【指導参考事項】
水稲の稚苗移植栽培に関する試験
−(3) 育苗箱の立枯病防止
北海道農試作1部稲2研
(昭和44年度成績)

・ 目 的
 稚苗育成時において立枯病菌による部分枯死、生育不整、根の発育阻害が起こり、そのために苗紐強度が低下して機械移植が全く不能の場合があるので、簡易にしかも有効な殺菌法を確立するために実施した。

・ 試験研究年次および経過の概要
 (昭和44〜45)
  有効薬種の検索と処理法を検討するため予備的に試験を行った結果、セレサン、オ−ソサイドの種子粉衣、ペントロンの土壌混和、シミルトンの覆土後処理などは薬害を起こし、苗紐強度が低下する。しかしクロ−ルピクルリン、デクソン、タチガレンなどは苗の生育に対する障害がなく、立枯菌防除の効果があるので実用上支障がないと判断した。

・ 試験方法
 1)種子予借  比重選、ウスブルン消毒
 2)薬剤名タチガレン30%液剤
 3)処理方法  覆土後500倍、発芽期250、500、1000倍  覆土後+発芽期各500倍、各処理とも5L/m2散布

・ 試験研究の結果
 1)土壌菌が稚苗の基部、または籾に着生すると、組織の崩壊と籾内養分の消耗によって生育が次第に弱まり、伸長が緩慢になる。著しい場合には本葉1葉期頃より枯死個体の発生が多くなる。
 2)薬剤散布の効果を成苗歩合、発育停止歩合、生育の整否などで判断すると、
   ①発芽期処理は着菌個体数や発芽停止個体が多く、成苗歩合が低下し、処理効果がみられなかったが、
   ②覆土後処理は成苗歩合が高く、生育は整一で、しかも外観上の着菌個体数が少ないことから、処理効果を認めることが出来、濃度について今後さらに検討を要するが、500倍程度でも十分効果が期待出来よう。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 タチガレン処理による効果
処理法 草丈
(cm)
葉数
(枚)
100個体当
乾物重
(g)
成苗
歩合
(%)
不良苗
歩合
(%)
不発芽+
発育停止
歩合
(%)
着菌
個体数
(%)
無処理 7.2 2.1 0.73 47 11 42 76
覆土後 500倍 8.2 2.1 0.81 65 13 22 42
発芽期 250 7.6 2.2 0.80 42 10 48 73
500 8.0 2.2 0.78 43 8 49 67
1000 7.3 2.2 0.76 44 10 46 64
覆土後

発芽期
各500 7.7 2.1 0.80 64 13 23 38

・ 研究上の見通しとのこされた問題点
 育苗箱の立枯病防止は稚苗栽培を安定化する上に重要な意義をもっているが、本試験においては病菌の種類、動態などを確認することが出来なく、その内容の詳細な解析が不能であった。今後この点の解明が急がれるが特に稚苗用に使用する土壌は従来の苗代培養土と異なり、様々の種類のものを用うることになるので、これらのものについての菌の種類と動態ならびに殺菌法を一層明確にしておく必要があろう。

・ 次年度継続の有無
 本試験は秋季の冷涼な時期に実施したため、一般に成苗歩合が低く、正常な生育が望めない条件で実施した。従って春期に再度検討し、効果の最も高い処理方法を確立する方針である。