【指導参考事項】

飼料用ビート品種比較試験成績 道立根釧農業試験場　作物科

・　目的
　飼料用ビートの品種については、優良品種に指定され普及しているものに加えて、最近になって輸入又は育成されているものがある。これらについて菜根、乾物の両収量及びその他の特性の検討を行うとともに、てん菜栽培で普及の著しい紙筒育苗移植法を飼料用ビートで採用した場合の品種反応について検討する。更にこれらの資料により、根釧地方で飼料用ビートと混在し、同様の目的で栽培されているルタバガとの比較を菜根、乾物の両収量について行う。

・　試験方法
　(1)　耕種梗概　標準耕種法による。畦巾55cm、株間22.5cm。10アール当り施肥量、堆肥2.000kg、硫安15kg、智利硝石22.5kg、過燐酸石灰47kg、硫酸加里7.5kg、但し紙筒移植法による場合は堆肥以外の肥料について、それぞれ50%増肥した。褐斑病の防除は37年及び38年・39年の無防除区を除き、原則として銅剤により2回行い、ヂノミ、アカザムグリハナバエについては発生に応じて適宜防除した。
　(2)　区　　　制　　1区10.89m²、乱塊法3〜4反復。
　(3)　試験年次　　Sugar Mangold他15品種。
　(4)　試験年次　　昭和32、37〜41年(6年)
　(5)　試験構成　　昭和32、37年、品種比較。昭和38年、品種比較及び褐斑病の防除、無防除。昭和40、41年、品種比較及び直播、紙筒移植。但し品種以外の要因については隣接圃場を用いたので対照はない。

・　試験成果の概要
　従来普及しているBarres Strya、Sugar Mangold他にHalf Sugar Yellowも出廻っており、MGMやBarres Feritzlev等の品種も市販されている。そのような品種のほとんどを含んでいる供試材料の中にあってあるものは乾物率が高く、またあるものは褐斑病に対する抵抗性が高い等の長所を有する品種があるものの、菜根部収量、乾物収量を綜じてHalf Sugar Yellow、Sugar Mangoldの両品種が優っていた。また紙筒移植によっても傾向は全く変わらなかった。しかし移植と直播の比較で見ると、紙筒移植による場合の直播に対する増収割合はBarres Strnoでは菜根部重で高く、Half SugarRedの如き高乾物率品種では乾物率において高かった。したがって褐斑病の多発する場合は勿論、菜根部の更に多収であるような条件の下での品種反応は当然変わって来ることが予想される。ルタバガとの比較では、菜根部はもとより、乾物収量でも概してルタバガの方が多収であり、飼料用ビートで紙筒移植を行った場合にルタバガの直播に匹敵する収量を上げ得た。しかしルタバガについても品種間差が著しいのでその低収な品種では飼料用ビートに劣るとも言える。

・　主要成果の具体的データー

年　　次/ 処　　理/ 品　　種	32	37	38		39		40		41
	−	−	防除	無防除	防除	無防除	直播	移植	直播	移植
菜根重(割合)
Half Sugar Yellow	115	120			125	129	107	104	109	103
Sugar Mangold	116	96	120	114	109	108	113	107	114	119
Haje Sugar Red	70	105		84	118	120	86	94	96	85
Barres Stryno	74						114	134	104	123
Marienrist	125
Red Eckendorf		102		83	97	85
Hinderupgard		87	70	91
Yellow Daeno		100	114	91
Gull Daeno		99			91	106
Barres Feritjlev		78	123	130	95	89
Hvid Daenfeldt			80	86
Half Yellow			113	118	84	93
MGM NO.1			93	98	82	70	97	96	99	95
MGM NO.2			86	103
BGB							84	90
平　　均	100	100	100	100	100	100	100	100	100	100
乾物重(割合)
Half Sugar Yellow	120	122			110	105	105	105	110	108
Sugar Mangold	119	90	101	97	104	112	107	101	94	101
Haje Sugar Red	72	93		97	100	98	93	97	104	93
Barres Stryno	71						101	111	85	90
Marienrist	119
Red Eckendorf		78		62	72	86
Hinderupgard		127	89	111
Yellow Daeno		103	111	86
Gull Daeno		104			113	101
Barres Feritjlev		93	94	95	84	93
Hvid Daenfeldt		105	94	102
Half Yellow			121	104	101	97
MGM NO.1			89	91	78	96	104	99	100	94
MGM NO.2			96	114
BGB							88	96
平　　均	100	100	100	100	100	100	100	100	100	100

・　奨励又は指導参考上の注意事項
　(1)　考察のための資料が菜根重で10アール当り3〜5トンの範囲にあるので、その範囲を超える場合の論議まですることは妥当でないがBarres Stryno、Marienristの如き低乾物率、高収性の品種について、漸次需要の減少している現在でもあるのでSugar Mangoldに加えHalf Sugar Yellowをより積極的に奨励したい。
　(2)　これらの品種を除く他の供試品種については特異なものはあるが奨励すべき根拠に乏しい。
　(3)　飼料用ビートの当地帯における紙筒移植栽培では30%(2品種2年間平均)程度の増収が期待でき、かつ直播栽培で多収な品種が多収である。
　(4)　地力及び気象の差異により変わって来ることではあるが供試条件の如き環境の下では飼料用ビートの紙筒移植栽培はルタバガの直播に匹敵する収量を上げ得、それぞれが直播又は紙筒移植である場合には菜根、乾物重収量についてルタバガの方が多収である。しかしルタバガの品種の選定に当っては全品種についてはそう言い切れないことに留意する必要がある。
　(指定優良品種：Sugar Mangold、Barres Stryno、Marienrist)