【指導参考事項】
ろ土の改良と施肥法の確立試験
道立道南農業試験場土壌肥料科

・ 目的
 主として道南地方に広く分布しているろ土に対して、その低位生産性を解明し、その土壌改良法および施肥法について検討する。

・ 試験方法
 現地栽培試験(主として銭亀沢村および函館市、その他7ヵ町村)
 試験規模   1区 15〜40m2 2反復
 供試作物  燕麦、馬鈴薯、てん菜、デントコーン、大豆、牧草など

・ 試験成果の概要
 1. ろ土ではりん酸の肥効が高く、施用量ともに増収するが、りん酸20〜30kg/10aで頭打ちとなる。しかしNの増肥、または堆肥併用により全体に多収となった。りん酸を多用(130〜690kg/10a)しても残効はあるが、200kg前後で頭打ちとなる。これらは他の要素たとえばNや微量要素の欠乏が制限因子となるためと考えられた。
 2. 硫黄華処理〜酸性矯正の反応転換を行うと、土壌窒素が有効果しても16%程度の増収となった。
 3. 微量要素欠乏症対策として、鉄、銅を施用すると燕麦では9〜19%の増収効果を認められた。なお施用量は10a当り硫酸銅2-4kg、硫酸第一鉄2-5kg程度が適当と推定された。
 4. 有機物施用:堆肥の効果はりん酸肥効を高め、土壌窒素の供源となり増収効果が高かった。素わらは1t/10aまでは施用可能であった。牧草すき込みも良いがC/Nの低いもの(まめ科牧草)ではN過剰となった。
 5. 深耕(30cm)、混層耕あるいは赤土容土を行い、堆肥施用や土壌改良および増肥すると10〜18%の増収となった。
 6. 砂容土効果は1〜2年目までは116〜118%の増収となったが、3年目頃から、増収差が低下した。従って砂客土して、2年目頃までは増肥しなくともよいが、3年目頃から堆肥施用、増肥などにより地力維持に努めるべきである。砂施用量は10a当り30m2(45t)程度でよい。なお5年目の跡地について客入砂の分布をみたが、耕耘作業などにより、下層に層状集積化することはなかった。
 7. ろ土改良対策試験を8ヶ町村で行った結果、砂客土、深耕、りん酸多用とも増収し、その効果が確認された。

・ 主要成果の具体的データー
 本表の数字は標準区収量を100とした。PはP2O5の略記である。各区の収量指数を示し、100の次ぎに記した( )内は収量実数(kg/10aを示す)
P用量試験
燕    麦
N標準区  無P72.標P100.2倍P165.3倍P110.4倍P112.5倍P111
N増施区     75.   100.   110.   135.    136.    129
P固定力減
少試験燕麦
普通耕区  標P100(127).5%区108.10%区122.20%区117.30%区117
深耕区      100(143).   103.    132.    113.    111
反応変換
試験、燕麦
無処理区100(309).秋S粉施春畦カル中和116.同左タンカル中和112.
秋S2倍春畦カル中和108.同左タンカル110
銅・鉄施用
効果、燕麦
昭37年.対照100(221).銅120.鉄113.銅鉄114
  38年.   100(266).  109.  119.   116
有機物施用
 (馬鈴薯)
堆肥.無肥100(1.800).2トン112.4トン117.8トン122
わら.    100(1.800).1トン109.2トン107.4トン102
客土及混層
耕、燕麦
標準肥. 普通耕100(257).客土119.混層耕107
堆肥併用     100(280).   118.     107
深耕効果
てん菜
普通耕区.
深耕区.
標肥 100(3.510) 前作物のP多用 111
111      秋クローバ鋤込 145
砂客土効果
(昭36〜40)









100(2.056)

110






100(2.590)

111
デント
コーン



100(6.100)

109

3cm
客土




100(3.200)

107




100(284)

104(6cm客土)

 昭和40・41年に管内8市町村内のろ土について各種の改良区併列して現地試験を行った結果の平均は次ぎの通りであった。(無処理区収量を100とした各処理区の収量指数)
  無処理 砂客土 深 耕 P多用 深   耕
綜合改良
砂客土
綜合改良
昭和40年(てん菜) 100 117 108 110 112 112
   41年(馬鈴薯) 100 109 103 110 111 107
  注) 上表中S粉は硫黄粉末を示す。
     P固定力減少試験の5%、10%等は100g土壌が固定するりん酸量を10a当りの土壌に換算しその燐酸量の5%あるいは10%相当量のPを施したことを示す。

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 本試験はろ土改良について、当場で過去10年間余にわたって行ってきた現地試験成績を集約したものである。この成績をもって完全なる土壌改良対策が確立されたものとは考え難いが、実際に個々のろ土改良に当たって試験例として活用が可能と考えられる。もちろんろ土の個々の土壌管理法についてはなお研究をつづけなければならない。