【普及奨励事項】
水稲「照稔」(うるち)に関する試験成績
  道立北見農業試験場 普通作物科

・ 育種目標
 早熟・耐冷・多収

・ 来歴
 本系統は北見市屯田町江頭利雄氏の育成によるもので、昭和28年(1953年)に「照錦」より稔実良好な1株を選抜したことにより始まる。昭和29年(1954年)に1本栽培を行い、分離した白毛と赤毛の中から良好なものを昭和34年(1959年)まで繰り返し選抜を行い、赤毛の後代より良好なものを「照稔」と命名した。農家には昭和35年(1960年)より配布栽培され始めたが、昭和37年(1962年)より増加しはじめ、41年(1966年)には「江頭系統」として、100%の作付割合となっている。
 このような実態から、昭和38年(1963年)に北見農試は江頭氏より、いわゆる「江頭系統」の種子の分譲を受け、当時最も栽培面積の多かった「照稔」を代表に取り上げ、本系統の生産力、特性について検討すると共に個体選抜の育成を併せ行い道内各関係農試奨励品種決定現地調査に供試してその地方適否を確かめたものである。

・ 特性
品種又は
系統名
粳糯
の別
熟  期 草型 稈  穂
出穂 成熟 長さ 細太 剛柔 長さ 粒着 ふ色 多少 長短
照  稔 晩早 中晩 偏数
農林20号 中中 中中 中間 稍太 稍密
フクユキ 中晩 晩早 稍柔
シオカリ 晩早 中晩 偏数 稍短

品種又は
系統名
芒又は
ふ先色
玄   米 障害抵抗性
形状 大小 色沢 光沢 腹白 縦溝
深浅
品質 いもち 耐冷性 耐倒伏
障害 遅延
照  稔 稍大 稍鉛色 中下 稍強 稍強 稍強
農林20号 赤褐 鉛色 稍少 稍浅 上中
フクユキ 黄白 銀色 稍多 中下 稍弱 稍強 稍強 稍弱
シオカリ 稍円 稍小 鉛色 稍少 稍浅 上下


・ 主要な具体的データー
 移植栽培・中肥(昭和38-41年平均)
品種又は
系統名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
成熟期における 不稔
歩合
(%)
a当り
玄米重
(kg)
収量
比率
(%)
10a当
屑米重
(kg)
青米
歩合
(%)
籾摺
歩合
(%)
玄米
立重
(g)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本)
照  稔 8.14 9.22 67.2 16.5 17.0 40.4 32.6 106 3.7 29.7 77.8 796
農林20号  .12  .25 75.2 16.2 15.4 58.3 2.18 71 3.1 34.3 78.8 804
フクユキ  .14  .28 69.8 15.6 17.5 49.1 27.6 90 3.7 43.4 77.3 790
シオカリ  .15  .28 69.9 15.2 17.0 45.8 30.8 100 4.7 42.1 76.1 793

品種又は
系統名
玄米
千粒重
十勝農試(昭39-41) 上川農試(昭39-41) 北見農試現地a当り
玄米重平均



(%)
出穂期
(月日)
a当り
玄米重
(kg)
収量
比率
(%)
出穂期
(月日)
a当り
玄米重
(kg)
収量
比率
(%)
昭38
5市町
昭40
7市町
昭41
8市町
3ヶ年
3市町
照  稔 19.9 8.15 36.7 111 8. 8 47.7 103 47.0 23.3 28.1 41.2 108
農林20号 18.3  .13 26.1 79  .7 38.0 82 35.9 6.2 15.7 26.6 70
フクユキ 17.9  .14 30.8 93  .6 47.4 102 46.5 18.2 23.4 38.0 99
シオカリ 16.9  .15 33.0 100  .8 46.4 100 46.0 24.3 20.2 38.2 100

・ 適用地帯並びに栽培上の注意
 適応地帯
  網走管内における「フクユキ」が剤倍されている地帯と「シオカリ」が遅すぎる地帯およびこれに準ずる地帯に適する。
 栽培上の注意
 1. 登熟が良好な系統ではあるが、北見地方では出穂の早晩では限界に近いものであるから、作付割合が多くならぬようにする。
 2. 耐冷性は「シオカリ」程度で特に強いものでなく、低温時には多肥で不稔が多くみられ、生育も遅延するので、多肥栽培は避けること。
 3. 多肥栽培にすると登熟も悪くなり穂揃が特に不揃となる。また生育期間に高温にあると過繁茂となり易いので、この面からも多肥栽培は避けること。
 (注)奨励品種については、種苗審議会の議を経て決定する。