【指導参考事項】
地中暖房機の加温効果に関する試験成績 北農試作物第2部園芸作物第2研究室 (昭和44年) |
・ 目 的
現在、各種の温風暖房機とともに、地中暖房機が市販され、一部農家に導入されつつあるが、本試験では昨年の温風暖房機の調査に引き継ぎ、地中暖房機を育苗床、並びに栽培ハウスに用いた時の加温効果を調査するとともに、温風暖房機と併用したときの促成トマトの生育に対する効果を検討した。
・ 試験方法
地中暖房機(フジカ地中暖房機POB-1628P型)を用い、促成トマトを対象とし、育苗床では内径16mm塩ビ管を20cm間隔に配管、栽培ハウスでは内径25mm塩ビ管をトマト1条に1条配管。いずれも15cmの深さに埋設加温効果を調査した。栽培ハウスでは温風暖房機(ハウスカオンキHK300型)を使用し、温風暖房機のみの区と温風暖房機と地中暖房機併用区との比較を行った。
・ 試験成績
(1)育苗床の結果
3月19日から4月12日までの育苗中の温度経過は第1図のとおりで同時期の26.4m2当り燃料消費は110L、1日平均5Lで、ハウス内の育苗床内夜温は外気温とともに変動するが地中暖房機だけで常に外気温より約10℃高く保たれたが外気温が低いため8℃以下に下がることが多く、こもなど保温資材の必要性がみとめられた。苗の生育は順調であった。
(2)栽培ハウスの結果
1)暖房面積1a、配管延長100mで、配管の出口ともどり口の温度差はパイプ近接部で3〜4℃、パイプより10cm離れた地温で2〜3℃であった。
2)ハウス内気温に対しては地中加温のみでの加温効果は小さく、外気温が0℃以下のときはハウス内トンネル又は温風暖房機との併用を必要とする。
3)温湯温度45℃に設定し25mm塩ビ管の場合左右の加温有効範囲はパイプ周辺から20cm以内で25cm以上では加温効果はみとめられなかった。
4)4月11日〜5月29日の期間の燃料消費量は320L(灯油)1日平均6.4Lであった。(加温面積1a)、一方併用した温風暖房機の燃料消費量は770L(A重油)であった(面積5a)。なお、設定温度は地中15℃、ハウス内8℃である。
5)温風暖房のみの区と地中暖房併用区とのトマトの比較では開花期、収穫始期、上物率、1果重、早期収量などすべて有意差みとめられず、総収量のみ併用区で7%の増収がみとめられた。これは地中加温でもハウス内地温が10℃以上に維持されたことによるものと考えられる。
・ 主要成果の具体的デ−タ−
第1表 トマト生育収量調査結果
形 質 | 温風暖房のみ区 | 地中暖房併用地 | L.S.D |
第1花房開花 | 4月 25.0日 | 4月 24.7日 | n. s. |
第2花房開花 | 5月 4.2日 | 5月 4.6日 | n. s. |
第3花房開花 | 5月 15.8日 | 5月 15.7日 | n. s. |
収穫始め期 | 7月 1.9日 | 7月 2.1日 | n. s. |
早期収量* | 242.1kg | 246.8kg | n. s. |
全収量* | 542.8kg | 584.7kg | 25.1kg |
上物率 | 56.4% | 54.3% | n. s. |
1果重 | 145.4g | 146.6g | n. s. |
・ 普及指導上の注意事項
*26品種416株の合計 他はすべて平均値。