【指導参考事項】
れき耕栽培に関する試験成績
道南農試園芸科 (沢田 一夫・今野 寛・土屋 弘・高橋 総夫)
土壌肥料科 (高田 亨・川原 祥司)
(昭和38〜43年)

・ 目 的
 寒冷地のハウス栽培の省力安定化に資するためれき耕栽培実用化について方法、培地として駒ヶ岳火山れきの利用法、経済性を検討する。

・ 試験方法
 れき施設時間制御式60m2、液面制御式30m2を用いキュウリ、トマト、ピ−マン、レタス、カンギクなどを栽培、生産力、生態など培地材、培養液との関連から調査、培地材、培養液については理化学性を土壌肥料科において調査した。

・ 試験成果の概要
 1. 河川れきでのれき耕栽培
  キュウリ、1年2〜3作の連作もホルマリン消毒を作期毎に行うと支障ないが2作で拡大をはかった方がよく、品種誘引などを合理的にすること。
  栽植密度は20cm密植区が管理上の集的化を要求するが有利収量81日採取で3.3m2当り35〜40kg、60日で17kg(粗収入2900円39年)秋作では56日11〜12kgで特に支障となるものはない。トマト土耕に比し初期生育が強くなり易く適苗令について明らかにできなかったが40〜60日の健苗と培養液の組成でより高収量が期待できる。密度は20cm千鳥方式で更に向上すると考えられるが、50日採取で23kg、30cm植えで21.7kgの収量
  レタス、真冬を経過する栽培では加温経費大でマイナス、収量2.2kgピ−マン栽培容易で、5月6日〜7月31日まで30cm2列植えで7.5kg収穫、カンギク秋冬作として栽培容易12月〜2月収穫66本2000円の粗収入。
 2. 火山礫によるれき耕栽培
  キュウリ、レタスともに河川れきより20〜25%低収で熟期も遅れる。その原因として比熱が大きく、温度較差の少ないこと、ナトリウムの溶出があること粒径により理化学性が変わることなど上げられるが、明確でない。P吸収係数の2/3を与えることにより、生育収量は飛躍的に増加する。過石で火山礫10kgに6gを処理する。
 3. 経済性では660m2の規模として換算すると年2作として施設償却費103.000円であっても所得キュウリ378.000円、トマト318.400円、レタスの冬作は電熱費113.600円のため△99.000円であった。
 4. 固定拡大方向にあるハウス栽では埴力効果大で必ずしも投資過大と評価できなく、熱練者、温泉熱利用等に導入し得る。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
作 物 品種名 播種
(月日)
定植
(月日)
株間
(cm)
収穫始
(月日)
同終
(月日)
3.3m2
株数
(株)
1株
収量
(g)
3.3m2当り
個数
(ヶ)
重量
(g)
粗収入
(円)
キュウリ 翠青2号 2. 5 3. 9 25 4.17 6.16 8.2 2.159 185 17.704 2.885
松のみどり 2. 1 3.15 20 4.15 6.21 10.3 1.284 102 13.225
25 8.2 1.417 93 11.620
30 6.9 1.536 79 10.600
翠青2号 2. 1 3. 9 30 4.24 6.16 6.9 1.772 139 12.223
四季節成 6.14 7. 6 30 8.11 10.6 1.592 84 10.985
亀交春秋 9.15 10.15 30 凍害
トマト 東  光 2.11 3.22 20 6.20 8. 8 10.3 2.258 110 23.257 2.348
30 6.9 3.150 103 21.735 2.195
40 6.15 5.2 2.960 72 15.392 1.555
ピ−マン ジャック 3. 4 4.27 30×2 5. 6 7.31 13.8 548 185 7.562
40×2 10.4 635 170 6.604
レタス グレ−トレ−スク 11.8 2.17 30×2 3. 7 13.8 164 138 2.260 678
○キュウリ 翠青2号 2. 5 3. 9 25 4.24 6.16 8.2 166 143 13.608 1.754
○レタス グレ−トレ−スク 11.8 2.17 30×2 3. 7 13.8 121 138 1.670 501
  注) ○火山礫耕

・ 普及指導上の注意事項
 1. 施設の導入は立地条件と技術との関連において行うこと。
 2. 河川れきが能率よい、火山礫はP処理6g/10kgでも低収で熟期おくれる、れき質調査のこと。
 3. 育苗は水耕育苗とする。
 4. 残根除去、ホルマリン100倍液24時間消毒すること。
 5. 定植時湛液状態で1〜2日経過後自動給水に移行すること。
 6. ベットに土砂を絶対にいれぬこと、ベットは高設とすること。
 7. 追肥は分析により行うことを原則とするが、減水量から行うこともできる。
 8. ハウス栽培技術の習術者によってのみ生かし得る技術である。