【指導参考事項】
水稲苗床に対する泥炭加工有機物土壌改良資材の雪上散布効果に関する試験
−融雪促進並びに苗の生育−
道立中央農試稲作部栽培第1科
(昭和42〜43年)

・ 目 的
 泥炭などに由来する有機物土壌改良剤を水稲苗床に雪上散布することによる融雪促進効果を明らかにすると共に、苗素質に対する資材本来の効果について検討する。

・ 試験方法
 A. 資材別効果比較試験
  a. 場内圃場
     (昭42)



使用資材…

使用量……
 泥炭加工有機物資材、泥炭有機物資材 熔燐

 15L/a
  b. 現地(月形圃場)
     (昭43)     



使用資材…

使用量……
 泥炭加工有機物資材、泥炭有機物資材 熔燐、アッシュ土壌

 15、30L/a
 B. 散布時期比較試験
     (昭43)
      使用資材…
使用量……
使用時期…
 泥炭加工有機物資材
 15L
 3月10日、20日


・ 試験成果の概要
 1. 泥炭などに由来する有機物土壌改良剤の散布によって、熔燐、アッシュなどの淡色資材、土に比し、一層速やかな融雪進度が示された。
 2. 散布時間は日照時数が著増し、平均気温もプラスとなって融雪が目立って進む時期、いいかえると、新たな積雪がおこらない頃が適当であることを認めた。
 3. 使用量については、本試験では15〜30Lで一応雪面が覆われ、融雪促進効果が得られた。
 4. 土壌改良剤本来の水稲苗の生育に及ぼす効果は、播種前の施肥時施用に比して幾分低下するが、かなり発揮されていることが認められ、融雪期の遅い地帯では一石二鳥的な使用方法と考えられる。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 各種資材の雪上散布と融雪の推移
項 目/
月 日/
資材名
融雪深(散布時の雪面との差cm) 融雪期
(月日)
〃差
(日)
融雪進度
cm/日
(22/Ⅲ〜31/Ⅲ
13/Ⅲ 17/Ⅲ 23/Ⅲ 27/Ⅲ 30/Ⅲ 4/Ⅳ
無処理 6 -7 6 20 37 63 9/Ⅳ





4.0


6.6
熔 燐 13 9 35 66 91 115 3/Ⅳ 6
アッシュ 11 8 32 59 82 115 4/Ⅳ 5
土 壌 12 8 31 60 86 115 4/Ⅳ 5
 〃(多) 12 8 31 63 90 115 3/Ⅳ 6
泥炭加工有機物資材 16 12 43 80 115   31/Ⅲ 9




7.7
      〃(多) 16 14 46 84 115   30/Ⅲ 10
泥炭有機物資材 13 7 36 67 115   1/Ⅳ 8
      〃(多) 15 9 35 66 115   1/Ⅳ 8
  備考) 散布時の積雪深115cm、実施場所−月形町 宮島苗床
       施肥量15L/a、但し、多量区は30L/a

 土壌改良剤の施用(雪上、施肥時)と苗素質
項 目/
資材名
草丈
(cm)
第1鞘高
(cm)
葉数
(枚)
茎数
(本)
地上部重量
(g/100本)
地下部重
(g/100本)
発根力
生体 青色乾 生体 風乾 本/10本 平均
(mm)
最長根
平均
(mm)
無処理 11.0 3.9 2.8 1.1 5.2 1.9 3.4 0.5 3.9 0.9 1.4



熔 燐 11.2 4.1 2.8 1.0 8.0 2.0 1.1 0.4 3.8 1.1 1.6
アッシュ 13.5 4.9 2.6 1.0 11.0 2.5 1.4 0.4 4.5 1.2 2.0
泥炭加工有機物資材 11.2 4.1 2.7 1.0 12.2 2.5 1.9 0.3 4.1 0.9 1.4
    〃(多) 11.4 4.1 2.6 1.0 10.5 2.3 1.4 0.3 4.0 1.6 1.3
泥炭有機物資材 11.6 3.9 3.1 1.2 12.2 2.2 1.8 0.3 4.0 1.1 1.7
    〃(多) 12.6 4.1 3.3 1.4 13.5 2.1 2.3 0.5 4.7 1.2 1.8



熔 燐 11.9 4.2 2.9 1.0 11.0 2.1 1.7 0.4 4.2 0.8 1.3
アッシュ 11.5 3.8 3.3 1.6 12.6 2.6 1.8 0.5 3.8 0.8 1.2
泥炭加工有機物資材 11.8 3.8 3.3 1.4 14.7 2.6 2.8 0.5 4.1 1.1 1.7
    〃(多) 12.1 3.9 3.3 1.5 13.7 3.0 2.6 0.4 4.3 1.2 1.8
泥炭有機物資材 12.3 4.0 3.2 1.4 13.3 3.0 2.7 0.5 3.9 1.3 1.8
    〃(多) 11.7 3.7 3.5 1.7 15.1 2.8 4.0 0.6 4.2 1.6 2.2

       融雪期と苗床の耕鋤始期


 融雪と土壌三相(%)
月 日/
項 目
3月26日 4月1日 4月5日
処理区
(24/3融雪)
気相 10.0 19.5 21.5
固相 38.2 39.5 40.5
液相 51.8 41.0 38.0
無処理区
(30/3融雪)
気相 8.0 14.0
固相 37.9 40.0
液相 54.1 46.0

・ 普及指導上の注意事項
 1. 本方法は従来から使用されているアルカリ資材が土壌反応との関連、特に連用の弊害に難がある点を打破しようとするものである。
 2. 本試験に供試した有機物土壌改良資材の苗床施用効果についてはすでに別に試験された。