【指導参考事項】
昭和44年度試験成績概要(4)
田植機の利用に関する試験
−作業能率について−
北海道農業試験場農業物理部機械化第2研究室

・ 研究目的
 作業精度からみた田植機の作業速度の許客限界を求め、その作業速度で移植作業を行い、慣行の手植作業と比較して、利用上の参考に資す。

・ 試験年次経過概要
 昭和43年度〜  43年度は、成苗田植機の播種、苗とりおよび作業能率を調査した。

・ 試験方法
 1. 田植機の作業速度:供試条件を第1表〜第3表に示す。田植機はB式(マット苗用、フロ−ト式)作業速度は0.19〜0.62m/s
 2. 播種作業時間:稚苗と成苗の比較、稚苗(紐苗、マット苗)は床土詰め〜播種〜灌水まで、成苗は整地〜播種〜灌水まで、稚苗の播種機を第4表に示す。

 第1表 期日、場所、供試圃場条件
期  日 5月26日〜30日
場  所 岩見沢市幌向
土  性 埴  土
耕耘法回数 ロ−タリ2回(中型トラクタ)
耕  深 13〜15cm
代掻き前の湛水日数 3日
代掻き法 回数 中型トラクタ 2回
均平法 回数 均平板(テイラ) 1回
移植前日数 2日

 第2表 供試田植機
型 式 A D
使用苗 土付紐苗 根洗い苗
植付方法 クランク式強制 プランタ方式

 第3表 供試苗
  育苗日数(日) 草丈(cm) 葉数(L)
B機用苗 20 11.3 2.1
成  苗 35 13.7 3.7

 第4表 播種機
型 式 AC機用 B機用
ホッパ容量(L) 4 7.7
全    長(cm) 125 104
全    幅(m) 45 36.6
全    高(m) 82 74.5
播種量の調節法 開閉式 開閉式

 3. 移植作業時間:条件は1と同じ、圃場面積は機械植区21ア−ル、慣行手植区14ア−ル

・ 試験研究の結果
 1. 田植機の作業速度については0.19〜0.62m/sの範囲の作業精度を検討したが、作業速度の差異はほとんど認められなかった。なお0.62m/s以上の作業速度ではハンドル操縦と保持が困難のように見受けられた。
 2. 播種作業に要した労働時間は紐苗で10ア−ル当り延134.1分、マット苗で51分、成苗の散播で41.7分となり、紐苗の播種準備および播種作業が最も多くの時間を要し、マット苗と成苗とは約10分の差異があった。(第5表)
 3. 移植作業に要した労働時間は、慣行手植作業で10ア−ル当り延562.7分、マット苗の機械移植作業で71.6分、枕地手植作業時間を含めて10ア−ル当延118.1分となり、慣行手植作業の約5/1で終了し、大幅に省力化されることが明らかとなった。(第6〜8表)
 4. 欠株、補植作業に要した労働時間は、手植が10ア−ル当り延126.9分、機械植が278.5分となり機械植が約2倍となっている。補植作業時間を少なくするためには田植機の作業性能を向上するとともに、最適作業条件を維持することが重要である。(第9表)
 5. 以上の作業について労働時間の合計をみると第10表のようになり、機械移植で10ア−ル当り延447.5分、手植えで826.4分となり機械移植が手植えの約2/1程度であることが判った。
 
 第5表 播種作業時間
紐苗(A・C機用) マット苗(B機用) 成苗(散播)
10a当りの
作業時間
組人員 10a当り
延労働時間
10a当りの
作業時間
組人員 10a当り
延労働時間
10a当りの
作業時間
組人員 10a当り
延労働時間
44.7分 3人 134.1分 17.0分 3人 51分 13.9分 3人 41.7分

 第6表 田植機作業時間
  作業時間 組作業人員 延労働時間
作業(直進) 35.2分 1.5人 49.8分
施  回 3.0 (1人オペレ−タ1人枕地手植兼務) 4.5
苗補給 2.6 3.9
停  止 8.9 13.4
合  計 47.7 71.6
  注) 10a当り換算機械移植面積割合 94.8%

 第7表 枕地手植作業時間
  作業時間 紐作業人員 延労働時間
枕地均し 6.9分 1.5人(1人は苗補給を兼ねる) 6.9分
枕地手植 26.4 39.6
合  計 33.3 46.5
  注) 10a当り換算 枕地手植面積割合 5.2%

 第8表 慣行手植作業時間
   10a当りの作業時間 組作業人員 10a当りの延労働時間
田面型付け 8.0 1 8.0
手植移植 184.9 3 554.7
合  計 192.9   562.7

 第9表 補植作業時間
  10a当りの作業時間 組作業人員 10a当りの延労働時間
機械移植区 92.8分 3人 278.4分
手植区 42.3 3人 126.9

 第10表 補植まで含めた全移植延労働時間
  機械植 手植
播種作業時間 51分 41.7分
苗取り  〃 95.1
移植   〃 118.1 562.7
補植   〃 278.4 126.9
合    計 447.5 826.4

・ 次年度継続の有無
 田植機の負担面積の拡大を図るために、スピ−ドアップの問題を取り上げる。
  1. 0.6〜1.0m/sにアップしたときの作業精度、植付けおよび走行機構の追従性
  2. オペレ−タの操縦性(現地)
  3. 稚苗用田植機の成苗に対する汎用性