【指導参考事項】
交雑肉用牛の育成肥育試験
北海道立新得畜産試験場
(昭和42〜43年)

・ 目 的
 従来から本道に飼養されている肉用種(和牛)と乳用種(ホルスタイン系)を母体として、これに早熟型の外国肉用種を交配した一代雑種ならびに対象として供試した和種系肉用牛について、牧草を主体とした若令肥育に対する各品種の適応性を比較検討する。

・ 試験方法
 (1) 供試牛  :8品種(D・AD・HD・N・B・AB・HR・HN)各6頭  計48頭
 (2) 試験期間:昭和42.4〜44.2月
 (3) 飼養方法:4月生まれの子牛を、D種は生後1週令から、AD、HD種は2ヵ月令から哺育。
    肉用種は生後6ヵ月令で購入、11月から全品種同一飼養条件下で舎飼育成。翌5月から10月まで全放牧。その後約2ヵ月令まで牧草主体飼養で若令肥育する。

・ 試験成果の概要
 (1) 増体:D種とD系F1の増体が比較的良く、増体日量は750g前後であった。肉用種とそのF1では、N系F1とN種が良く、AB種は増体の偏差が大で、平均では低かった。
 (2) 飼料の利用性:飼料摂取量を体重割合(DM換算)でみると、舎飼育成期には、AD、B、ABおよびN種がやや多く、肥育期でもAB、およびB種がやや多くを要した。1kg増体に要した養分量はN種が多く、B種は少なかった。
 (3) 放牧利用:放牧採食量は生草約35〜50kgで、体重のおよそ11.4〜13.6%であった。1ha当りの牧養頭数は成牛(体重500kg換算)311頭、増体量289kgであった。
 (4) と殺成績:枝肉歩どまりは、N、HN種が62%で高く、D種は57%で低かった。枝肉からの正肉および精肉歩どまりもD種が低かった。
 (5) 肥育延長:肥育期間を約4ヵ月とると、仕上がりの程度も改善され、肉質の面でも向上し、正肉歩どまりも高くなった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 (1) 増体                        (g/日)
品種/期別 D AD HD N B AB HR HN
哺乳期 665
哺育期 900 798 790
第1放牧期 842 744 685 742 661 552 710 1.142
舎飼育成期 590 612 527 468 548 484 537 527
第2放牧期 755 715 914 722 523 477 583 649
肥育期 1.298 1.193 1.088 930 1.053 982 895 1.000
全期間 768 757 744 640 615 552 613 678
肥育延長 1.071 1.214 786 743 786 1.057

 (2) 飼料の利用性 増体1kg当り所要養分量 (kg)
品種/区分 D AD HD N B AB HR HN


DM 1.5              
DCP 0.30              
TDN 1.5              


DM 2.2 2.6 2.6          
DCP 0.41 0.42 0.42          
TDN 1.8 2.1 2.0          




DM 11.6 12.0 11.5 14.9 10.4 11.8 11.3 11.7
DCP 1.06 1.09 1.05 1.37 0.99 1.10 1.05 1.08
TDN 7.4 7.4 7.3 9.4 6.7 7.5 7.2 7.4


DM 9.2 11.1 10.1 11.5 9.1 9.7 10.9 10.6
DCP 0.78 0.92 0.87 0.98 0.78 0.82 0.92 0.91
TDN 6.2 7.4 6.9 7.8 6.2 6.5 7.3 7.2

 (3) 枝肉からの正肉歩どまり (%)
品種/区分 D HD N HR AB
2ヵ月肥育 82.9 85.5 84.7 84.3
4ヵ月肥育 84.5 86.6 87.3 89.2

・ 指導上の注意事項
 (1) 若令肥育を粗飼料主体で行う場合、現状下では、肉質は中以下を目標にすること。
 (2) その場合、肥育仕上げ期間2ヵ月では短いので、3〜4ヵ月程度は必要である。
 (3) 若令肥育牛の秋期の放牧には、草量と質を考慮し、不足の場合は補助飼料を給与するか、早期に舎飼に移すようにする。