滝川・新得畜試

1 目的
プロピオン酸が強い防黴力をもつことは既に知られているが、各種のサイレージの二次発酵に伴う発カビ防止の可否ならびに使用量と、本剤添加の効果として消化率に及ぼす影響を知るため試験を実施した。

2 特性
本剤は無色の液体で刺激臭をもつ有機酸で、500リットル以上保有する場合は消防法による危険物の適用をうけるので、保管については法の規制をうける。
プロピオン酸は塩類として一定量まで食品添加剤として認可されており、ケトージス予防効果があるとも言われている。

3 結果
(1)草サイレージ、稲わらサイレージ、穀実サイレージなどに開放貯蔵、密封貯蔵下で防黴効果は明らかであり、密封条件下で0.5%、開放条件でも0.5~1.0%で効果があり、持続期間は3~4週間程度で、過剰の添加は品質、養分保持率を低下せしめる。(中央)

(2)高水分原料、予乾原料に添加し、保存性、品質、酸組成の改善効果が認められ、0.4~O.6%の添加が良好で、育成牛の給与効果は高い。(根釧、滝川)

(3)えん麦穀実に添加し0.5%で長期保存効果があり、アルファルファ2番草にも0.5%添加でよく、めん羊の採食性に良好であり、乾物消化率に影響を与えなかった。(滝川)

(4)ふすまに10%を吸着させ、1日1頭当500g乳牛に給与したが、分娩後8週間の産乳、健康状態に異常を認めなかった。(根釧)

4 指導上の注意事項
(1) サイレージ調製時に多量の本剤を添加すると、乳酸発酵をおさえ、養分損失を来すおそれもあるため、必要最少量(中・高水分時0.5%、低水分原料に0.5~1.0%)にとどめ、開封後必要に応じて表面散布することが望ましい。

(2) 飼料用穀実には0.5~1.0%の範囲で添加し、それ以上は添加しないこと。

(3) 防黴効果は密封条件下では長期間持続するが、開封条件下では長期持続は困難である。開封後の添加には噴霧器を使用するとよい。

(4) ゴム手袋を使用して(軍手は不可)処理するが、大量に添加する場合はアプリケーター(添加器)を用いることがよい。また肌や手に付着した場合は水でよく洗い落す。

(5) 金属部分には錆を生ずるため、使用後は十分水洗いし塗油して保管すること。

(6) 塗装部分についても溶解作用をおこしてはげ落ちることがある。

(7) コンクリートに付着すると中和反応をおこし表面がいたむので、蟻酸に準じたビニール被膜を使用することが望ましい。

(8)本剤の使用についてもサイレージ調製としては原則として添加剤を用いない。穀実等の防黴剤として利用する場合はサイレージ調製用の添加剤とは考え方が異なる。


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