【指導参考事項】
乳牛の適正放牧時間に関する試験
北海道立根釧農試 酪農科
(昭和43年)

・ 目 的
 草地酪農地帯においては多頭化が急激に進展しているが、頭数の増加に従って経営面積を増大させっることは困難である。従って草地の集約的利用により多頭化をはかるために、時間制限放牧における草地の利用率、産乳量、体重の変化などについて検討した。

・ 試験方法
 試験Ⅰ
  搾乳牛9頭を3群に分け、3時間、4時間、5時間の時間制限放牧区を設け、1期21日間のラテン方格法で行い、草地の利用率、産乳量、体重の変化、排糞数、採食速度などを調査した。
 試験Ⅱ
  搾乳牛3頭を用い、放牧時間を4時間とし、これを4時間連続放牧と、午前、午後2時間ずつ2回の放牧で、採食速度、採食回数、排糞数などを比較した。

・ 試験成果の概要
 試験Ⅰ
  ① 面積利用率は第1期では3時間放牧区が低く、5時間放牧区が高かったが、第3期では反対に、3時間放牧区が高く、5時間放牧が低かった。これは第1期では排糞の累積数は少ないが、第3期になると排糞の累積数が多くなるために5時間放牧区の利用率が低下すると思われる。
  ② 乳量は3時間、4時間、5時間放牧の間では糞がなかった。
  ③ 体重は3時間放牧でわずか減少し、5時間放牧で多い増体を示した。
  ④ 採食速度は放牧後1時間が高く、全体の約半分を採食していた。
 試験Ⅱ
  午前、午後2回に分けて放牧したが、排糞数は連続放牧より少なく、また、採食速度、採食回数は後半において連続放牧より高かった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 面積利用率および排糞数(試験Ⅰ)
期 別 面積利用率(%) 排糞数(ヶ)

(5.30〜6.12)
3時間放牧区 66.7 13.6
4   〃 74.1 19.9
5   〃 75.4 26.7

(6.13〜7.3)
3時間放牧区 63.7 16.6
4   〃 67.5 24.1
5   〃 65.5 32.7

(7.4〜7.24)
3時間放牧区 67.3 14.0
4   〃 64.7 22.4
5   〃 63.4 29.9

 産乳量および体重の増減(試験Ⅰ)  (kg)
  3時間放牧 4時間放牧 5時間放牧
産乳量 17.3(15.3) 17.7(15.6) 17.5(15.3)
体 重 -3.1 1.4 11.7

 採食速度(試験Ⅰ)  kg( )は%
   放牧後時間
1時間 2時間 3時間 4時間 5時間
3時間放牧 24.6(52.3) 12.1(25.7) 10.3(22.0)    
4  〃 21.8(48.4) 11.3(25.2) 6.6(14.3) 5.6(12.1)  
5  〃 21.6(45.9) 9.9(20.8) 7.5(15.6) 4.7(9.9) 3.7(7.8)

 排糞数(試験Ⅱ)
   1時間目 2時間目 3時間目 4時間目
連続放牧 3 8 10 5 26
2回放牧 3 8 3 4 18

 採食速度(試験Ⅱ)  (kg)
  1時間目 2時間目 3時間目 4時間目
連続放牧 25.9 11.9 9.8 5.4
2回放牧 20.6 11.9 12.2 8.4

・ 普及指導上の注意事項
 ① 良好な放牧地を用いる。
 ② 濃厚飼料は低蛋白・高エネルギ−のものを使用し、乾草を給与する。