【普及奨励事項】
(3) 乳用雄子牛育成時における全乳、カーフミール制限給与後の濃厚飼料増給の効果
道立根釧農業試験場 酪農科

・ 目的
 乳用子牛の経済育成ならびに雄子牛活用による肉生産技術の開発

・ 試験方法
 乳用雄子牛12頭を供用し、育成時における全乳、カーフミール制限給与後の濃厚飼料増給による生後6カ月間の発育ならびに経済効果を検討し、更に継続して生後19カ月間の体肉増加、経済性を調査した。また、各月令時点における粗飼料の適合性も検討した。
 子牛生産季節が生早期に適合した育成条件下では、ほ育飼料として全乳24〜127kg、カーフミール前後期用含めて27〜91kgの給与範囲でHCAJ下限発育値に到達した。濃厚飼料の給与量はほ育期に体重0.8〜1.0%、臨乳後に体重の1.0〜1.2%程度に増給することが発育増加上、経済的に有利であった。また、良質粗飼料主給の育成型では生後6カ月令以降から必要栄養の最少摂取が可能となり、発育遅延の恢復は生後13ヶ月令以降の放牧期に顕著であった。したがって、草地依存地帯における子牛の発育増加あるいは肉生産上有利な採算を得る方法としては、少なくても2夏250日以上、育成全期間の40〜50%を放牧育成する必要のあることを認めた。

 乳用雄子牛の19カ月令体重450kg到達に必要なほ育ならびに補助飼料(B群増給組を採用)
月令 全乳
(kg)
カーフミール(A)
(kg)
カーフミール(B)
(kg)
配合飼料
(kg)
粗飼料
1

10 22.5kg        




│二
│番
│乾
│牧
│草
│/
│冬
│・
│夏












│┐
┘│
 │
 │ 一
 │ 番
 │ 乾
 │ 牧
 │ 草
 │ サ
 │ イ
 │ レ
 │ │
 │ ジ
 │┐併
 ┘│用
   │/
   │冬
   │
   │放
   │牧
   │依
   │存
   │/
   ┘夏







│青
│刈
│又
│は
│放
│牧
│/
│夏







































│サ
│イ
│レ
││
│ジ
│主
│給
│/
│冬






│放
│牧
│依
│存
│可
│能
│月
│令
│草








20 55.5(78.0)      0.4
30 40.0(118.0) 4.0   0.7(1.1)
2

40 9.0(127.0) 10.0(14.0) 4.5 1.5(2.6)
50     8.0(12.5) 4.0(6.6)
60     10.0(22.5) 4.0(10.6)
3

70     7.0(29.5) 7.4(18.0)
80     7.0(36.5) 7.5(25.5)
90     5.0(41.5) 9.0(34.5)
4

100     4.0(46.5) 12.0(46.5)
110       14.0(60.5)
120       15.0(75.5)
5

130       16.0(91.5)
140       16.3(107.8)
150       17.0(124.8)
6

160       18.0(142.8)
170       19.2(162.0)
180       20.0(182.0)
7       21.0(203.0)
8       21.7(224.7)
9        31.0(255.7)
10        28.0(283.7)
11       31.0(314.7)
12       30.0(344.7)
13       15.0(359.7)
14       12.5(372.2)
15        
16        
17        
18       31.5(403.7)
19       45.0(448.7)
  備考:生後6カ月令までに必要とする粗飼料:乾牧草227.0kg青刈(放牧)395.0kg
      〃 19カ月令        〃       乾牧草830.0kg放牧(青刈)6151.0kg
                              牧草サイレージ4770kg

 発育増加及び育成法(1頭当り平均)
区分/
月令
制 限 増 給 育成の方法
体高
(cm)
体重
(kg)
体高
(cm)
体重
(kg)
生時 73.2 45.3 73.5 45.7 ┐全乳、カーフミール制限
3 85.1 93.9 88.7 101.5 ┘         (〜3カ月令)
6 98.5 147.7 104.0 190.3 ├濃厚飼料増給(3〜6カ月令)
10 111.7 209.3 115.0 252.7 ├サイレージ乾草併用
12 114.6 251.7 119.3 397.0 ├濃厚飼料制限(6〜13カ月令)
14 118.5 301.8 122.7 328.7 ├放牧依存   (13〜18カ月令)
19 132.5 448.5 134.5 459.6 ├サイレージ主給(17〜19カ月令)
増加量 59.3 403.2 61.0 413.9 ├濃厚飼料無給   制 限






(kg)
全      乳 72.1 75.7       経済性 (円)
       制限 51.530
飼料費<
       増給 53.758
       制限 100.900
体肉増加<
価   格 増給 103.410
  ※ 19カ月令時点        
カーフミール 63.6 59.5
濃      飼 409.6 468.2
乾  牧  草 904.7 838.8
牧草サイレージ 4.831.3 4.770.0
生 草 (放牧) 6.160.5 6.118.5

 育成全期間中の放牧生草利用日数と体重増加
期間および体重 育成1年次
(生後6カ月間)
育成2年次
(生後7〜
19カ月間)
放牧
期間
の計
育成
全期間
の計
生後7〜19
カ月令の体重
増加(kg)
放牧期間(日)
 日  令
     制限組
114
30〜144
69.2
136
389〜527
124.6
252
(435)
193.8
578

403.6


301.1
体重増加

     増給組


97.3
(30.9)%
106.1
(25.6)%
(48.0)%
203.4
(49.1)%
414.4 ※ 414%
   269.3
※ 39.4%
  注) 1. ( )内数量値は育成全期間の放牧依存率と体重増加率
     2. ※育成2年次の体重増加総量中、放牧増体の占め割合

・ 普及指導上留意すべき事項
 1. 生後18〜20カ月令の雌牛発育基準到達を一応の肉造成上の経済的水準と見なし、草資源主利用による育成を行う。
 2. 2夏250日以上、発育基準(450kg以上)到達期間の40〜50%を放牧に依存する。
 3. 幼令期における育成は2頭以上の集団房とせず、ほ育飼料(全乳・代用乳)を制限し、その代替として濃厚飼料を生後6カ月間に180〜240kg給与し、生牧草(豆科主構成)を十分利用する。
 4. 生後6カ月令以降は乾牧草、サイレージ、併用給与、生後10カ月以上はサイレージ多給、乾牧草併用給与し、放牧期間は濃厚飼料は給与しない。
   育成期間に要する濃厚飼料は400〜470kg程度でよい。
 5. 道東、道北地方では寒冷が問題となるので、給与飼料の熱供給力、保温に留意すべきである。
 6. 雑飼料主体育成が主旨であるから、その質如何によって体肉増加に影響するので、地域の気象条件に適合した良質飼料生産を行うべきである。