【指導参考事項】
菜種に対する「PCP微粒剤」処理に関する試験成績 農林省 北海道農業試験場作物部特用作物第1研究室 道立中央農試化学部、原々種農場 道立上川農試畑作課 |
・ 目的
PCP処理による菜種の冬枯抑制効果について検討する。
・ 試験方法
処理薬剤の種類 PCP液剤、PCP粒剤、有機水銀剤(粉剤)
処理薬剤 PCP50〜100gの3段階(a当成分量)
有機水銀剤300g(a当製品量)
処理時期 10月下旬〜11月上旬の3段階
供試品種 岩内
・ 試験成果の概要
昭和37年液剤処理を行い、有機水銀剤処理対比率で60%まで冬枯を軽減した。しかし、薬害が著しく諸形質の変動が見られ、生育を抑制した。また、Typhula
sppに対する直接効果をLuye代法による処理菌核の染色生死判別で認めた。さらに菜種の体内成分の消長を調査し、体内成分上の越冬条件は良好と言い難い結果を得た。
昭和38年以降薬害を回避するため、粒剤で同様の効果が期待し得ないかについて検討し、有機水銀剤処理対比率で78%まで冬枯れを軽減し、かつ薬害を殆ど回避した。諸形質の抑制も殆どなく、冬枯れの被害の減少から生育が整一で品質が向上し、また、子実収量は有機水銀剤より19%までの増収傾向を示した。これらの結果から、PCP粒剤75g/a(成分量)を11月上旬に処理すれば、冬枯れ被害を顕著に減少させ、菜種作の安定化に役立つものと考えた。
・ 主要成果の具体的データー
第1表 年次別冬枯れ率の処理間差異(区平均値)
薬剤 の 種類 |
散布 成分量 (a/g) |
昭和37年度 | 昭和38年度 | 昭和39年度 | 昭和40年度 | |||||
冬枯率 (%) |
無処理 対比率 (%) |
冬枯率 (%) |
無処理 対比率 (%) |
冬枯率 (%) |
無処理 対比率 (%) |
冬枯率 (%) |
無処理 対比率 (%) |
|||
10月20日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 23.7 | 41 | ||||||
10月30日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 34.8 | 62 | 22.3 | 34 | ||||
〃 | 粒剤 | 50 | 32.5 | 50 | ||||||
〃 | 〃 | 75 | 18.1 | 28 | ||||||
〃 | 〃 | 100 | 17.5 | 27 | ||||||
11月 4日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 8.6 | 95 | ||||||
〃 | 粒剤 | 50 | 5.5 | 60 | ||||||
11月10日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 23.1 | 4.1 | 11.0 | 17 | ||||
〃 | 粒剤 | 50 | 20.6 | 32 | ||||||
〃 | 〃 | 75 | 10.5 | 16 | ||||||
〃 | 〃 | 100 | 13.2 | 20 | ||||||
11月11日PCP処理区 | 粒剤 | 50 | 4.3 | 47 | ||||||
〃 | 液剤 | 50 | 10.1 | 111 | ||||||
11月14日PCP処理区 | 粒剤 | 50 | 6.8 | 37 | ||||||
〃 | 〃 | 100 | 6.9 | 37 | ||||||
有機水銀剤処理区 | 粒剤 | 300 | 56.8 | 101 | 6.4 | 70 | 61.2 | 94 | 17.8 | 96 |
無 処 理 区 | − | − | 56.5 | 100 | 9.1 | 100 | 62.8 | 100 | 18.6 | 100 |
└────┘ L.S.D 1%31.6 5%23.1 |
└─────┘ L.S.D 1%8.1 5%5.8 |
薬剤 の 種類 |
散布 成分量 (a/g) |
昭和37年度 | 昭和38年度 | 昭和39年度 | 昭和40年度 | |||||
子実重 (g) |
無処理 対比率 (%) |
子実重 (g) |
無処理 対比率 (%) |
子実重 (g) |
無処理 対比率 (%) |
子実重 (g) |
無処理 対比率 (%) |
|||
10月20日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 18.1 | 75 | ||||||
10月30日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 20.3 | 85 | 23.3 | 97 | ||||
〃 | 粒剤 | 50 | 27.7 | 116 | ||||||
〃 | 〃 | 75 | 27.6 | 115 | ||||||
〃 | 〃 | 100 | 28.2 | 118 | ||||||
11月 4日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 15.7 | 83 | ||||||
〃 | 粒剤 | 50 | 17.7 | 94 | ||||||
11月10日PCP処理区 | 液剤 | 50 | 25.6 | 107 | 25.8 | 108 | ||||
〃 | 粒剤 | 50 | 28.2 | 118 | ||||||
〃 | 〃 | 75 | 28.0 | 117 | ||||||
〃 | 〃 | 100 | 28.2 | 118 | ||||||
11月11日PCP処理区 | 粒剤 | 50 | 18.9 | 100 | ||||||
〃 | 液剤 | 50 | 18.4 | 97 | ||||||
11月14日PCP処理区 | 粒剤 | 50 | 30.8 | 101 | ||||||
〃 | 〃 | 100 | 30.4 | 100 | ||||||
有機水銀剤処理区 | 粒剤 | 300 | 23.6 | 98 | 19.2 | 102 | 23.6 | 99 | 29.8 | 98 |
無 処 理 区 | − | − | 24.0 | 100 | 18.9 | 100 | 23.9 | 100 | 30.4 | 100 |
└────┘ L.S.D 1%3.6 5%2.6 |
└─────┘ N.S |
・ 奨励又は指導参考上の注意事項
PCP粒剤(25%)を10アール当り3kg(製品量)散布する。散布時時期は本葉6-9枚の11月上旬頃が適当である。ただし散布は1回とし重複散布を行ってはならない。散布は降雨雪後など葉面に水滴を有する場合は薬剤の地表面への落下を防げ接触薬害症状を呈するので、斯様な状態のときを避けることが大切である。しかし充分散布時に注意したうえでも僅かに小斑点状の接触薬害症状が出る場合があるが、子実収量など実用形質に対する影響は殆どない。地帯としては殆どの菜種作地域に適用されるが、現地試験の結果によると、火山性砂礫地帯のような特殊土壌地帯においてはPCPの土中での移動に関係するものと考えられ、生育抑制があるので、該当地帯への普及奨励控えたい。