【普及奨励事項】
(3) ばれいしょ「北海45号」「北海47号」に関する試験成績 1) 「北海45号」 北海道農試作物第1部・中央農試畑作部・十勝農試・根釧農試 北見農試・上川農試・天北農試 |
・ 育種目標
高でん粉、大粒
・ 来 歴
交配親 : | 母北海29号(咸南白×島系277号)父Hochprozentige |
昭和34年度: | 人工交配、以後選抜を行う |
昭和37年度: | 59075-8として系統選抜試験編入 |
昭和38年度: | 生検予備 39年度生産力検定試験編入 |
昭和40年度: | 島系475号となり、道内試験機関および特検などに配布 |
昭和41年度: | 北海45号と命名される |
1. 形態的特性: |
叢性はやや開、茎長は「農林1号」よりながく、茎数は4本内外だが粉枝多く、太くて強壮である。 茎色は緑で一部に紫色が分布する。葉色は緑、子葉の形はやや巾がせまく、着生は普通、花は淡 青色を呈し、花数多く、花粉もまた多い。 |
2. 生体的特性 |
茎葉黄変期はきわめて遅く、通常10月上旬の霜によって枯凋する。疫病抵抗性主動遺伝子はも たないが、茎葉の疫病にはきわめて強く、無防除栽培でもかなりの収量は得られる。茎は伸びる割に 倒伏は少ない。開花期頃に上位葉が内側に巻くこともあるが、これは水分生理的変調によるものと 考えられ、ウイルス性のものではない。 塊茎のでん粉価が26%内外できわめて高く、しかも、上いも平均1個体が100g程度で、比較的大きい。 いも収量は「農林1号」の85%程度で多くはなく、また多肥による増収効果も大きいとはいえない。 しかし、年次変異の少ないのが利点で、これは栽培上のすぐれた特性の1つとしてとりあげられる。でん 粉収量は4ヵ年平均で「農林1号」の33%増となっている。でん粉の粒子は大きい方である。 ウイルス病にはやや弱く、エゾモザイクが目立ち、葉巻病にも弱いが採種管理を適切にすれば問題は ない。軟腐病にはやや強で、青枯病には弱い方である。塊茎には褐色心腐その他変色がでやすく、 とくに春先に甚だしいから、種いもの貯蔵は通気の良好な場所で注意して行う。 |
3. 用 途 |
でん粉原料専用 |
・ 主要成果の具体的デ−タ−
1. 特性調査(5ヵ年平均)
叢 性 |
茎 長 (cm) |
茎 色 |
茎 数 |
花 色 |
葉 色 |
塊 茎 | い も 着 |
食 味 |
休 眠 |
疫 病 |
塊 茎 腐 敗 |
貯 蔵 性 |
||||
形 | 皮 色 |
大 き さ |
目 の 深 さ |
|||||||||||||
北海45号 | ヤ 開 |
87 | 緑 (紫) |
3.0 | 淡 青 |
緑 | 円 卵 |
淡 褐 |
ヤ 大 |
中 | 中 | 良 | 長 | 強 | 中 | ヤ 難 |
農林1号 | 中 | 78 | 緑 (紫) |
3.5 | 白 | 緑 | 扁 球 |
黄 白 |
ヤ 大 |
深 | 密 | 中 | 中 | 中 | 中 | 中 |
エニワ | 直 | 85 | 緑 | 2.5 | 白 | 緑 | 扁 卵 |
淡 褐 |
大 | ヤ 浅 |
ヤ 疎 |
良 | 長 | 中 | 良 |
萌 芽 期 (月日) |
開 花 期 (月日) |
黄 変 期 (月日) |
早 堀 | 普通堀 | 栽植密度および施肥量に よるでん粉収量と割合 (kg/10a%) |
|||||||||
収量比 (%) |
でん 粉価 (%) |
上いも 収量 (kg) |
比 (%) |
でん粉 価 (%) |
でん粉 収量 (kg) |
1個重 (g) |
標 準 |
密 植 |
多 肥 |
多肥 密植 |
||||
北海45号 | 6. 2 | 7.14 | (9.26) | 51 | 20.5 | 2.673 | 84 | 26.4 | 679 | 100 | 717 (129) |
738 (131) |
868 (125) |
896 (123) |
農林1号 | 5.31 | 7. 6 | 9.17 | 100 | 13.5 | 3.196 | 100 | 170 | 511 | 112 | 556 (100) |
563 (100) |
604 (100) |
727 (100) |
エニワ | 6. 5 | 7.14 | 9. 9 | 10 | 14.6 | 2.797 | 88 | 19.3 | 512 | 102 | − | − | − | − |
天北農試 | 北見農試 | 上川農試 | 中央農試 | 十勝農試 | 根釧農試 | ||||||||
い も 収 量 |
でん粉 収量 |
い も 収 量 |
でん粉 収量 |
い も 収 量 |
でん粉 収量 |
い も 収 量 |
でん粉 収量 |
い も 収 量 |
でん粉 収量 |
い も 収 量 |
でん粉 収量 |
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農林1号(実収)kg/10a | 2.895 | 445 | 3.800 | 553 | 3.622 | 643 | 4.167 | 643 | 3.126 | 459 | 2.298 | 365 | |
対農一比(%) | 北45 | 79 | 125 | 98 | 147 | 79 | 116 | 71 | 109 | 87 | 150 | 94 | 149 |
エニワ | 96 | 108 | 88 | 96 | 95 | 102 | 82 | 92 | 94 | 108 | 105 | 118 |
・ 適応地帯並びに栽培上の注意
1. 適応地帯:
天北、上川北部、網走、十勝などのでん粉原料地帯とする。ごく晩生なので、でん粉原料用作付の1割ぐらい、約5.000haを見込む、晩生の「ホッカイアカ」や「シレトコ」などより疫病に対し広義の抵抗性をもち、安定した収量をうるので、これら2品種の大部分を徐々に交替してゆくべきのものと考える。
2. 栽培上の注意:
多肥による増収効果はあまり大きくない。密植にすぎると小粒化することがある。平年作またはそれ以下の年には「農林1号」や「紅丸」よりなさることが多い。ストロンがやや長いから「エニワ」に準じた注意が必要である。高でん粉の塊茎は往々にして変色しやすく、越冬後甚だしくなるが、島松においては腐植に至ったことがなく、萌芽にも悪影響をみていない。しかし、他方により貯蔵は気通の良好な場所で行うなど、とくに注意する必要があろう。また、極晩生なので塊茎疫病の罹病する機会もふえるから、収穫は茎葉枯凋10日後に行うようにする。また運搬などに際しては打撲傷をうけやすいから注意する。