【普及奨励事項】
上川地方傾斜地の小豆間作ライ麦緑肥効果に関する成績
北海道立上川農業試験場畑作科 (関口 明・和田 順行)

・ 目 的
 本道の傾斜地面積はおよそ30万haもあるといわれ、これは畑作面積70万haの実に40%強に当る。上川管内に例をとると、収穫後から翌春にかけて裸地状態になる豆類と馬鈴薯の面積が約50%を占めている。そこで豆類の中作付の多い小豆に対して秋播ライ麦の間作を試みて土壌侵蝕を防止しさらに鋤込みによって地力増強を計るべく本試験を行った。

・ 試験方法
  昭和41年度
   主作物小豆(茶殻早生)  主作物畦巾  50・55・60cm
   間作物ライ麦(ペトク−ザ)  ライ麦播種量  8・12・16L
 ライ麦施肥量  0・2・4kg/10a
   1区10〜12m2  3型(付加処理:小豆慣行)  2反復
  昭和42年度
   主試験区:     品種

宝小豆
茶殻早生
 副試験区


慣行
間作
  昭和43年度
          春間作
          夏間作
          慣行  50
           〃   60
          (ライ麦12L  畦巾60cm  三要素4kg/10a  1区18m2  3反復
  ○鋤込試験(供試作物、馬鈴薯、菜豆)
   主試験区

無鋤込
鋤込
副試験区

標準肥
N50%増肥
   1区17.5〜21m2  分割区法2反復


・ 試験成果の概要
 1. ライ麦夏間作による小豆への影響は、畦巾と施肥量の影響が大きかった。畦巾は60cmに広げ、施肥量は4kg/10a程度の施用で小豆収量は上昇傾向を示した。
 2. さらに間作時期を拡大し春間作についても検討したところ春間作はライ麦との競合で小豆収量は減収したが、夏間作は競合は少なく、小豆収量も施肥により増収傾向を示した。
 3. 夏間作ライ麦を鋤込んだところ、馬鈴薯では上葉重が増加し、澱粉価は低くなり、澱粉収量の増収率は低下した。叉菜豆ではイネバエの被害を20%強も受けたが結果として鋤込区の茎長、茎数が増加した。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 昭和41年度(主効果平均値の比較 交互作用はNS)
  畦 巾 播種量 施肥量
50 55 60cm 8 12 16L 0 2 4kg
小豆子実重 120 140 148 137 138 134 122 136 151
ライ麦秋生草 240 223 307 219 269 281 124 272 374
 〃  春 〃 540 459 520 405 575 540 187 621 712
  (注) kg/10a 小豆慣行栽培は148kg

 昭和42年度
区 別 小 豆 ライ麦
開花始
(月日)
成熟期
(月日)
子実重
(kg)
草丈
(月日)
生草重 乾物重
宝小豆 慣行 7.27 9. 8 127 5. 9    
間作 112 49.1 1850 396
茶殻早生 慣行 7.25 9. 1 104      
間作 109 50.0 1900 407

 昭和43年度  (kg/10a)
区 分 ライ麦地
上部乾物
小豆
子実重
春間作 296 138
夏間作 70 285
慣行 50   256
慣行 60   258

 鋤込試験
馬鈴薯 10a
上薯重
でん
粉価
10a
澱粉
菜 豆 茎長 莢数 子実重
鋤込 標肥 123 18.57 111 鋤込 標肥 84.9 21.4 118
N増 119 18.63 109 N増 85.2 25.5 164
標肥 100 20.33 100 標肥 60.8 17.7 100
N増 111 19.87 108 N増 92.1 22.7 162

・ 普及指導上の注意事項
 1. ライ麦の夏間作は土壌侵蝕の起し易い傾斜地・小豆畑での利用が望ましい。
 2. 最終中耕時にあらかじめライ麦種子を播き、そのあと中耕時に入れる。畦巾は60cm前後に広げ、播種量は12L播とし、肥料は4kg/10a(三要素)程度必要である。
 3. ライ麦鋤込当年は、タネバエの被害を考慮して豆類の作付は避けて、馬鈴薯、えん麦、とうもろこしなどの作付が望ましい。