【指導参考事項】
牧草時における育成牛の飲水量に関する試験成績
農林省北海道農業試験場草地開発部草地第2研究室

・ 目的
 公共用草地の開発にともない夏季間に育成牛を主体とした大群の放牧飼育が行われるようになり、これにともない放牧時の乳牛の飲水量についても調査の必要があり、この結果にもとずいて水源の確保を適切にされなければばらない。しかしこれまでに放牧時の飲水量についての具体的データーに欠けているので、春から秋までに至る期間について調査を行う。

・ 試験方法
 1. 供試家畜:平均体重250kgのホルスタイン種育成牛12頭
 2. 放牧方法:放牧は5月16日より10月6日までの143日間、放牧群は放牧の強さを変えた3群とし、各群1牧区10aで6牧区として3群とも2〜4日輪換をなし7回の放牧を実施した。
 3. 飲水量の調査:ドラム缶の胴切り1/2について行った。
    飲水量=見かけの飲水量−降水量+蒸発量 
    1日平均体重100kg当たり飲水量= 1日全群飲水量(L)

全群総体重+100


・ 試験成果の概要
 1. 平均体重250kgのホルスタイン種乳牛の育成牛を放牧利用強度約60%で昼夜間放牧を行い、春から秋までの間6牧区制で7回の放牧利用を行いこの間の飲水量について調査を行った。
 2. 体重100kg当りの飲水量は最低0.9L、最高11.8Lの巾が示され平均は5.6Lであった。体重250kgの育成牛では1日1頭当たり2.3Lから29.5Lまでの巾が示された。
 3. 旬別の気象と飲水量の関係では最高気温との相関が高く、体重100kg当りの飲水量との間に0.589(1水準有意)の相関がみられ、この間にY=0.29×-1.04の回帰式が求められた。
 すなわち最高気温1℃上昇ごとに体重100kg当りの飲水量が0.29L増加する。
 温度ではY=12.05〜0.085Xの回帰が示され、平均温度9%減少ごとに0.09Lの飲水量の増大が示された。
 4. 降水量と飲水量では降雨量0mmでは6.5Lに対し、0.1〜5mmでは4.7Lと72%程度に減少し、5〜10mmでは3.8と58%、10mm以上では3.4Lと約50%程度に減退することが認められた。
 5. 輪換日数と飲水量にも若干の関連が示され、3日サイクルでは輪換当日は4.8L、2日目6.4Lと33%増加し、3日目には7.4Lで54%増加した。4日サイクルにおいても3日サイクル程あきらかでないが、同様な傾向を示した。

・ 主要成果の具体的データー
 1. 気象と飲水量の極値
区 分 9自気温
(℃)
平均気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)
湿度
(%)
降雨量
(mm)
1日1頭当り
体重100kg飲水量
最 低 10.5 6.9 12.2 40 0 0.9
最 高 29.4 26.4 33.5 91 76.0 11.8
平 均 19.5 17.7 22.9 76 2.4 5.6

 2. 最高気温と飲水量


 3. 気象と飲水量との相関、回帰式
  9自気温 γ=0.452※※  Y=1.70+0.20X
  平均気温 γ=0.556※※  Y=1.40+0.24X
  最高気温 γ=0.589※※  Y=0.29X-1.04

 4. 最高気温別平均飲水量
区 分 15℃以下 15.1〜20.0℃ 20.1〜25.0℃ 25.1〜30.0℃ 30.1℃以上
例 数 5 19 40 27 10
100kg当り飲水量(L) 2.7 4.0 5.5 6.6 8.4

・ 奨励または指導参考上の注意事項
 1. 本試験成績は放牧時における育成牛を対象とした場合の飲水量について調査したものであって大体の目安として参考に供する。