【普及奨励事項】
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りんご粗皮病に対する土壌改良資材の効果 道立中央農業試験場 化学部土壌改良科・園芸部 (昭和42年〜44年) |
・ 目 的
本道で最も有望なデリシャス系の品種は粗皮病の発生が激しく、増殖不振、生産の不安定要因となている。そこでりんご園土壌の実態を調査するとともに、新植時における土壌改良資材の施肥効果とりんご粗皮病の関係を検討する。
・ 試験方法
(1)りんご園土壌の実態調査
(2)試験地 道立中央農試園芸部 江部乙りんご試験地圃場
供試土壌 標高70m内外の台地の緩傾斜地、鉱質酸性土壌(重粘度)排水不良
供試作物 スタ−キングデリシャス(ミツバカイドウ砧) 2年生苗木
処理区別 1)全層苦土石灰、熔燐施用 2)全層苦土石灰施用
3)表層苦土石灰施用 4)無処理
・ 試験成果の概要
1)作土の養分含量は変異が大きい。これは土壌管理状況の来歴と土壌自体の性状によることが推定されるが、一般に土壌管理良好な園は養分含量高く、さもないところはPH、置換性塩基、有効態熔燐が低い。
2)下層土は大部分の園がPH、置換性塩基が低く、有効態熔燐に欠乏している。
3)粗皮発生園土壌は健全園に比して還元性マンガンが一般に高い含量を示す。またPHならびに置換性石灰含量との関係がみられ、PH、および置換性石灰含量が低い場合は還元性マンガン含量が低くても粗皮病の発生がみられる。
4)粗皮発生樹は健全樹に比して葉中のマンガン含量が異常に高く、マンガン、鉄比が高く、また石灰、マンガン比が低い傾向がある。
5)改良資材の施用により樹勢は著しく増大した。その程度は全層苦土石灰、熔燐施用が最も優り、ついで全層苦土石灰施用がよく、表層苦土石灰施用の効果はこれらに比して低かった。
6)解体調査の結果は地上部、地下部とも樹勢と同様の傾向を示した。地下部では特に全層苦土石灰、熔燐施用が優勢であり、細根の分布が他のものに比して水平、垂直的分布ともに著しく旺盛であった。
7)苦土欠病状ならびに粗皮症状は初年目から無処理区に現れ、特に粗皮症状は2年目以降激甚となり、枯死に至るものが出た。2年目以降表層施用区に軽度の苦土欠粗皮症状が出た。
8)改良資材のの施用によって葉中の石灰ならびに苦土含有率は明らかに増加し、マンガンは著しく減少した。また樹皮も同様の傾向を示した。その程度は樹勢の傾向と全く同じであった。
・ 主要成果の具体的デ−タ−
りんご園土壌の養分含量(100地点)
| PH (H2O) |
置換性塩基me/100g | 有効態 P2O5 mg/100g |
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| CaO | MgO | K2O | |||
| 作土 (平均) |
7.2〜4.6 | 26〜1 (8.0) |
4.0〜0.2 (1.6) |
4.8〜0.1 (0.7) |
88〜tr (15.1) |
| 心土 (平均) |
6.7〜4.6 | 15〜0.5 (3.3) |
3.5〜0.2 (0.8) |
4.9〜0.1 (0.3) |
33〜tr (1.3) |
| 項 目 | 区別/ 年度 |
1区 | 2区 | 3区 | 4区 |
| 樹高 (cm) |
初年目 | 206 | 196 | 195 | 195 |
| 2 〃 | 259 | 256 | 237 | 240 | |
| 3 〃 | 310 | 310 | 300 | 230 | |
| 樹冠容積 (m2) |
3年目 | 20.9 | 20.5 | 16.9 | 7.4 |
| 苦土欠症状 | 初年目 | - | - | - | + |
| 2 〃 | - | - | ± | ++ | |
| 3 〃 | - | - | ± | ++ | |
| 粗皮症状 | 初年目 | - | - | - | + |
| 2 〃 | - | - | + | +++ | |
| 3 〃 | - | - | + | +++ |
| 項目/ 区別 |
地上部(生重 g) | 地下部(生重 g) 樹皮の養分含有量 | ||||||||
| 1年枝 | 2年枝 | 3年枝 | 総重量 | 細根 | 中根 | 総重量 | CaO% | MgO% | Mn PPM | |
| 1 区 | 1.605 | 2.435 | 2.185 | 10.140 | 1.308 | 868 | 3.669 | 2.64 | 0.30 | 340 |
| 2 区 | 1.623 | 1.997 | 1.915 | 8.730 | 847 | 692 | 2.819 | 3.07 | 0.26 | 890 |
| 3 区 | 1.135 | 1.280 | 975 | 6.170 | 858 | 541 | 2.303 | 2.79 | 0.23 | 562 |
| 4 区 | 615 | 350 | 365 | 3.020 | 436 | 98 | 850 | 1.79 | 0.18 | 720 |
・ 普及指導上の注意事項
1)適用範囲は芦別地域の鉱質酸性土壌とし、新植造園地ならびに老令更新園を対象としたい。
2)植穴に対する全層施用は排水不良地では暗渠排水の施工が前提条件である。
3)傾斜地で下層堅密なところは土壌水が地中で斜面上部から下方へ向かって移動すると考えられ、これが植穴に停滞するこそれが多いから、この面の対策を附帯することが必要と思われる。
4)江部乙、深川地帯における実態調査および、ほ場試験結果から、粗皮病防止には植穴土壌のPHを6.0〜6.5程度とし、苦土含量100g/40mg以上、熔燐(P2O5)100g/10mg以上にすることが有効である植穴土壌0.54m2(直径120cm、深さ50cm9には苦土石灰8.7kg、熔燐2.2kg又は炭酸石灰8.7kg、熔燐4.4kg施用する。