【指導参考事項】
乳牛の放牧飼養技術に関する試験成績
(輪換放牧における放牧開始期、休牧日数、放牧適期について)
                     道立根釧農業試験場酪農科

・ 目的
 搾乳牛の輪換放牧時における春の放牧開始時期、休牧日数、草丈収量からみた放牧適期等を検討して指導上の参考に供する。

・ 試験方法
 試験Ⅰ
  ラデノクロバー、オーチャードなどを主体とした良好な牧草地で、休牧日数9日と21日の輪換放牧法が草地の収量、植生、飼料成分、延放牧頭数、搾乳牛の産乳量、体重増減におよぼす影響を調査した。
 試験Ⅱ
  秋更新、翌春利用初年目の草地で、休牧日数9日、14日、19日、24日の4区を設け、草地の収量、植生、飼料成分ならびに搾乳牛の採食量を調査した。

・ 試験成果の概要
 試験Ⅰ
 1) 従来奨励されている放牧方法も春の放牧開始時期を早め、休牧日数を短縮して年間10回利用しても、従来奨励されている年間4回の輪換放牧法と両年とも大差ない年間総収量であった。
 2) 延放牧頭数は9日休牧区の方が多い。
 3) 9日休牧区は草地の草丈が短かく現在量も少ないがかえって放牧期の前半は産乳量は増大する傾向が認められる。しかし後半は産乳量には差がないが草の再生力が劣っているので、休牧日数をやや長くした方が草地維持管理上安全であろう。
 4) 産乳量は昭和40年度前半は、9日休牧区の方が高い結果となったが、後半では大差はなかった。
 5) 体重の増減は40年度前半は9日休牧区が増体し、後半は逆に21日休牧区が増体じた。41年は両年とも大差はなかった。
 試験Ⅱ
 1) 秋造成後利用初年目の草地では放牧開始時期は従来程度とし休牧日数は14〜19日として年間6〜7回の利用回数とした方がよい。
 2) 草地の草丈イネ科15〜20cm、マメ科10〜15cmで収量400〜500kgのときが放牧適期で、1時間当り採食栄養量が最大となる。
 3) 放牧開始期日は9日、14日、19日、24日休牧区でそれぞれ5月26日、6月3日、6月17日、6月24日で終牧期は9月17日であったが、その場合における乾物中粗蛋白含量の年間平均値は22.7、22.1、20.2、16.8%で24日休牧区が著しく劣り、粗繊維含量は19.1、19.0、21.9、26.4%と24日休牧区が著しく増量した。

・ 主要成果の具体的データー
 試験Ⅰ
 放牧期別草量、草種割合、草丈並びに放牧頭数
年 次 牧区 放牧期間 混成比(%)年間平均 10a当り
生産量合計kg
草丈平均 放牧延
頭数
イネ科 マメ科 雑草 イネ科 マメ科
昭和40 9日 5.26〜9.22 66.4 29.9 3.7 5001 20.9 14.2 484
21日 6. 7〜9.22 71.4 25.7 2.9 4854 34.5 21.9 396
昭和41 9日 5.25〜9.21 60.1 35.4 4.5 4289 16.8 12.0 441
21日 6. 6〜9.21 66.6 29.4 4.0 4575 37.5 23.5 424

 休牧日数別産乳量、体重増減集計表  (単位kg)
  昭和40年 昭和41年
前  期 後  期 前  期 後  期
9日休牧 21日休牧 9日休牧 21日休牧 9日休牧 21日休牧 9日休牧 21日休牧
産乳日量 20.4 19.3 18.0 17.5 17.8 17.3 15.9 15.9
4%FCM 19.7 18.5 16.5 16.4 16.7 16.4 14.9 14.9
体重増減 47.7 473 496 501 458 458 481 482

 試験Ⅱ
 平均草丈ならびに年間総生産量
  草丈(cm) 10a当生産量
イネ科 マメ科 生草 乾物 DCP TDN
 9日休牧区 14.2 9.5 2695 515.8 92.2 391.1
14日休牧区 21.7 15.3 3502 584.6 102.2 450.1
19日休牧区 32.9 22.4 6288 987.7 148.9 716.1
24日休牧区 47.6 30.1 5158 818.5 100.4 546.0

 休牧日数別採食量平均
供試牧区 供試牛
(頭)
測定
回数
入牧時
体重
1時間当たり採食量(kg) 1時間当栄養摂取量
生草 体重比 乾物 体重比 DCP TDN
 9日休牧区 4 11 470 10.1 2.18 18.0 0.39 321 1368
14日休牧区 4 7 469 14.5 3.11 2.29 0.49 402 1766
19日休牧区 4 6 474 15.5 3.28 2.34 0.50 368 1710
24日休牧区 4 4 473 15.8 3.34 2.30 0.48 281 1540

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 1. 良好草地では放牧期開始時期を早め、放牧期前半は休牧日数10〜15んちい、後半は20日前後となる。
 2. 秋更新後利用初年目の草地では放牧開始時期は従来程度とし休牧日数を20日前後とする。
 3. 放牧適期は草丈イネ科15〜20cm、マメ科10〜15cm草量10a当り400〜500kgのときである。