【指導参考事項】
スポイレージの発生機序とその防止法に関する試験
(主にバンカー型サイロ)
農林省北海道農業試験場畜産部畜産化学研究室道立新得畜産試験場

・ 目的
 バンカー型サイロのサイレージにおいてトップスサイレージによる損失の多い現状から、この防止対策を明らかにするため本試験を行った。

・ 試験方法
 大型のバンカー型サイロを用いて、その表面の密封処理を主に、側壁とサイレージ部との接台部を重点とする処理を、慣行方法を対照として同一サイロを用いて検討した。
 実施は北農試畜産部ならびに道立新得畜試で行った。

・ 試験成果の概要
 1) バンカー型サイロによるトップスポイレージは慣行のビニール被覆の場合は側壁とサイレージとの接合部より主に発生し、この接合部の防止を計ることにより、黒褐色のスポイレージ部分は全部防止でき、叉他のトップスポイレージをも著しく防ぎ得ることが明らかとなった。
 2) トップスポイレージの防止は廃棄部分の減少ばかりではなく、中心部の乳酸の低下を防ぎ、酪酸含量の増加を防ぐことが認められた。
 3) ゴムのルーフィングの使用のみで側壁接合部からのトップスポイレージを防ぐことはできないが、ルーフィング下部の変質を防ぎ中心部の乳酸の低下と酪酸の増加を防ぐ効果が認められた。

・ 主要成果の具体的データー
 第1表 処理別各部の酪酸成分
  水分 PH 総酸 乳酸 揮発酸 アンモニア体N 揮発酸の構成比
酢酸 プロピオン酸 酪酸 古草酸
A
(側壁
スポイレージ部)
10日目 64.1 5.6 1.245 0.871 0.374 44.9 100 0
5カ月 処理区 71.3 7.35 0.107 0 0.107 43.0 0 0 100 0
対照区 85.1 7.05 0 0 0 1.6
ルーフイング
シート区
76.6 7.25 0.088 0 0.088 7.96 0 54.8 31.0 14.2
B
(中心表面部)
10日目 64.2 4.85 1.334 0.866 0.468 56.9 0 68.1 31.9
5カ月 処理区 76.5 7.05 0.073 0 0.073 31.9 0 61.4 38.6
対照区 75.4 7.05 0.123 0 0.123 35.86 0 26.9 73.1
ルーフイング
シート区
72.1 6.10 0.282 0.09 0.273 30.3 58.1 41.9 0 0
C
(中心50cm下部)
10日目 67.7 4.4 1.274 0.876 0.392 31.9 100 0 0 0
5カ月 処理区 70.5 4.5 1.667 0.735 0.932 55.0 78.5 21.5 0
対照区 71.5 4.6 1.649 0.348 1.301 61.1 49.2 16.7 34.1
ルーフイング
シート区
70.5 4.35 1.554 0.949 0.605 53.6 100 0 0 0

・ 指導参考上の注意事項
 バンカー型サイロによるトップスポイレージは慣行のビニール被覆では側壁とサイレージ接合部から主にスポイレージが進行し、著しい廃棄部分を生ずる。この場合廃棄量の増加のみではなく、可食部においても不良酸の増加、乳酸の低下により品質を低下させる。
 この防止のためには側壁部のビニールを樋状としてこのくぼみに30〜50kg/mの土を入れる樋型覆土により著しくスポイレージを防止し得る。ビニールを側壁に沿って0.5〜1m入れても効果があるが、この場合も側壁部は樋状に土を入れる方が安全である。また使用する被覆シートは酸素の透過性の低いものの方が変質防止の効果は一層高い。