【普及奨励事項】
道南における水田二毛作に関する試験
−育苗日数、栽植密度および品種に関する試験−
道南農試 作物科
(昭和39〜43年)

・ 目 的
 水稲の栽培前に他の作物が入った場合の水稲の栽培法(6月下旬〜7月上旬)を確立する。

・ 試験方法
  年次 品種 栽植密度 移植時
A 39〜40



ユ−カラ
南  栄
白  光



20株/m
28
35〜40



5月下旬 (5月21日)
6月下旬 (6月22日)
7月上旬 (7月6〜7日)
B 41〜43 晩植栽培における適品種の選定
C 41〜43 栽培法の確立




ほうりゅう
渡育154号
ユ−カラ
南   栄



20
28
35



6月下旬 (6月21日〜22日)

7月上旬 (7月5日〜6日)
D 41〜43 晩植栽培地域適応性(江差、厚沢部、松前、上磯)



渡育154号
ユ−カラ
南   栄
20
(28)
6月下旬

・ 試験成果の概要
 Ⅰ. 6月下旬植
  1. 生育は遅延し、収量選定要素の低下をまねくが、収量構成要素が拡大される。
  2. 熟苗の使用によって登熟歩合の低下が軽減される。
  3. 収量は標準栽培以上のものが期待される。
  4. 南栄程度の熟期のものは熟苗、密植(28株/m2)条件
  5. 渡育154号、ユ−カラ程度のものは熟苗が密植のいずれか1つの条件を満たせばよい。
  6. 農林20号、ふくゆき程度のものは収量構成要素が少なすぎ、叉白光、シモキタ程度のものは登熟歩合の低下により多収は望めない。
  7. 南栄栽培地帯では、晩植栽培(6月下旬)は可能である。
 Ⅱ. 7月上旬植
  1. 生育は更に遅延し、収量構成要素は標準植より勝るが、決定要素が劣る。
  2. ほうりゅう、渡育154号程度のものは安定しているが、ユ−カラ程度のものは限度。
  3. 収量は標準に比べ減収(10%以内)するが、36株/m2の密植により減収程度を少なくする事が出来る。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 南栄5月下旬植20株/m2普通苗の収量(42.6 49.3kg/a)を100とした割合
移植時期/
苗素質/
株密度/
品種年次
6月下旬植 7月上旬植
遅延苗 塾苗 熟苗 登熟苗
20 28 35 20 28 35 20 28 35 20 28 35
ユ−カラ 39 95 97 100 88 101 95 73 78 78 86 91 92
40 82 84 87 77 87 83 63 67 68 75 79 80
南  栄 39 85 99 88 87 95 96 41 55 79 69 70 68
40 77 73 76 92 88 89 56 57 66 72 79 86
白  光 39 71 73 73 74 82 86 19 7 14 33 40 46
40 65 73 70 77 82 84 26 34 40 52 54 55

 晩植栽培と玄米収量(41〜43平均)


品種名 5下 6下 7上






m2





(千粒)
20 28 20 28 20 36 28
渡154号   34.7 30.8 35.2 34.0 29.1 31.7
ユ−カラ   32.3 30.4 31.0 27.1 30.9 29.5
南  栄 22.8 31.0 28.4 30.5 28.1    
ほうりゅう           34.0 30.8








渡154号   58.4 61.7 52.1 50.7 43.8 36.1
ユ−カラ   70.0 66.8 62.8 60.9 58.7 57.2
南  栄 75.8 73.5 70.5 55.5 51.8    
ほうりゅう           48.5 47.5

・ 普及指導上の注意事項
 1. 水田二毛作栽培の晩植栽培基準
移植時期 品  種 苗素質 移植密度 適用地帯
6月下旬
早生〜中生の早
渡育154号、ユ−カラ
中生
南 栄
普通苗
熟 苗
20
28
南栄が安全に
栽培し得る地帯
熟 苗 28
7月上旬
早生〜中生の早
ほうりゅう
渡育154号、ユ−カラ

熟 苗 28〜36
 2. 栽培上の注意
  1. 前作の残効濃度を考慮に入れること。
  2. 晩植栽培の生育は稍徒長気味になるので倒伏し易く、いもち病におかされ易いので、対策をたてること(品種・管理)
  3. 品種は極早生(農林20号程度)は増収が期待出来ないので、早生(ほうりゅう)〜中生(南栄)より選ぶこと。
   即ち
                     早生〜中生   中生
        ┌──────────────────────┐   ┌┐
         ほうりゅう   ほくせつ   新栄   ユ−カラ     新栄    南栄
  4. 生育期間が短いので雑草の発生が少なく、除草管理は簡単である。