【普及奨励事項】
(2) 「北海47号」
北海道農試作物第1部・中央農試畑作部・十勝農試・根釧農試・北見農試・上川農試・天北農試

・ 育種目標
 早期肥大性  高でん粉  多収

・ 来 歴
 交配親   :   母−オオジロ  父−Hochprogentige
 昭和35年度:   人工交配 以後選抜を行う
 昭和38年度:   60083-10として、系統選抜試験編入
 昭和39年度:   生検予備 40年度生産力検定試験編入
 昭和41年度:   島系479号となり、道内試験機関および特検などに配布
 昭和42年度:   北海47号と命名される


・ 特 性
 1. 形態的特性:
   叢性は中程度で「農林1号」よりやや開く。茎長、茎数は「農林1号」なみである。茎色は緑、萌芽時の若葉は紫をおびた濃緑色で、生育が進むと緑色となる。小葉はやや大きく、平滑でやや光沢が感ぜられる。花は淡紫色を呈し、花数は多い。花粉量は「農林1号」なみである。
   塊茎は扁平な長卵形で、いもの着生は密である。形のくずれはなく粒揃いもよいが、平均1個重がやや小さいことがある。皮色は淡褐色で目の深さは中ぐらいだが、退化葉跡の切り込みが鋭い傾向がある。総じて、外貌はやや劣る。
 2. 生態的特性:
   茎葉黄変期は中晩生で「農林1号」よりは1週間ほどはやい。疫病抵抗性は主動遺伝子をもたず、罹病経過は「農林1号」よりやや進行がはやい。
   塊茎の肥大は「農林1号」と同様かまたははやいが、でん粉価が4%前後たかいので、でん粉収量はつねに20〜30%上回っている。最終のいも収量は「農林1号」程度、でん粉価は21%内外で、でん粉収量では約20%の増収となっている。いも収量は多肥で増収するが、密植による効果は少ない。でん粉粒子は「農林1号」より大きいが、その粒経分布は似ている。
   ウイルス病にはとくに弱くないが、特にエゾモザイク散発的に発生することがある。軟腐病にはやや弱く、青枯病には普通程度に罹病する。
 3. 用 途: でん粉原料専用

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 1. 特性調査(4ヵ年平均)
 











塊  茎



















北海47号 cm
72
3.9
扁長
淡褐
農林1号 78
(紫)
3.5 扁球 黄白
エニワ
85 2.5 扁卵 淡褐

 
  疫病はほ場観察による。塊茎腐敗は疫病菌採種試験の2ヵ年の結果による。

 2. 生育および収量調査(4ヶ年平均。ただし、栽密以降は2ヵ年平均)
 


(月日)



(月日)



(月日)
早 堀 普通堀 栽植密度および施肥量による
でん粉収量と割合 (kg/10a)



(%)




(%)
上いも
収量
(kg)




(%)





(kg)



(g)






多肥
密植
北海47号 5.31 7. 7 9.11 117 17.2 3.235 98 21.0 627 89 676
(122)
658
(117)
891
(128)
877
(1211)
農林1号 5.31 7. 6 9.17 100 13.5 3.196 102 17.0 511 112 556
(100)
363
(100)
694
(100)
727
(101)
エニワ 6. 5 7.14 9. 9 70 14.6 2.797 88 19.3 512 100
  早堀−8月上旬調査

 3. 各農試における調査(2ヵ年平均。ただし、北見と十勝は3ヵ年平均)
  天北農試 北見農試 上川農試 中央農試 十勝農試 根釧農試
いも
収量
でん粉
収量
いも
収量
でん粉
収量
いも
収量
でん粉
収量
いも
収量
でん粉
収量
いも
収量
でん粉
収量
いも
収量
でん粉
収量
農林1号実収 (kg/10a) 3.303 522 3800 553 4001 728 4167 643 3126 459 2293 369
対農一比 北海47号 84 100 107 129 96 115 96 115 101 126 109 138
エニワ 97 111 88 96 94 99 82 92 94 108 110 123

・ 適応地帯並びに栽培上の注意
 1. 適応地帯:
   全道一円のでん粉原料地帯とし、塊茎肥大およびでん粉蓄積経過よりみて10.000ha以上を見込む。現在栽培されている「農林1号」、「紅丸」およびエニワなど中晩ないし晩生種の少なくとも20%以上をこの早熟性品種をもって交替し、将来は50%以上交替してもよいと考える。
 2. 栽培上の注意事項:
   初期生育が旺盛で、茎葉も繁茂の傾向にあるので、栽植密度は10a当り3.000〜3.500個体とむしろ疎植気味にすることが望ましい。肥料には敏感で、多肥栽培で増収する。こうして1個重の大粒化をはかり、でん粉収量も期待どおり確保できる。疫病に対しては「農林1号」や「紅丸」と全く同様に防除する。枯凋が「農林1号」を上回るので早堀してもよい。いもは小粒になりがちであるが、コンバインを使用すれば収穫は問題ない。貯蔵性についてはとくに心配はない。