【指導参考事項】
水稲紙筒機械移植栽培のための根がらみ防止育苗試験
(昭和43年〜44年)
道立中央農業試験場稲作部育種科

・ 目 的
 紙筒育苗では、根の隣接ポットえの越鏡、下紙の附着等で移植時の苗の分離を悪くしており、これが機械化精度を低下させる最大の原因であることから、この原因と対策について究明する。

・ 試験方法
 1. 播種染度ろ覆土の厚さと上部根がらみ試験(S43)
      覆土の厚さ(紙筒上縁より上にのせる厚さ−0mm、2mm、5mm、10mm)
      播種の深さ(紙筒上縁より播種位置までの深さ−0.3、6.9、12、15)
 2. 根がらみ防止剤試験(S43)
      PCP液床スプレ−(PCP1m2当30g) PCPクレ−床土散布(1m2当30g)
      PB吸着砂床土散布 同左+サラ激区 PB吸着砂箱散布
 3. PCPの濃度と根がらみ及び生育影響について(S44)
      PCPm2当5g・10g・15g・30g・50液
 4. 根がらみ防止のための下根抑制と苗賃について(S44)
      移植期  5月17日 5月24日     5月31日
      育苗日数   30日   30日 37日   30日 44日

・ 試験成果の概要
 1. 上部根がらみの発生は覆土量と関係があり、覆土0mmでは全く発生しない。
 2. 覆土量2mmでは根がらみが発生するが、この場合播種位置が深いほど発生が少ない。
 3. 播種位置が深いと苗の生育が劣る。
 4. 従って播種位置5mm程度とし、必ず紙筒縁か基盤目状に現れるように覆土することが良い。
 5. 下部根がらみ防止のためのPCP使用は極めて効果が高い。
 6. PCP使用量は1m2当り5gでも効果がある。
 7. PCP使用量が多くなるほど分けつが抑制されるから、10g以下が有効である。
 8. PCP区と下紙使用区、無処理移植時下根断根区との間には苗賃に差がなかった。
 9. PCP5g/1m2、下紙使用区ともに育苗日数44日では抑根効果はおちない。
 10. 移植後の苗腐敗率は慣行苗>無処理移植時断根苗>PCP使用苗>下紙使用苗の順序であった。
 11. 初期分けつ、穂数等は紙筒処置間に差がない。
 12. 減摩収量は、無処理移植時断根区<PCP処理≦下紙使用区であって慣行苗より多収

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 PCP施用量と生育
試験区別 苗   質 茎   数 穂数 収量
比率
葉数 風乾量 6月26日 7月16日
標準下紙区 3.9 3.6 5.8 27.5 27.4 100
PCP 5g 4.1 4.0 5.7 27.0 28.3 99
 〃 10g 4.0 4.3 5.7 27.0 28.7 96
 〃 15g 4.0 4.2 5.4 24.0 27.8 94
 〃 20g 4.0 4.2 5.3 25.7 27.0 93
 〃 30g 4.0 4.2 5.0 23.8 27.0 97

移植期 苗 令 処理区別 出穂期 玄米重(kg) 千粒重(g) 未熟粒(%)
追肥区 無追肥区 追肥区 無追肥区 追肥区 無追肥区 追肥区 無追肥区
5月24日 30日苗 PCP使用区 8.11 8.12 460 462 20.1 20.3 32.0 36.8
無処理区  .10  .10 458 447 20.0 20.2 36.7 33.1
下紙使用区  .9  .10 438 441 1 20.1 35.6 31.0
慣行苗区  .14 401 17.7 37.9
37日苗 PCP使用区 8.11 8.11 428 436 20.1 20.5 38.7 33.0
無処理区  .11  .10 427 432 20.1 20.1 32.6 35.0
下紙使用区  .11  .10 444 471 20.4 20.2 38.8 29.9
5月31日 30日苗 PCP使用区 8 .9 8.10 439 460 20.4 20.4 30.9 33.4
無処理区  .11  .7 414 439 20.2 20.2 32.7 38.3
下紙使用区  .11  .12 442 457 20.4 20.5 29.5 33.0
慣行苗区  .12 457 20.1 33.3
44日苗 PCP使用区 8 .9 8 .9 462 449 20.4 19.9 34.7 37.5
無処理区  .8  .10 443 448 20.0 20.3 34.8 35.5
下紙使用区  .10  .9 440 456 20.0 20.4 36.0 43.2

・ 普及指導上の注意事項
 1. PCPを紙筒置床に最布する場合使用量5〜10g(1m2当)うぃ1Lの水に溶かし均一散水。
 2. PCP施用後長日間経過させないようにして紙筒を設置する。
 3. 下紙使用の場合は乾き易いから潅水回数を多くする。