【指導参考事項】
ぶどう品種に関する試験成績
道南農試園芸科 (白金 茂)
(昭和39年〜43年)

・ 目 的
 最近府県からのぶどう新品種の導入が大きくなりつつあるので、これら品種の適否を知るため

・ 試験方法
 a、 一区40〜100m2(3〜5樹)1区制
 b、 供試品種はフレドニヤ等21品種で表出以外のものはデラウエア、オンタリオNo2である。
 c、 栽培法
    棚仕立V字型整枝、長短折衷剪定、全面早生(ラジノクロ−バ−)10a当尿素10瓩、熔燐20瓩、硫加10瓩、硝石灰60瓩、硫苦(25%)20瓩を消石灰は8月上旬、他は5月上旬全量を草上から樹冠下全面に均等散肥

・ 試験成果の概要
 ○ 熟期はフレドニヤ、グリ−ンマウンテン、ポ−トランドがキャンベルスア−リ−の9月30日より6日早熟で、ヒムロットはこれより4日、ナイヤガラは7日おそい。巨峰、ス−パ−ハングルグ、S9110は10月20日頃、ダンキルク、ハノ−バ、ゴ−マス、S5279は10月30日でもっとも晩熟である。落葉期はナイヤガラまでは10月下旬〜11月上旬にわたるが、巨峰以降は11月上旬である。
  ◎ 収量は、ナイヤガラ、キャンベルスア−リ−、ダンキルク、巨峰が多く、ハノ−バ、ゴ−マス、フレドニアは中間、ポ−トランド、グリ−ンマウンテン、ヒムロット、ス−パ−ハングルグ、S5279、S9110は少なかった。
  ◎ 果房重は、巨峰が大きく、ダルキルク、ゴ−マス、キャンベルスア−リ−、ナイヤガラ等が大房の部で、ハノ−バ、ス−パ−ハムグルグは中房、フレドニヤ、ポ−トランド、S9110、S5279、ヒムロット、グリ−ンマウンテンは小房であった。
  ◎ 果粒重は、巨峰が大きく、ゴ−マス、ス−パ−ハングルグ、ハノ−バ、キャンベルスア−リ−、ナイヤガラ、フレドニア、ポ−トランドの順で小さくなりグリ−ンマウンテン、S5279が最も小さかった。
  ◎ 樹勢は、ナイヤガラ、巨峰、フレドニアが強く、S9110、フムロットが弱く、その他は中間であった。
  ◎ 果実の食味は、ブリックス糖度計の指度は全供試品種共14°〜17°と高°だったが、ゴ−マス、ダンキルク、ハノ−バ、S5279、S9110、ス−パ−ハムグルグ等は未熟の故か、酸味、渋味が強く、生食用には不適に見られ、その他では、ポ−トランド、グリ−ンマウンテンが優れ、キャンベルスア−リ−、フレドニアも良く、ナイヤガラ、フムロット、巨峰等もまずまずの食味であった。
  ◎ その他では、ポ−トランドに脱粒性が強く貯蔵力も劣るように見受けた。
 以下熟期別に多収のものより表示する。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 特性表 (昭和42・43年平均)
項 目/
品種名
萌芽期
(月日)
開花期
(月日)
収穫期
(月日)
1樹当り 一果
房重
(g)
一果
粒重
(g)
糖度
(度)
食味 幹周
(cm)
樹  令
果房数
(ヶ)
果房重
(kg)
同左
キャンベル
対比
(%)
フレドニヤ 5.14 7.12 9.24 93 12 46.2 130 3.7 15.0 18.5 5〜7年生
平均
グリ−ンマウンテン  .15 .14  .24 84 9 34.6 104 2.7 16.4 13.2
ポ−トランド  .16 .11  .24 30 9 34.6 101 3.4 16.1 13.7
キャンベルスア−リ−  .15 .11  .30 128 26 100.0 203 4.3 14.8 19.0
ヒムロット  .16 .16 10. 4 40 5 19.3 125 3.2 16.2 ヤ良 11.5
ナイヤガラ  .16 .9  .7 206 52 200.0 252 3.5 14.3 ヤ良 21.0
巨  峰  .18 .18  .20 58 13 50.0 224 11.3 14.2 ヤ良 9.5 6年生のみ
ス−パ−ハムグルグ  .17 .17  .21 41 5 19.3 110 5.4 15.2 不良 9.5 6.7年平均
S9110  .15 .16  .21 16 2 7.7 112 3.1 15.0 ヤ不良 7.9 5.6 〃
ダンキルク  .17 .15  .30 115 17 65.4 144 16.6 極不良 9.5 6年生のみ
ハノ−バ  .17 .13  .30 56 9 34.6 152 5.3 15.2 不良 12.6 5.6年平均
ゴ−マス  .18 .15  .30 45 7 26.9 144 7.9 16.0 極不良 9.7
S2579  .16 .14  .30 33 3 11.6 103 2.5 15.4 極不良 9.2
  注) デラウエア、DK151、大平デラウエアは凍死、バッハロ−、オンタリオ、イタリアは異品種により除外。

・ 普及指導上の注意事項
 道南において、生食用ぶどうを栽培する場合、従来のキャンベルスア−リ−、ナイヤガラに加えて、早熟良質種として、フレドニア、グリ−ンマウンテン、ポ−トランド等も適当であるが、収量や貯蔵輸送に難点があるので大面積は不適当であろう。