【指導参考事項】
馬に対するサイレージ給与に関する試験成績
道立新得畜産試験場

・ 目的
 冬期間馬に給与する粗飼料は従来牧乾草が主体であったが、本道の山間地帯にあっては、夏期天候不順により牧乾草調製に困難をきたすことが多く、良質な粗飼料確保は至難なのでサイレージ(グラス・エンバク)給与の実用性について検討する。

・ 試験方法
 期  間  昭和39年11月〜41年4月
 第1年次  グラスサイレージ給与
   ・順応性  繁雌及使役  18頭
   ・選択性  繁     雌   3頭
   ・飽食性     〃      3頭
   ・妊馬に対する影響について
            繁馬 試験 8
                     >15頭 妊娠月令9〜10カ月
                対照 7

    育成馬の発育に及ぼす影響
            当才 試験 ♂6 ♀3
                          >18頭
                対照 ♂6 ♀3
 第2年次  エンバクサイレージ給与
    妊馬に対する影響について
            繁馬 試験 5
                     >10頭 妊娠月令8〜10カ月
                対照 5 


・ 試験成果の概要
 1. 嗜好性について
  1) 順応性−1日2日迄は甘酸臭を嫌ったものもあったが、3日目より全馬採食した。
  2) 選択性−a切草、bグラスサイレージ、c切草とグラスサイレージの3粗飼料を30分間の時間給与した結果、1グラスサイレージ、2切草とグラスサイレージ、3切草の順位であった。
  3) 飽食性−個体に於いて最高47.6kg平均32.9kgで給与後期に漸次採食量が減少の傾向にあった。
 2. 妊馬に対する影響について
  1) 分娩状態−第1年次、両群ともに難死産があった陣痛微弱によるものである。
            第2年次、試験群に1頭の難産があったが胎子不正胎位によるもので、サイレージ給与による影響とは思われなかった。その他陣痛開始より生時所要時間、生時より子馬起立、授乳時間については長短があった。叉第1年次、第2年次ともに後産娩出時間が稍々長時間を要している傾向にあったが特異なる異状は認められなかった。
  2) 哺乳中の産子の発育について
   生時より1カ月後までの発育については第1年次(グラス・サイレージ)は数値的に上廻って居り、第2年次は下廻っていた。而し伸率については第1・2年次ともにその差は殆ど認められなかった。
  3) 発情微候及び交配成績
   発情微候及び交配成績、受胎率等についても第1・2年次ともに差は認められなかった。
  4) 分娩後の馬乳傾向について
   分娩後10日までの馬乳傾向を調査したが、対照群との差は認められなかった。(参考)
 3. 育成馬の発育に及ぼす影響について
  離乳1カ月後の育成馬について(♂♀)給与したが発育に及ぼす影響は認められなかった。

・ 主要成果の具体的データー
 1. 順応成績表
採  食
区  分
第1日目 第2日目
% % % %
全量採食 5 27.8 7 38.9 9 50 17 94.4
12以上〃 3 16.7 5 27.8 9 50 1 5.6
12以下〃 6 33.3 6 33.3 0 0 0 0
採食せず 4 22.2 0 0 0 0 0 0

 2. 粗飼料別選択採食数値表
飼料別 給与馬 摘 要
NO.1 NO.2 NO.3 平均
a(切草) 61.1 66.6 61.1 63.0 全量採食を100%とした数値である。
b(切草グラスサイレージ) 72.2 69.4 75.0 72.2
c(グラス・サイレージ) 90.3 91.7 87.5 89.8

 3. 飽食調査における平均採食量(kg)
1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目 平均
40.3 33.2 37.2 35.9 31.8 32.7 27.3 32.6 28.2 30.4 329.6 32.8

 4. 養分採食量
養 分/
供試馬
1日当り摂取量 モリソン氏飼養標準比
DM DCP TDN DM DCP TDN
NO.1 7.83 0.363 4.69 74.6 42.3 76.5
NO.2 9.62 0.446 5.76 91.6 52.0 94.0
NO.3 12.40 0.575 743 93.6 61.2 112.1
平均 9.95 0.461 5.96 86.6 51.8 94.5

 5. 分娩区分及生産子の状況(第1年次)
群 別
分娩区分産子性別 生産
(%)
陣痛開始より
生時までの時間
(分)
生時後・所要時間(分) 在胎日数
正産 難・死産 子馬起立 後産娩出 授乳時 (日)
試験群 8 7 1 5 3 8 87.5 37.9 73.6 105.0 175.7 332.5
対照群 7 6 1 5 2 7 85.7 66.1 81.4 84.0 210.0 336.2

 6. 発情微候及交配成績
群 別 発情微候(頭)計 交配周期(頭) 発情持続
平均日数
(日)
交配平
均回数
(回)
受胎
頭数
(頭)
受胎率

(%)
++ + ± - (頭) 1周 2周 3周 4周
試験群 4 1 2 1 8 4 2 2 0 8 6.1 2.2 7 87.5
対照群 4 2 1 7 3 2 1 1 7 7.0 2.4 7 100.0

 7. 馬乳成分の傾向(第2年次)
日 目/
区 分
生時 3日目 5日目 7日目 10日目
全固形 14.92 11.77 9.08 11.05 10.61
20.92 11.85 11.06 10.73 11.45
脂 肪 1.59 2.36 1.96 1.84 1.80
1.23 1.73 1.56 1.63 1.70
蛋 白 3.06 3.25 3.08 2.83 2.46
2.89 3.38 2.81 2.44 2.49
灰 分 0.622 0.541 0.519 0.495 0.486
0.634 0.552 0.515 0.511 0.486

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 1. 牛の残渣サイレージも活用出来るが「カビ」については特に留意を要する。
 2. 単味で長期給与は「飽き」のくることが考えられるので、乾草時の粗飼料混合給飼が必要で、養分摂取量の確保のためDCPの高い飼料の添加が必要である。