【指導参考事項】
高性能防除機実用性向上試験成績
(ア) ホース延長使用によるニカメイチュウ・いもち病の大面積同時防除
農林省 北海道農業試験場病理昆虫部
           〃     農業物理部
         北海道農務部農業改良課

・ 目的
 ホースの長さ75mを標準とする現在の高性能防除機では大型すいでんや未整地圃場にそのまま導入できない。そこでホースの長さを300m程度まで延長した場合の実用性について各専門分野から検討を行う。

・ 試験方法
 1. 石狩郡当別町農家圃場5haで7月29日実施。
 2. スワーススプレーヤーを用い、スミチオン乳剤とプラエス乳剤との1000倍液を10a当り120L散布。
 3. ホースは内径16mm、ノズルはBB形式を3種使用。
  (エンジンの常用出力:10PS/2400Y.P.m.)

・ 試験成果の概要
 1. ホースの長さによる(内径16mm、300mまで、15m到達ノズル)ポンプ圧、ノズル圧の変化は殆どなく薬液の到達距離もとくに低下する傾向はみられなかった。
 2. 巾27mの水田にホースを300mまで延長し、10a当り120L散布した場合、1時間当りの作業能率は両面散布を行っても1.3haであって、1日8時間稼働すれば10〜11haの防除が可能である。なお、75mホースの標準散布では1時間当り1.8haであった。
 3. 圃場全体の付着分布はばらつくが適期に大面積散布をすればニカメイチュウ・いもち病ともに被害を低率におさえることができる。
 4. ニカメイチュウ・いもち病防除期の水稲への付着効率は13.8%前後であって、スミチオン・プラエスの有効付着値から算出した散布液量は1000倍液の110〜120L(10a当り)であった。
 5. 本機は内径16mmのホースを300mまで延長使用でき、未整地圃場および大型水田への導入が可能である。

・ 主要成果の具体的データー
 散布形式と薬液の到達距離
ノズル形式 ホースの長さ(m) 噴口からの距離と付着量(PPm)
4m 8m 12m 16m 20m 24m
3N-20 75 12.3 13.4 17.6 6.7 5.0 1.4
2N-18 175 9.4 11.1 19.7 8.0 3.6 1.0
3N-15 275 13.8 21.0 11.7 3.8 0.4 0.3
3N-15 200 14.7 21.5 4.3
3N-15 300 14.6 20.7 2.9

 スミチオンの付着量と接種幼虫(ニカメイチュウ)の生存率との関係

・ 指導参考上の注意事項
 1. 風を効率的に利用する。
 2. 薬液の到達距離はノズルの性能の2割減程度と考え、巾の広い水田では両面散布を行う。
 3. 15m到達性ノズルを使用すれば、ポンプ圧、ノズル圧、薬液の到達距離はホース(内径16mm)の長さによる変化は殆どなく、300mまで延長可能である。
 4. ニカメイチュウ・いもち病に対する防除は10a当り110〜120L程度の散布液量が妥当であって、両面散布を行っても1日8時間稼働すれば10〜11haの散布が可能である。

(イ) 散布液量と投下薬療
道立中央農業試験場病虫部
      〃      稲作部
・ 目的
 高性能防除機によってニカメイチュウ・いもち病を防除する場合の適切な散布液量と投下薬量を決定し、北海道地区における指針としたい。

・ 試験方法
 1. 石狩郡当別町の農家圃場で7月29日に実施。
 2. 共立スワーススプレーヤーを用い、ノズルはBS-18ホースの長さは100m(内径16mm)。
 3. スミチオン乳剤とプラエス乳剤とを混合散布。

・ 試験成果の概要
 1. 70L(10a当り)散布では付着分布にばらつきが多かったが、130L散布では概して、均一な付着を示した。
 2. いもち病・ニカメイチュウに対しても、70Lの少量散布区よりも130L散布区の方が防除効果が高い。
 3. 散布液量は70Lと130Lの2種類、散布濃度も800倍、1000倍、1500倍の3段階のみの試験成績であるため傾向を把握するにとどまったが、100L以下の散布量では問題があり、スミチオン乳剤、プラエス乳剤の場合には1000倍液の130L(10a当り)が最もよかった。

・ 主要成果の具体的データー
 散布条件と防除効果(スミチオン乳剤・プラエス乳剤)
散布量
(10a当り)
散布
濃度
いもち病 ニカメイチュウ
被害率(%)
病株率(%) 被害度
130L 1500 11.1 0.04 5.3
130L 1500 5.3 0.01 4.2
70L 1000 24.9 0.05 3.5
70L 800 19.9 0.04 3.3
無処理 53.2 0.13 10.4

・ 指導参考上の注意事項
 1. ニカメイチュウ・いもち病防除に対し、散布液量は10a当り70Lでは付着分布・防除効果がわるいので100L以上を、希釈倍数はスミチオン・プラエス乳剤の場合1000倍液が適当と考える。
 2. 散布に当たっては圃場の立地条件、水稲の生育状況、散布時の気象状況を考慮に入れ、効率的な散布法を考えるべきである。