【指導参考事項】
昭和44年度試験成績概要(5)
田植機の利用に関する試験
−無代掻き移植作業法について−
北海道農業試験場農業物理部機械化第2研究室

・ 研究目的
 代掻き作業の省力化を図るために、無代掻き移植作業法について検討する。
 本年度は無代掻き湛水移植と乾田移植について、既存の代掻き湛水移植用田植機を使用した場合の植付け精度を中心に検討した。

年次  開始 昭和44年度〜 (新規)

・ 試験方法
 1) 無代掻き湛水植(成苗・稚苗):試験方法は第1表から第3表に示す。
 2) 乾田移植(稚苗):鎮圧処理を除いたほかは上記方法と同じ。
  調査項目:植付け精度、車輪の滑り率

 第1表 期日、場所、供試圃場条件
期  日 7月15日〜18日
場  所 場内大型水田
土  性 埴壌土
耕耘法 回数 ロ−タベ−タ1回(大型トラクタ)
耕  深 15cm
鎮圧 回数 ケンブリッチロ−ラ(0・1・2)
  カルチパッカ(0・1・2)
湛水〜移植の日数 2日

 第2表 供試田植機
型 式 A D
使用苗 土付紐苗 根洗い苗
植付方法 クランク式強制 プランタ方式

 第3表 供試苗
  育苗日数(日) 草丈(cm) 葉数(L)
A 36 9.5 2.4
D 43 30.0 4.4


・ 試験研究の結果
 (1) 無代掻き湛水移植:
  試験結果を第4表に示した。植付け精度についてみると、A機、D機ともに、欠株、埋没株は少ない。鎮圧処理回数が0回(無処理)から2回に増すと、A機では倒伏苗が増加したが、D機では反対に減少した。しかし両機種とも、植付け精度は一般的に良好であった。走行性についてみると、A機では表層滑走のため、鎮圧処理の効果が大で、滑り率は減少し、走行性はよくなる。D機では耕深が深すぎたのと、耕盤走行のため、鎮圧処理と走行性の関係は明らかでなかった。なお、既存の田植機を使用した場合、表層の砕土条件と鎮圧操作をさらに検討すれば無代掻き湛水移植法は可能であると思われた。
 (2) 乾田移植:
   ロ−タベ−タで耕起砕土を行った圃場において、A機による乾田移植を実施したときの作業性能を第5表に示した。表にみるごとく、既存の田植機では、植付け精度は作業性能は比較的良好であるが、走行性(とくに滑りが大)に問題が多い。しかし、搭載エンジンの馬力アップと走行機構の改善によって現在の植付け機構でも乾田移植が可能であると思われた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 第4表 無代掻き湛水移植の結果
機  種 A機(稚苗、フロ−ト) D機(成苗、テイラ−アタッチ)
鎮圧処理回数 ケンブ
リッジ
ケンブ
リッジ
ケンブ
リッジ
カルチ
パッカ
カルチ
パッカ
カルチ
パッカ
ロ−ラ
0回
ロ−ラ
1回
ロ−ラ
2回
ロ−ラ
0回
ロ−ラ
1回
ロ−ラ
2回
土壌物理性 (kg) 4.2 5.9 5.9 5.5 6.2 6.4
膨土量 (cm) 11.6 9.4 6.9
土壌物理性の変動(CV) 22 19 33 9 9 25
作業速度 (m/s) 0.40 0.42 0.44 0.18 0.18 0.22
田植機の滑り率 (%) 25 15 9 36 41 26



姿

(%)
直立株 84 94 85 0 19 13
傾斜株 16 4 4 70 58 70
倒伏株 0 2 9 25 21 13
埋没株 0 0 0 0 0 2
欠 株 0 0 2 5 2 2
株    間 (cm) 11.1 12.2 13.8 11.5 10.0 11.5
植付け深さ (cm) 1.9 1.6 2.4 3.5 4.3 4.7
株間の変動(CV) 16 22 21 28 33 26
植付け深さの変動 19 32 17 38 26 24
植付け本数 (本) 5.0 4.1
  注) 土壌物理性は10×10×3cm直方体を表層から3cmおし込むのに要する力で示した。

 第5表 乾田移植の結果
  作業速度
(m/s)
田植機
滑り率
(%)
植付け姿勢 (%) 植付け
深さ
(cm)
株間

(cm)
植付け深
の変動
(CV)
株間の
変動
(CV)
直立 傾斜 倒伏 埋没 欠株
0.31 11 77 19 0 0 4 2.2 12.7 28 15
0.31 31 56 30 14 0 0 1.2 10.6 110 25
  注) ①とは作業時田植機を手で強く押したもので、②とは手で軽く押したものである。

・ 研究上の見通し次年度継続と残された問題点
 土性別・砂土作業法別・前処理別(均平操作・鎮圧操作など)に植付け精度、走行性を検討する。