【指導参考事項】
低水分サイレージの調製とその飼養効果に関する試験成績 農林省北海道農業試験場 草地開発部草地第2研究室 〃 畜産部家畜第2研究室 〃 畜産部畜産化学研究室 |
・ 目的
近年酪農経営の傾向は大型化へ進み、大型機械の普及とともにその技術内容が異なってきている。草サイレージの調製についても機械化一貫体系技術の点から次第に低水分化への方向に推移し、全国的にやや普及しはじめているが、なかには低水分サイレージの特質を知らずに調製し失敗している例も少なくない。かかる見地から本サイレージの調製と乳牛への飼養効果まで一貫した試験結果から低酢微運サイレージの特質を見出し適切な指導が望ましいと考え本試験を行った。試験の結果まだ解明を要する点も数多く見受けられるが、時代の要請もありここに公表し大方の参考に供したい。
・ 試験方法
昭40年度 | |
1. 供試サイロ(約15t容サイロ2基)処理 | ┌サイロ1…踏圧 :1.100kg └サイロ2…無踏圧:2.200kg |
2. 消化試験(原料牧草、低水分サイレージ(サイロ1・2)めん羊6頭供試) | |
3. 育成牛による飼養試験 処理< | A 低水分サイレージ自由摂取+配合飼料0.5kg B 〃 + 〃 1.5kg |
昭41年度 | |
1. 供試サイロ(15t)3基処理 | ┌サイロ1:高水分サイレージ │サイロ2:皴添加 〃 └サイロ3:低水分 〃 |
2. 乳牛による飼養試験、平均体重600kg泌乳牛6頭1期3週間1処理2頭ラテン方格法による |
・ 主要成果の具体的データー
1. 昭40年度調製サイレージの消化率、栄養価、塔型サイロの養分回収率
区 分 | 醗酵温度(℃)開口 | 有機物 | 乾物 | 蛋白質 | 脂肪 | NFE | 繊維 | 平均水分(%) | ||
3日後 | 73日後 | 10日後 | ||||||||
原 料 草 | − | − | − | 68.5 | 66.7 | 67.8 | 30.3 | 75.1 | 66.2 | 73.9 |
サイレージ1 (踏圧) |
42 | 15 | 5 | 60.8 | 58.0 | 62.8 | 50.7 | 61.4 | 61.0 | 27.6 |
サイレージ2 (無踏圧) |
47 | 30 | 43 | 54.3 | 51.9 | 55.5 | 34.6 | 52.3 | 60.0 | 35.3 |
区 分 | 栄 養 価 | 養分回収率 | ||||||||
乾物中(%) | DCP (比率) |
TDN (比率) |
スポイ レージ |
取出中 変 質 |
醗酵 損失 |
回収率 | ||||
DM | DCP | TDN | ||||||||
原 料 草 | 8.2 | 64.3 | 100 | 100 | − | − | − | − | − | − |
サイレージ1 (踏圧) |
8.4 | 58.6 | 101 | 91 | 0.9 | 9.3 | 3.1 | 86.7 | 89.8 | 78.2 |
サイレージ2 (無踏圧) |
7.9 | 51.4 | 96 | 80 | 1.4 | 28.9 | 5.1 | 64.6 | 61.5 | 52.2 |
区 分 | 平均増体 (kg) |
1日1頭 増 体 |
週 令 と 体重相関(r) |
回 帰 式 X=週令 Y=体重 |
1kg増体に 要したTDN |
サイレージ1 | 70.8 | 0.772 | 0.978 | Y=320.2+5.54X | 6.23 |
サイレージ2 | 81.5 | 0.896 | 0.998 | Y=291.8+6.01X | 5.69 |
区 分 | DM 採食量(kg) |
DM/ 体重% |
DCP 採食kg |
TDN 採食kg |
4% FCM(kg) |
FCM/ DM |
体重 (kg) |
高水分サイレージ | 15.31 | 2.5 | 1.60 | 10.34 | 12.3 | 0.80 | 605 |
皴添加 〃 | 17.64 | 2.9 | 1.95 | 12.22 | 11.6 | 0.66 | 609 |
低水分 〃 | 17.76 | 2.9 | 1.44 | 11.88 | 11.5 | 0.65 | 614 |
・ 奨励又は指導参考上の注意事項
1. 塔型サイロを用いても十分な踏圧を加え、さらに埋草後はビニール水蓋の利用によって完全に密封することによって調製は可能であるが、少なくとも次の点には注意を要する。
2. 主として1番草を用いるが、原料草は養分の高い若刈りをする必要があり、良く予乾効果のあがるようにすること、ときにはヘイコンディショナーの必要もある。細切した方がよい。
3. 埋草中は十分な踏圧を行うこと。
4. 取り出し後は外気の接触とともに再醗酵、白カビの発生があるので注意すること。発生が大きいときは取出中の変質として乳牛には給与しないこと。
5. 気温が低くなっている時期11月〜4月までの給与が望ましい。