【普及奨励事項】
ミグサレン水和剤によるりんごモニリア病(実ぐされ)防除に関する試験成績
               道立中央農業試験場園芸部江部乙りんご試験地

・ 目的
 りんごモニリア病の実ぐされ防除に対するミグサレン水和剤50(ビス(ジメチルチオカルバモイル)スルフイド50%)の効果を検討する

・ 試験方法
 1. 国光、紅玉の成木を供試
 2. 小規模試験(大型分性胞子の柱頭接種試験)
  (1) 開花中に大型分性生胞子の柱頭接種、並びに人工授粉を行い、実ぐされの発生を調査
  (2) ミグサレン水和剤50を800倍の濃度で肩掛噴霧器で360L/10a散布した
  (3) 当日開花する花を用い花叢花とした
  (4) 処理は、ミグサレン散布(胞子接種、人工授粉をせず無散布)、授粉同時接種24時間後散布、授粉同時接種無散布、無処理(胞子接種、人工授粉せず無散布)、散布24時間後授粉同時接種の5処理で行った
 3. 大規模散布試験
  (1) ミグサレン水和剤50を500、800、1000倍の濃度でSSを用い、360L/10aで散布した
  (2) 



(ア) 中心花満開期散布       ……1回800倍散布
 40.41年
(イ) 側花               ……1回   〃
(ウ) 中心花及び側花満開期散布 ……2回800倍散布
(エ) 無散布



(ア) 500倍散布    ……満開期に1回散布
   41年 (イ) 1000倍散布   ……  〃
(ウ) 無処理
 (3) 結実歩合と実ぐされの発生は1樹当り100〜500花叢につき結実を調査した

・ 試験結果の概要
 1. ミグサレンの散布により実ぐされの発生を減少させる効果は明らかである。
 2. 大型分生胞子の柱頭接種24時間後におけるミグサレンの散布によって実ぐされの発生を減少させる効果は明らかである。
 3. ミグサレンの散布により結実率を低下させることが認められた。
 4. 散布時期としては、中心花満開期に散布すると中心花の結実を低下させることがあるので側花の満開期に散布することが良い。
 5. 散布濃度800倍が適当である。
 6. いずれの場合も葉に対する薬害は認められない。

・ 主要成果の具体的データー
 成績1 昭和40年度
区  別 調査果数 結実果数 結実歩合
健全果 実ぐされ果 健全果 実ぐされ果
ミグサレン散布区 195 77 2 79 39.9 1.0 40.9
無  処  理  区 182 66 20 86 36.3 11.0 47.3
授粉、同時接種24時間後
ミグサレン散布区
186 78 13 91 41.3 7.0 48.9
授粉、接種無散布区 132 31 72 103 23.5 54.5 78.0
  注) 4樹平均
     試験処理月日  40.6.9  PM3.00  処理当日56mmの降雨あり(雨中処理)
     調査月日     40.6.24
     供試花  中心花、側花の区別なく当日開花したものを供試

 成績2 昭和40年度
区  別 調査果数 結実果数 結実歩合
健全果 実ぐされ果 健全果 実ぐされ果
ミグサレン散布区 200 52 8 40 26.0 4.0 30.0
授粉、同時接種24時間後
ミグサレン散布区
192 38 5 43 19.6 2.7 22.4
授粉、接種無散布区 197 75 26 101 37.1 13.1 51.3
 注) 4樹平均
     試験処理月日  40.6.10  AM9.30〜PM4.30  (処理6時間後散布区のみ)
     調査月日     40.6.24
     供試花  中心花、側花の区別なく当日開花したものを供試

 成績3 昭和40年度
区 別 調査樹数 調査果数 実ぐされ果数 実ぐされ果率(%)
散布24時間後
胞子接種及び授粉
4 203 13 6.4
胞子接種及び授粉
24時間後接種散布
4 203 31 15.3
胞子接種及び授粉
無散布
4 203 151 74.4

 成績4 昭和40年度
区  別 調 査
花叢数
調査
果数
結実果数 結実歩合(%)
中心果 側果 中心果 側果
健全果 実ぐされ果 健全果 実ぐされ果 健全果 実ぐされ果 健全果 実ぐされ果
中心花満開期
散布(6月3日)
600 2.785 45 112 157 429 816 1.245 7.5 18.7 26.2 15.4 29.3 41.7
側花満開期
散布(6月8日)
600 2.541 148 56 204 426 508 934 24.7 9.3 34.0 16.8 20.0 36.8
満開期2回散布
中心花側花
1. (6月3日)
2. (6月8日)
600 2.692 102 61 163 463 582 1.045 17.0 10.2 27.2 17.2 21.6 38.8
無散布 600 2.612 67 194 261 216 885 1.101 11.2 32.3 43.5 8.3 33.9 42.2
  注) 供試品種  紅玉成木  散布月日 6月3日、8日  供試濃度800倍
     調査月日  6月22日  樹上調査

