【指導参考事項】
場所名  北海道農業試験場農業物理部 農業気象研究室
課題名  交流電源を使わない長期精密気象記録装置の試作
年次    昭和44年

・ 目 的
 山地草地の気象を長期にわたり自動記録して、草地の研究、国土の高度利用のための基礎デ−タ−を得ることを目的とする。

・ 試作の理由
 従来の長期気象記録装置は時計巻きにより記録がとられ、試験研究では近年電子式自動平衝記録計が主として用いられるようになった。
 前者はゼンマイ電池を動力源としているが、気温、温度はバイメタルおよび毛髪と感部としており、地温はブルトン管を使用しているので、精度に難点がある。後者は精密な測定を行うことが出来るが、交流電源を必要とする。電線のない所では交流発電機を使用すれば交流が得られるが、長期間無人運転をするには大がかりな設備が必要である。
 以上の欠点を補い、直流電源で比較的安定した、しかも精密な長期気象記録装置が必要となり試作することにした。

・ 新装置の構造
 直流電源または無電源で作動する気象計器を直流タイマ−を用いて一定時間間隔でモ−タ−ドライブカメラにより撮影記録し、現像後拡大して読み取る方法を採用した。ただし、日射量だけは電池駆動記録計に記録させた。
 1. 気象測器
  (1) 気温・湿度
     オ−ガスト型・乾・湿計(0.2℃ 目盛)
  (2) 雨量
     転倒桝型雨量計…口径20cm、0.5mmごとに電接  デジタルカウンタ−(直流6Ⅴ)で指示
  (3) 風速
     3杯型ロビンソン風力計…風程100mごとに電接  デジタルカウンタ−(DC6Ⅴ)で指示
  (4) 日射量
     エプリ−型日射計…石川産業製50型
 2. 撮影装置
  (1) 撮影装置
    ◎ ニコンモ−タ−ドライブF250
    ◎ ストロボ…東芝プロフェッショナル
       電池ナ−ス…移層電池240Ⅴ 並列2個
    ◎ タイマ−…東京時計製壁掛時計(単1 1ヶ)
       日付機構をタイマ−に改造(DC6Ⅴ)で作動
       電接時刻…3・6・9・12時(1日8回)
       モ−タ−ドライブF250は250コマの撮影が可能で、1日8回撮影で31日分記録する。

・ 使用上の問題点
 2ヶ月間使用した結果、次のことが明らかになった。
  1. 電源が電池のため、気温0℃以上の期間の測定に適する。
  2. 自動測定機関はフィルムのコマ数(最大250コマ)と電池の容量によって変えることが出来るが、1日8回以内の撮影の場合には少なくとも1ヶ月間の自動記録が可能である。日射記録計は20mm/hrの速度とすれば1ヶ月間の記録が可能である。
  3. モ−タ−ドライブ機構は極めて微妙であり、取り付け前に十分調整し、取り扱いにも習熟しておくとこが必要である。できれば、スペア−を1台確保しておくほうがよい。コネクタ−の接触不良による事故もあるので取り付け後、接触の確認をしておくとこ。
  4. 時計(タイマ−の時計も含めて)は正確であることが望ましい。使用したセイコ−の時計は1ヶ月の誤差が数分以内で良好であった。
  5. 電池交換のさいは新しい電池の電圧を確認し十分電圧の高いものを使用する。