【指導参考事項】
主要草種の刈取時期に関する試験成績
道立天北農業試験場 草地科

・ 目的
 天北地帯における主要草種の刈取頻度の限界を明らかにして、利用目的別牧草混播組合せの選定および草地の利用管理上の基礎資料とする。

・ 試験方法
 試験Ⅰ 主要草種の刈取時期に関する試験    ※ H25.B-E.B-Mは略記号
  試験区分 主区(2年目以降の刈取処理)
         ① 自然草高25cm伸長刈取(H25cm)
         ② 出穂始(まめ科は開花始)刈取(E-E刈あるいはB-E刈)
         ③ 開花始( 〃   開花期)刈取(B-E刈あるいはB-M刈)
           但し、②・③は2番草以降自然草高50cm伸長時刈取
         細区(草種)
         ① いね科9、②まめ科4
  1区面積および区制  1区10m2、分割試験区法2反復
 試験Ⅱ 泥炭地におけるアルファルファの利用時期に関する試験
  供試品種  デュピュイ
  試験区別 主区(施肥)無ちっ素系列と3要素系列
         細区(刈取時期)草高30cm刈、草高50cm刈、開花始刈
  1区面積および区制  1区10m2、分割試験区法2反復

・ 試験成果の概要
 試験Ⅰ
 (1) 相応の肥培管理を前提に若刈をして利用頻度を高めるならば、いね科牧草の栄養生産性は増大する。しかし、本試験の試験条件では肥料経済上必ずしも効率が良いとは言えないので追肥適量の検討が必要である。
 (2) 多肥条件下で若刈をすることによって、天北地帯においてもオーチャードで6回、チモシーでも4回位の利用は可能であるから、草種本来の生育特性を十分発現できるような導入あるいは利用を考えるべきである。
 (3) 一般に、いね科牧草1番草の遅刈利用頻度の減少をもたらすばかりでなく、その後の再生量を著しく減少する。
 (4) まめ科牧草では、ラジノクロバーは多肥、早期利用により、栄養生産性は向上するが、アルファルファおよびアカクロバーは多肥条件下であっても開花始〜開花期に刈ることが望ましい。
 試験Ⅱ
 (1) アルファルファの刈取時期は、若刈は維持年限を短縮させるので、開花始〜開花期が適期と考えられる。

・ 主要成果の具体的データー
 <試験Ⅰ> 刈取頻度
刈取処理 T OG PRG MBG SBG TOG TF MF RCG RC AC LC A
H 25刈 3〜5 4〜6 3〜5 3〜5 3 4〜5 3〜5 3〜4 3〜4 3 2 3 4
E-E 刈 2 3〜4 3 2〜3 2 3 2〜3 2〜3 2〜3        
B-E 刈 2 3 2 2 1〜2 3 2 1〜2 2 2 2 3〜4 3
B-M 刈                   2 1 2〜3 2〜3

 粗蛋白収量(3年間合計)指数 −刈取処理の比較−
刈取処理 T OG PRG MBG SBG TOG TF MF RCG いね科
平 均
RC LC A まめ科
平 均
H 25刈 163 155 184 133 229 147 124 198 143 158 109 86 79 89
E-E 刈
(B-E刈)
99 115 135 111 183 114 103 153 121 121 100 100 100 100
B-E 刈
(B-M)刈
100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 127 90 127 111

 肥料費1000円相当・可消化蛋白(DCP)収量−昭39・40の平均−(まめ科は昭39)
刈取処理 T OG PRG MBG SBG TOG TF MF RCG いね科
平 均
RC LC A まめ科
平 均
H 25刈 31.2 26.0 29.6 27.3 34.5 30.6 28.2 28.3 28.2 29.3 54.8 83.5 33.2 57.2
E-E 刈
(B-E刈)
33.7 24.9 27.2 32.6 40.2 31.5 31.9 33.6 30.1 31.7 80.7 76.0 68.3 75.0
B-E 刈
(B-M)刈
26.2 21.9 23.1 31.0 23.8 23.1 37.0 28.3 28.3 26.4 93.0 88.6 101.7 94.4

 肥料費1000円相当・可消化養分(TDN)収量−昭39・40の平均−(まめ科は昭39)
刈取処理 T OG PRG MBG SBG TOG TF MF RCG いね科
平 均
RC LC A まめ科
平 均
H 25刈 169 119 157 121 189 154 147 152 162 152 212 403 110 242
E-E 刈
(B-E刈)
246 176 214 208 260 187 231 242 214 220 352 314 243 303
B-E 刈
(B-M)刈
378 248 293 297 537 225 330 289 268 317 415 335 437 396

 <試験Ⅱ>
区 別 2年・計収量(kg/10a)同指数 残根量(1m2当)
生 産 乾 物 粗蛋白 株数 根重(乾) 1株当・根重(乾)
草高30cm刈 4247(60) 705 (52) 221(66) 29 58(43) 2.0
草高50cm刈 6528(93) 1126(84) 308(72) 44 110(82) 2.5
開花始 刈 7032(100) 1347(100) 333(100) 48 134(100) 2.8
開花期 刈 8147(116) 1728(128) 436(131) 59 247(184) 4.2

・ 普及指導上の注意事項
 (1) まめ科について明白な結論が得られたが、いね科についてはなお、地帯別、土性別追肥適量の検討が必要である。ただ、高位生産をあげるためには相応の肥培管理をして利用を高めるにある。それには再生力の旺盛な草種を利用する要があるという原則的な考え方にとどめておきたい。
 (2) 1番草の遅刈は利用頻度の減少をもたらすばかりでなく、その後の再生量を著しく減少する。そして遅刈によって見かけ上は増収するかに見えるが、栄養生産の面からは必ずしもプラスにならないことを強調したい。

※ チモシー          〜T    メドウフエスク    〜MF
  オーチャードグラス    〜OG  リードカナリーグラス〜RCG
  ペレニアルライグラス   〜PRG  アカクローバ     〜RC
  マウンテンブロームグラス〜MBG  アルサイククローバ〜AC
  スムーズブロームグラス 〜SBG  アジノクローバ   〜LC
  トールオートグラス    〜TOG  アルファルファ   〜A
  トールフエスク       〜TF