【指導参考事項】
水稲稚苗育成時における立枯病防止に関する試験成績
中央農業試験場稲作部

・ 目 的
 稚苗育成時において苗立枯病菌による部分枯死、生育不整、根の発育阻害が起こり、そのために苗ひも強度が低下して機械移植が全く不能の場合があるので、簡易にしかも有効な防除法を確立するためいに実施した。

・ 試験方法
 (1)中央農試
   病原菌の分離:罹病菌組織および土壌静置法、希釈法などで分離した
   接種試験:シ−ドリンクケ−スなどを用い寒天接着した菌を土壌に混和しその後播種して発病状況などを調査した。
   防除試験:機械移植用の育苗枠(箱)或いはシ−ドリンクケ−スなどに土壌と薬剤を混和、或いは播種後薬剤を散布して、生育状況を調査した。
   罹病調査の方法:一定量の菌を抜取り下記基準で調査した。
    A 完全枯死
    B 最上葉1枚を残し他は罹病せるもの(2/3罹病)
    C 上葉2枚を残し他は罹病せるもの(1/3罹病)
    D ほぼ健全と思われるもの
A+B+C (A×100)+(B×60)+(C×30)
     罹病率
× 100.罹病程度
× 100
調査苗数 調査苗数×100


・ 試験成果の概要
 異常苗からはFusarium菌の分離頻度が高く、また分離されたFusarium菌の接種により発病する例が多いことから本菌による立枯病と推定した。しかし、菌の存在が必ずしも発病と結びつくとは限らず低温とかPHなどの現境条件が発病に大きく関与しているものと考えられるので、育苗条件の改善が防除上極めて重要であろう。
 本菌に有効と思われる薬剤の中から、効果の点や、薬害、使用の簡便さなどから、ヒドロキシイソサゾ−ル液剤(登録申請中)が有効と考えられた。使用時期、濃度などについては、なお検討の余地を残すが、一応播種覆土後ヒドロキシイソゾ−ル液剤の500〜1000倍液のm2り3〜5Lの散布が適当と考えられる。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 罹病組織からの菌の分離
  分離切片数 分離菌数
Fusarium Fusarium+細菌 Rhigortoia+細菌 その他
1回 25 11 (44) 6 (24) 2 (8) 6 (24)
2回 25 8 (32) 11 (44) 2 (8) 4 (16)

 土壌殺菌および接種試験
区    別 発芽率
(%)
罹 病 草丈
(cm)
苗率
(%)
程度
罹病土 無消毒 91.3 24.8 19.6 8.5
  〃   蒸気消毒 98.0 0 0 11.5
苗床土 無消毒 95.3 5.1 1.5 10.7
  〃   蒸気消毒 95.3 0 0 13.4
苗床土蒸気消毒 菌接種 98.0 11.5 4.9 13.6

 防除試験
区    別
(タチガレン液剤)
苗代土壌 水田土壌
罹病苗率
(%)
罹病程度
罹病苗率
(%)
罹病程度
無処理 20.7 12.0 100 79.2
覆土直後 500倍 5L散布 3.8 1.2 1.2 1.3
発芽期   250倍 5L 〃 6.2 2.8 8.8 4.8
  〃    500倍 5L 〃 7.2 3.8 2.5 2.0
  〃    500倍 3L 〃 8.2 4.0 8.0 5.0
  〃   1000倍 5L 〃 4.0 2.2 9.7 3.3
覆土直後 発芽期
        500倍 5L 〃
1.1 0.4 1.1 4.0

・ 注意事項
 1)使用土壌の水分含量によって、散布液量は加減しなければならないので、土壌の乾燥の場合はm2当り1000倍液5L、湿潤な場合は500倍を3L位とするのが適当であろう。
 2)必要に応じ、苗ひも強度を補強する