【普及奨励事項】
5. 緑肥向ナタネ「北海3号」に関する試験成績
農林省北海道農業試験場作物第2部 特用作物第1研究室(往田 哲也)
道立中央農試畑作部畑作第2科(北村 亨・野村 信史・篠原 紀世史)
道立中央農試化学部(元)(松代 平治・兼田 裕光)
道立中央農試原々種農場作物第2科(宮浦 学・菊池 正夫)
北海道農務部農業改良課(大槻 知治・千葉 辰男・宮武 利明)
(昭和35〜43年度)

・ 育種目標
 秋季における生育が旺盛で既存品種よりも草収量の多い品種の育成を目標とした。

・ 来 歴
 昭和35年度交配、北分系145号×フランス3号
 以後選抜固定を図り、昭和39年度生産力検定予備試験
 昭和40〜43年度 生産力検定試験 昭和42〜43年度奨励品種
 決定試験 昭和41〜43年度地域適応性検定試験を行った
 昭和43年度における世代はF8である

・ 特 性
 1) 形態的特性   葉は緑色を呈し、広倒卯形で大きく厚い、また欠刻は少浅である。
根は稍短かいが太い。成熟期における草性はN型で長稈、稍少枝
で莢が長い。一莢結実粒数は多い方である。子実は黒色整粒で粒
大は稍小く中粒に属する。
 2) 生体的特性  秋季の生育が早く、かつ旺盛で秋季における草収量ならびに成分
含有率が高い。耐冬性は稍強に属する。抽苔期ならびに開花期は晩
いが成熟期は中生に属する。耐倒伏性は少ない。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 第1表 秋季(越冬前)における生育および特性調査成績
系統または
品種名
草丈
(cm)
葉数 葉長
(cm)
葉巾
(cm)
葉色 葉形 欠刻 葉の厚さ 個体新鮮
地上部重
(g)
同左
乾物重
(g)
個体新鮮
地下部重
(g)
同左
乾物重
(g)
根長
(cm)
北海3号 22.5 6 11.3 9.4 広側
卵形
小浅 17.00 2.35 0.39 0.060 7.9
岩内(標準) 21.3 6 12.1 8.5 濃緑 長梢
円形
多深 14.18 2.09 0.27 0.050 9.0
タイセ−ナタネ
(比較)
21.5 6 12.4 7.3 11.69 1.92 0.35 0.064 9.7
イワオナタネ
(比較)
19.2 5 10.5 6.7 11.72 1.83 0.34 0.064 9.3
  昭39〜43年度の5ヶ年平均
  個体乾物重は昭42:43年度の2ヶ年平均
  地下部についての調査は昭43年度成績

 第2表 a当り草収量
系統または
品種名
a当生草重
(kg)
同左比率
(%)
a当乾物重
(kg)
同左比率
(%)
北海3号 112.7 143 7.2 155
岩内(標準) 88.9 100 5.2 100
タイセ−ナタネ
(比較)
70.6 120 5.7 119
イワオナタネ
(比較)
34.6 105 5.3 113
  ・ 生草重−昭和39、40、42、43年度の4ヶ年平均
  ・ 乾物重−昭和42、43年度の2ヶ年平均

 第3表 成分含有率
系統または
品種名
水分(%) 乾物中(%)
N P2O5 K2O
北海3号 85.87 3.59 0.80 2.30
岩内(標準) 85.08 3.51 0.74 2.20
タイセ−ナタネ
(比較)
84.10 3.56 0.83 2.34
イワオナタネ
(比較)
83.82 3.43 0.81 2.34
  昭41年度成績

・ 適用地帯並びに栽培上の注意
 適用地帯
  当面は主として従来から緑肥ナタネ栽培を行っている全羊蹄山麓畑作地帯の約1.000haの岩内品種と全面的におきかえ得る。
 栽培上の注意
  従来から用いられている岩内品種に従事手差支えないが、小粒であるから播種量を約3割少なくする必要がある。
  栽種栽培では、耐倒伏性が少ないことを留意して栽培することが望ましい。