【指導参考事項】
Tetramisoleの牛肺虫症に対する駆虫効果に関する試験成績 滝川畜試 (昭和43〜) |
・ 目 的
牛肺虫症は近年放牧病の一つとして重要視されている寄生虫病で、すでに根釧および渡島管内で本州より導入の和牛に死を含む被害例があり、43年の実態調査ではほぼ全道的に漫潤していることが明らかとなった。
我が国においては未だ本病の確実な予防療法が確立されていないので現在国内で豚の肺虫及び消化管内線虫に対して高い駆虫効果が確認され既に市販のTetramisoieの本症に対する駆虫効果について検討を加え本剤を牛肺虫症の治療に応用せんとした。
・ 試験方法
ホルスタイン種の雄子牛を下記の如く区分し、dl-Tetramisoie12.5mg/kgを経口投与して、糞便内子虫検査、およびと殺剖検により残存虫数による駆虫効果、肺炎像、血液及び臨床症状、増体量などについて比較検討した。
区分 | 牛例数 | 感染子虫数/頭 | 投与(日) | 剖検(日) |
A | 3 | 8.000 | 7 | 42 |
B | 3 | 〃 | 14 | 〃 |
C | 3 | 〃 | 28 | 〃 |
D | 3 | 〃 | Control | 〃 |
・ 試験成果の概要
1. 残存虫体数の対照群に対する減少率はA・B及びC群が各々640、942、及び99.7%で感染2週后ではほぼ95%以上の駆虫効果を有することが認められた。
2. 糞便内子虫検査による子虫数は42日后に対照群189.5LPGを示し、これに対するABC各群の子虫減少率は56.8、93.7及び100%であった。
3. 肺炎病巣は対照群で最も高度であり、次いでA・C及びB群の順であった。肺重量の体重比はD.1.47、A.1.32、C.0.99及びB.0.97であった。
4. 血液検査では全例に好酸球数の増加が認められたが、A群では初期の増加が明らかでなかった。
5. 何れも咳嗽、体温、呼吸数の増加などの肺炎症状を呈したが、B群は比較的軽度であり、C群では投薬后症状が軽快した。
6. 増体量は対照群28.3kgに対しAB及びC群では各々35.7、41.3及び34.7kgであり、何れも駆虫群がすぐれていた。
・ 主要成果の具体的デ−タ−
Tetramisole12.5mg/kg oral Anthelnintic Activity
Dictyocaulns Vcviparus
試験群牛 NO. |
残存虫体数 | 群平均 | 対象群に対す る群減少率 (%) |
投薬 (日) |
||||
♂ | ♀ | その他 | 計 | |||||
A | 1 | 27 | 64 | 34 | 125 | 181.7 | 64.0 | 7 |
2 | 29 | 74 | 14 | 117 | ||||
3 | 111 | 167 | 25 | 303 | ||||
B | 4 | 1 | 5 | 0 | 6 | 29.3 | 94.2 | 14 |
5 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||||
6 | 26 | 41 | 15 | 82 | ||||
C | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1.3 | 99.7 | 28 |
8 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||||
9 | 0 | 0 | 4 | 4 | ||||
D | 10 | 209 | 231 | 44 | 484 | 504.7 | ||
11 | 366 | 429 | 127 | 922 | ||||
12 | 34 | 45 | 29 | 108 |
・ 普及指導上の注意事項
1. 本試験に先立って行った毒性試験において観察された副作用は、流涎排糞、排尿の抗進、糞奮、胃運動の停止及び悸亢進などであるが、これらの症状は何れも一過性であり、常用量の2倍量である25mg/kgでは殆ど発現しない、また体重の少ないものではこれら症状が大きい傾向がある。 本剤の臨床的に応用し得る限界は、心肺に及ぼす影響を考慮して15〜20mg/kgに止め、特に若令牛及び高度の肺炎牛には糞用量の厳守と事前の臨床検査を充分に行う必要がある。
2. 未成熟子虫に対する効果が12.5mg/kgでは確実でないので20〜30日間隔での2回投与が望ましい。
3. 本剤は消化管内線虫類に対しても卓効を有するので、消化管内線虫類との合併症のあるものは特に効果的である。
4. 牛肺虫に対してはMethiradine製剤についても少ない実験例ではあるが成虫に対して高い駆虫効果を示している。