【指導参考事項】
沖積水田に関する試験
道立中央農試農業機械部(桐山 優光)
(昭和41年〜43年)

・ 目 的
 移植後の利用に伴い、水田の耕耘及び代掻きの程度が作業に及ぼす影響は大きいので、移植様式に適応した方法を見出し、耕耘・代掻きの方法を確立する。

・ 試験方法
 1. 試験場所  夕張郡長沼町北長沼、健名惣次郎氏圃場
 2. 供試機種  トラクタ−、FIAT415-S、ロ−タリ−、コバシロ−タ−
 3. 試験区別
代掻程度 耕耘程度


・ 試験成果の概要
 1. 代掻程度
  代掻作業は、圃場の均平化、移植の難易性に大きく関与するが代掻を十分行っても生育及び収量に対する好結果は期待出来ない。
  代掻作業による土塊の崩壊は、大土塊(4cm以上)に対しては有効であるが、中土塊(1〜4cm)は破砕しずく、代掻後の土粒分布からみると大土塊の分布が代掻によって減少する。
 2. 水温及び地温
  耕耘細、代掻細では、日中温度は低いが夜間から朝にかけて上昇する。即ち、上昇は緩やかであるが温度は低下せず安定した傾向にある。
  耕耘粗、代掻粗では、日中高温で夜間は低下する傾向にある。
 3. 土壌のFhとNH3-N1
  細区程還元の程度は高く、NH3-Nの発生量は多い。粗区は細区と逆の傾向がある。
 4. 生育経過
  草丈は細区に伸長が見られ茎数の増加があり、熟期は若干遅れる。
  粗区は、草丈の伸長、茎数の増加は細区に劣るが、熟期が早まる。
 5. 収量結果
  代掻程度別の収量差は判然とせず、耕耘程度別に傾向が現れ、耕耘の細の場合、代掻程度は軽く行い、粗の状態では充分行う必要がある。子実収量比は中−中に対し代掻細−耕耘粗で118%、代掻粗−耕耘細で117%の増収が得られた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 1. 作業能率試験
機械名 ほ  場 手刈
時間
(分・秒)
機械刈時間 機械刈
全能率
(a)
ほ場内
能率
(a)
全面積
(a)
平刈
面積
(a)
機械刈
面積
(a)
実刈取 調整 合計
共立  1 9.11 0.74 9.37 28.20 67.24 7.95 75.59 6.61 5.68
     2 9.11 0.72 8.39 21.07 57.39 6.43 64.22 7.82 6.39
クボタ  1 9.09 0.14 8.95 6.26 52.20 3.06 55.26 9.69 8.82
     2 9.29 0.23 9.06 7.34 51.08 0.48 51.56 10.46 9.37
みのる 1 9.66 0.31 9.35 9.48 63.33 6.49 70.22 7.97 7.23
     2 9.09 0.14 8.95 5.28 60.01 6.01 66.02 8.13 7.63
三菱  1 8.05 0.64 7.41 35.41 33.37 54.41
(2.52)
88.18
(56.29)
5.04
(12.18)
3.90
(6.69)
ヰセキ 1 9.13 0.37 8.76 10.12 42.24 0 42.24 12.40 10.42
     2 9.39 0.39 9.00 11.56 42.28 0 42.28 12.72 10.36
  ※括弧内の数字は故障発生の時点で計算

 2. 作業精度試験
機械名 結束ひも 結束状況
大小 消費量
(g)
10a換算
消費量
(g)
10a消費
長さ
(g)
10m
重量
(g)
10a当
結束数
ミス数/
結束数
ミス割合
(%)
共立  1   1.675 2.001 627.3 31.9 1.210 35/1.013 3.45
     2   2.165 2.580 808.8   1.728 6/1.450 0.42
クボタ  1   1.460 1.631 606.3 26.9 858 14/768 1.82
     2   1.660 1.833 681.6   1.553 5/1.406 0.35
みのる 1   890 952 647.6 14.7 1.373 26/1.190 2.18
     2   900 1.006 684.5   1.360 7/1.217 0.58
三菱  1   1.650 3.227 744.8 29.9 1.175 29/791 3.67
ヰセキ 1   690 788 709.9 11.1 1.881 0/1.648 0
     2   600 667 600.9   952 0/857 0

・ 奨励又は指導参考上の注意
 1. 慣行の刈取及び結束の作業を機械化したものであるから、その後の地干し、架干し、脱穀等の作業は慣行にしたがう。
 2. 倒伏した稲を作業する場合、能率、精度ともに、著しく低下するので倒伏回避のあらゆる手段がこうぜらねばならない。