【指導参考事項】
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低水分サイレージの調製利用に関する試験 道立新得畜産試験場 草地科・畜産化学科 乳牛科・肉牛科 |
・ 目的
本道における牧乾草の調製は天候に支配されることが多いので牧乾草の代替として低水分サイレージの利用が考えられる。叉、高水分サイレージに較べ調製時の材料の運搬、機械化、サイレージの凍結や採食量等で利点が考えられる低水分サイレージの実用化技術の開発が必要である。
・ 方法
各年度で次の試験を実施した。
1. 低水分サイレージ調製法試験(39〜41年)
2. 予乾が牧草サイレージの品質に及ぼす影響(39〜40年)
3. 予乾が牧草サイレージの消化率に及ぼす影響(39〜41年)
4. 牧草サイレージ、乾草併用法と低水分サイレージ単用法との乳牛飼養効果の比較(39〜40年)
5. 乾草と低水分サイレージの乳牛飼養効果の比較(41年)
6. サイレージの乾物含量と乾物摂取量(40年)
7. 乾草と低水分サイレージの肉牛飼養効果の比較(41年)
・ 成果の概要
○ ピクアップタイプハーベスターを使用し機械化一貫作業によって慣行タワーサイロで低水分サイレージは調製可能である。
○ 低水分サイレージはPHは高く、有機酸組成は良好であるが高水分サイレージに比して乾物中のDCPは減少しTDNは増加が同等であった。
○ 高・中水分サイレージ、乾草併用と低水分サイレージ単用給与では乳牛飼養試験の結果、低水分サイレージは乾物摂取量は多かったが同等の産乳量で、増体効果があった。また、乾草と低水分サイレージの比較では、乾物摂取量は乾草がやや多く産乳量は同等で増体効果は乾草が優った。
○ 肉牛ではサイレージが低水分になると乾物摂取量は増加し、乾草と低水分サイレージを比較すると乾物摂取量は同等であったが増体効果は乾草が優っていた。
・ 主要成果の具体的データー
〜調製〜
○ ハーベスターの能率は乾草の予乾が進んでくると低下する。また細断長も長くなる。
○ トラックの1台当りの乾物運搬重量は水分60%程度の牧草が最大である。
○ ブロアーの乾物の吹き上げ重量は低水分の材料が多い。
○ サイロ上部は高水分な牧草をのせ、サイロ用水蓋で密封、加圧する。
〜品質〜
サイレージの水分含量が80〜40%に減少すると2番草ではPHは4.5〜5.9酪酸はなく乾物中のDCPは9.7〜7.9、TDNは55.0〜58.5、1番草でPH4.7〜5.5、酪酸はなく乾物中DCP7.4〜5.9、TDNは同等。
〜飼養(乳牛)〜
○ 低水分サイレージ単用と中水分サイレージ、乾草、高水分サイレージ、乾草併用法について3群共同一の飼養を行った期間との比率でみると乾物摂取量は117%、106%、98%で低水分サイレージがまさり、FCMでは106%、88%、93%で低水分サイレージがやや良かったが、期待乳量との増減差では殆ど差異がなかった。増体日量は661g、54g、232gで低水分サイレージが1番良かった。
○ 低水分サイレージ単用と中水分サイレージ、乾草併用法の比較では体重当りの乾物摂取量は1.93%、1.73%、増体日量は+437g、-420gでいずれも低水分サイレージがまさっていた。FCM乳量では各々11.31kg､11.39kgで大差なく乳組成についても同様であった。
○ 低水分サイレージと乾草の比較ではそれぞれの体重当りの乾物摂取量は2.0と2.1%でFCM乳量は15.7と15.4kgで大差なく、体重増減日量は0.04と0.43kgで乾草が優った
〜(肉牛)〜
○ サイレージの水分含量82〜54%で体重当りの乾物摂取量は1.2〜2.5%と増加した。
○ 乾草と低水分サイレージの比較では体重当りの乾物摂取量はそれぞれ2.3と2.2%で同等、旧増体量は524と315gで乾草給与が優った。
・ 奨励又は指導参考上の注意事項
① 10a当り1〜2t程度の生草収量の草地では1〜2日の予乾で水分50%以下に予乾が可能であるが、マメ科の多い高収量の草地で4日間以上も予乾する場合はれんぞくした晴天の日が少ないことや成分損失、消化率の低下がみられるので注意が必要である。
② フォレージ・ハーベスター、サイロ詰め込み用ブロアー、運搬用トレーラー等を高水分サイレージ用収穫機の状態でそのまま使用すると能率が低下するので工夫が必要である。
③ サイレージ詰め込み作業中、低水分の牧草は踏圧が困難なためよく細切りし、デイストリプューターの利用や、詰め込み終了後サイレージ上部が傾斜すると、取り出し口や上部の密封を完全にし気密を保つ注意が必要である。
④ 低水分サイレージは発酵が進まないためPHは高く、有機含量も少ないが酸組成は良好である。しかし粗蛋白質の含量および消化率が低下するので乾物中のDCPは減少する。また開封後長時間放置するとカビや熱がでで多大な損失をまねく危険がある。サイロ壁の部分はカビや品質不良なサイレージができるので、内壁のなめらかなサイロが適する。
⑤ 給与時にサイレージの乾物含量に巾があり、原物重では軽くても乾物重量が多いなどから、水分含量を時々チェックする必要がある。