 成績5 昭和41年度
   樹  別 花叢数 中心果
結実数
側花(果) 実ぐされ果数 結実歩合 実ぐされ歩合
結実数 中心果 側果 中心果 側果 中心果 側果
中心花満開期散布
6月1日
1 100 83 479 156 6 2 83.0 32.6 6.0 0.4
2 100 90 480 166 4 7 90.0 34.6 4.0 1.6
3 100 87 483 143 0 8 87.0 29.6 0 1.7
計・平均 300 260 1.442 465 10 17 86.7 32.2 3.3 1.2
側花満開期散布
6月4日
1 100 43 485 206 3 5 43.0 42.5 3.0 1.0
2 100 74 493 191 1 8 74.0 38.7 1.0 1.6
3 100 64 486 180 1 8 64.0 37.0 1.0 1.6
計・平均 300 181 1.464 577 5 21 60.3 39.4 1.7 1.4
中心花側
花満開期2回散布
6月1、4日
1 100 70 487 163 0 6 70.9 33.5 0 1.2
2 100 59 485 138 0 1 59.0 28.5 0 0.2
3 100 57 486 207 0 3 57.0 42.9 0 0.6
計・平均 300 186 1.458 508 0 10 62.0 34.8 0 0.7
無  散  布 1 100 73 491 122 1 8 73.0 24.8 1.0 1.6
2 100 68 482 221 3 17 68.0 45.9 3.0 3.5
3 100 67 485 233 6 13 67.0 48.0 6.0 2.7
計・平均 300 208 1.458 576 10 38 69.3 39.5 3.3 2.6
  注) 結実調査は樹上で行い、実ぐされ調査は、全果を採収し割って調査した。
     供試品種  国光成木
     散布月日  6月1、4日
     供試濃度  800倍
     調査月日  6月21日

 成績6 昭和41年度  使用濃度比較
供試品種  区 樹別 花叢数 中心花
結実数
側 花 実ぐされ被害 結実歩合
結実数 調査
果数
実ぐさ
れ数
実ぐされ
果率
中心果 側果




ミグサレン
   500倍
1 100 76 472 294 412 4 1.0 76.0 62.3
2 100 78 471 288 486 1 0.2 78.0 61.1
3 100 76 468 316 526 8 1.5 76.0 67.5
4 100 69 474 224 534 5 0.9 69.0 74.3
平均 100 74.8 471.2 280.5 489.5 4.5 0.9 74.8 59.5
ミグサレン
   1000倍
1 100 97 470 341 533 11 2.1 97.0 72.6
2 100 83 440 338 436 7 1.6 83.0 76.8
3 100 79 471 383 488 21 4.3 79.0 81.3
4 100 84 438 309 433 9 2.1 84.0 70.5
平均 100 85.8 454.8 342.8 472.5 12.0 2.5 85.8 75.4
無 散 布 1 100 71 432 235 511 57 11.2 71.0 54.5
2 100 81 439 254 510 36 7.1 81.0 57.9
3 100 68 478 288 544 50 9.2 68.0 60.3
4 100 61 470 272 539 43 8.0 81.0 75.9
平均 100 75.3 454.8 262.3 526.0 46.5 8.9 75.3 57.7




ミグサレン
   500倍
1 100 73 492 136 592 6 1.0 73.0 27.6
2 100 78 488 132 588 11 1.9 78.0 31.1
平均 100 75.5 490 144 590 8.5 1.4 75.5 29.4
ミグサレン
   1000倍
1 100 66 489 117 589 5 0.8 66.0 23.9
2 100 62 491 223 591 4 0.7 62.0 49.4
平均 100 64.0 490 170 590 4.5 0.8 64.0 34.7
無 散 布 1 100 73 485 122 585 19 3.2 73.0 25.2
2 100 68 493 221 593 20 3.4 68.0 44.8
3 100 67 486 233 586 19 3.2 67.0 47.9
平均 100 69.3 488 192 588 19.3 3.3 69.3 39.3
  注) 散布月日 紅玉5月30日  国光6月 4日 満開期1回散布
     調査月日  〃 6月14日   〃 6月21日

・ 奨励又は指導参考上の注意
 1. モニリア病の柱頭侵入による実ぐされの発生を防止するために、ミグサレ水和剤50の800倍に散布はかなり効果が期待できる。
 2. ミグサレンの散布に当たっては、次の点に注意すること。
  (1) 実ぐされ発止の危険性がある場合に散布する。
  (2) 散布に際しては、中心花の満開期をさけ、側花の満開期に散布すること。
  (3) 必ず単用で用いること。