【普及奨励事項】
上川北部におけるてん菜高畦移植栽培に関する試験成績
                  道立上川農業試験場畑作科

・ 目的
 上川北部のように融雪の遅延しやすい地帯および重粘傾斜地において高畦栽培が生育、収量におよぼす効果について検討する。

・ 試験方法
 1. 耕起および砕土:トラクターにより約20cmの深さに耕起し、ロータリーテイラーで砕土を行った。
 2. 施肥および成畦の方法:堆肥は耕起前に全面散布し、その他の化学肥料を慣行通り作条に施肥した後培土器により約15cmの高さに盛土し、その上を軽く鎮圧して成畦した
 3. 供試品種  KWS-E
 4. 1区面積および区制  1区20m2  3連制
 5. 標準区の施肥量  窒素12kg、りん酸12kg、カリ8kg、苦土8kg、多肥区は化学肥料のみ倍量

・ 試験成績の概要
 1. 高畦の生育、収量に対する効果
  平畦に比べ高畦栽培の増収率は沖積土標準肥で19%
  沖積土多肥区で26%、また傾斜地標準肥27%、傾斜地多肥区では50%をしめた。効果をしめした原因としては次のことが考えられる。
  1) 湿害の軽減:湿害による生育障害および根ぐされの減少が認められた。
  2) 作土の効率的利用
  3) 施肥効果:高畦区の生育は終始良好で傾斜地の施肥量の多い区にその傾向が大であり、高畦区の施肥位置がおおよそ適当であったと考えられる。
  4) 春期の地温上昇効果:本試験における調査では高畦区の最高最低地温は平畦区より高く生育に良好な影響を与えたものと推察される。

 2. 作業上の利点
  1) 定植作業上の利点:圃場の乾燥が促進されるので降雨後でも慣行法に比べて早期に定植が可能となり適期に作業をすすめる上に効果的であった。
  2) 中耕、除草労力の軽減:成畦して盛土した部分の物理性は収穫時まで良好な状態が維持するので中耕の必要はない。しかし崩落した土を復元する目的と培土、除草をかねて1〜2回軽く培土すれば手取り除草労力がかなり節減される。また盛土部分の表層が乾燥するので雑草の発生量も平畦より少ない。

 3. 傾斜地の土壌侵蝕防止効果
  等高線の方向に高畦を成畦した場合は土壌侵蝕の防止効果が極めて大である。とくに裸地に近い状態の生育初期にその効果が顕著である。

・ 主要成果の具体的データー
 昭和40年度成績(3区平均)
試験区別 沖積土 傾斜地
栽培法 株間 施肥量 10a当根重
(kg)
収量比
(%)
根中糖分
(%)
10a当根重
(kg)
収量比
(%)
根中糖分
(%)



25cm 標肥 2.575 62 17.25 2.455 59 18.85
多肥 3.127 74 17.10 3.015 73 19.20
30cm 標肥 2.632 63 17.20 2.637 64 19.00
多肥 2.978 71 17.35 2.794 68 18.80



25cm 標肥 4.287 100 17.80 4.161 100 19.20
多肥 4.721 112 17.85 4.415 106 19.70
30cm 標肥 4.791 113 18.00 4.098 99 19.35
多肥 4.923 116 18.20 4.071 98 19.40



25cm 標肥 5.035 119 18.40 4.630 111 19.80
多肥 5.585 134 18.20 4.960 120 19.45
30cm 標肥 5.128 122 18.15 4.750 115 19.75
多肥 5.393 130 18.30 5.130 124 19.45

 昭和41年度成績(3区平均)
試験区別 沖積土 傾斜地
栽培法 株間 施肥量 10a当根重
(kg)
収量比
(%)
根中糖分
(%)
10a当根重
(kg)
収量比
(%)
根中糖分
(%)



25cm 標肥 2.076 47 16.4 1.214 57 16.4
多肥 2.112 48 16.6 1.383 65 16.6
30cm 標肥 1.855 43 16.2 1.057 49 16.2
多肥 2.353 55 16.3 1.177 57 16.3



25cm 標肥 4.375 100 16.9 2.210 100 16.9
多肥 4.714 108 16.6 2.454 111 16.6
30cm 標肥 4.237 97 16.8 2.180 99 16.8
多肥 4.408 101 16.8 2.840 128 16.8



25cm 標肥 5.076 116 17.1 3.060 136 17.1
多肥 5.245 120 17.1 3.727 169 17.1
30cm 標肥 5.093 117 16.5 3.203 144 16.5
多肥 5.240 120 16.5 4.103 188 16.5

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 1. 土壌が軽しようで旱魃にかかりやすい地方や定植期頃に強風の多いところは不適当と思われる。
 2. 元来高畦栽培は早期に定植して多収をはかる目的もあるので、高温乾燥期に入ってからの高畦栽培は効果も少なく、また、活着不良になる危険もありさけるべきである。もし、都合により定植作業がおくれるような場合は土壌水分の十分あるうちに成畦だけをすめせておく必要がある。