【指導参考事項】
トラクタ−の整備・修理維持費に関する調査研究
北農試畑作部 機械化経営研究室
(昭和41年〜43年)

・ 目 的
 わが国では大数調査によるトラクタ−の整備・修理維持費の資料がまいことから、トラクタ−の作業原価の算定に当たっては諸外国の例に準拠している。
 修理費は本来、故障の発生程度と機械部品価格および修理工賃に規定されるわけで、わが国の実態に即応した標準値の策定が望まれている。そこで修理費の事例を大量に収集し、これによって適正な標準値の策定と併せて修理費負担を軽減するための方策を明らかにする。

・ 試験方法
 早くから普及し、密度の高い十勝地方に利用されているトラクタ−約2.000台を対象に照会調査を実施し、1.096台を回収した。これと併行して主要修理工場からの資料収集および20台を抽出して聞き取り調査を実施し、3者を比較検討し課題に接近した。

・ 試験成果の概要
 1) 修理維持費は①稼働によって生ずる摩耗部品の交換、②稼働と関係なく生ずる化学的腐朽部品の交換とその防止対策、③運行の保安上必要な車検、④突発事故による故障、などによって生ずる。
 2) 修理費は事例によって偏差が大きく、個別性が強い。それは、主として④による修理費によって生ずる。しかし、使用年数の経過に伴い①と②による修理費が増加するから偏差は少なくなる。
 3) 累計修理費と累計利用時間および使用経過年数との間には密接な関係があり、一定の耐用年限内の年平均修理費(y)と年利用時間(x9との関係はy=ax+bの関係式で把えられる。
   30〜50PSホイ−ル型トラクタ−の個人利用の場合に耐用年数8年とすれば
      y=41x+7.900
   これと各類型別年間修理費の関係式から耐用年数10年とした場合の推定式は
      y=51x+8.800
   である。これにエレメント、その他小部品代7.000円を加算し、トラクタ−の新調価格(1.500.000円)に対する整備・修理維持費年率(Y)に置き換えると、
   耐用年数8年の場合(ただしx=100時間)
      Y(%)=0.27x+0.99
   耐用年数10年の場合
      Y(%)=0.34x+1.05
なお、共同利用の年平均修理費は個人利用に比して多く、上式の1.8倍とするとこが適正である。
 4) 図1)、2)で明らかなように共同利用の修理費は年利用時間の同じ類型間の比較でも累増傾向が強い。これは利用農家の交替時の点検確認、および日常の点検整備の負適正によって生ずる事故的な故障の多発にあり、この点の体制改善と強化が急務である。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 年間利用時間区分別利用時間と修理維持費
 1) 個人利用  2) 共同利用









・ 普及指導上の注意事項
 この研究は畑作経営に利用された30〜50PSホイ−ル型トラクタ−の修理維持費の実績に基づいたものであり、収集事例の制約から修理維持費年率の適用は年利用300〜1.000時間の20PS以上のトラクタ−の限定される。