【指導参考事項】
肉用牛妊娠・授乳雌牛の舎飼期における粗飼料多給に関する試験成績
道立新得畜産試験場
(昭和42〜43)

・ 目 的
 本道の冬期舎飼期における繁殖雌牛の粗飼料主体飼養の実態を検討し、繁殖形態に合った合理的飼料給与法を明らかにすることを目的とする。

・ 試験方法
 試験Ⅰ
  肉用成雌牛A区(冬期分娩)……粗飼料NRC標準乾物量給与、B区(秋期分娩)……粗飼料自由給飼とし、A区ヘレフォ−ド種3頭、褐毛和種3頭、B区ヘレフォ−ド種3頭、黒毛和種3頭計12頭、子牛12頭、計24頭を用い180日間飼養した。
 試験Ⅱ
  肉用成雌牛A区(妊娠・授乳・春分娩牛)……粗飼料NRC標準乾物量給与、B区(妊娠若雌牛)粗飼料標準乾物量給与とし、A区ヘレフォ−ド種3頭、ショ−トホ−ン種3頭、褐毛和種3頭、B区ヘレフォ−ド種3頭、アバディ−ンアンガス種3頭計15頭、子牛9頭計24頭用い、120日間飼養した。
 試験Ⅲ
  A区(妊娠授乳成雌牛)粗飼料自由給飼、B区(妊娠・授乳成雌牛)……粗飼料自由給飼+補助飼料給与区とし、A区ヘレフォ−ド種3頭、B区ヘレフォ−ド種3頭計6頭、子牛4頭合計10頭で154日間飼養した。

・ 試験成果の概要
 試験Ⅰ
  体重増減は分娩補正し、1日1頭当たりA区−0.20kg、B区−0.22kgと体重減少し栄養状態は不良となった。哺乳子牛は母牛の泌乳量不足が原因で全般に普通発育以下であった。
 また養分摂取量は、A区分娩前106.8〜116.8%、分娩後79.2〜89.7%、B区は78.7〜82.6%と低栄養飼養となったが改良草地に放牧し体重は回復した。
 試験Ⅱ
  体重増減はA区分娩増体体重がヘレフォ−ド種1日当たり0.37kg、短角種0.17kg、分娩終了後はフェレフォ−ド種−2.25kg、短角種−2.71kg、B区若雌牛はヘレフォ−ド種0.19kg、アバディ−ンアンガス種0.02kgであった。
  養分摂取量はA区で分娩前ヘレフォ−ド種が、DM91.0%、短角種94.6%、分娩後はDM74.9%,短角種69.0%と低栄養となったが放牧により体重は回復した。
 試験Ⅲ
  体重増減は分娩前でA区、1日当り0.28kg、B区0.28kgと補助飼料給与にも拘わらず差がなく、分娩後はA区−1.22kg、B区−0.63kgとB区が減少率が少なかった。哺乳子牛は21〜22日飼養でa区0.97kg、B区0.85kgの増体結果であった。
  養分摂取量は分娩前はA区DM100.8%、B区は97.45、分娩後A区DM82.8%、B区DM88.1%と補助飼料給与しても栄養摂取割合には差がなかった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 試験Ⅰ
  養分摂取量
区分品種 養分摂取割合(分娩前) 養分摂取割合(分娩後) 全期養分摂取割合(対比)
DM DCP TDN DM DCP TDN DM DCP TDN
A区H種 106.8 124.4 106.5 79.4 82.0 66.2 89.7 96.6 70.7
 〃R種 116.8 132.3 116.2 65.2 66.4 54.4 79.2 83.0 69.1
B区H種 78.7 80.5 65.5
 〃R種 82.6 83.8 68.7

 試験Ⅱ
  養分摂取量
区分品種 養分摂取割合(分娩前) 養分摂取割合(分娩後) 全期養分摂取割合(対比)
DM DCP TDN DM DCP TDN DM DCP TDN
A区H種 91.0 142.5 85.8 74.9 99.9 71.0 86.8 131.6 81.3
  〃S種 94.6 145.4 88.3 69.0 92.6 56.7 84.2 122.8 75.0
 〃R種 92.0 143.6 86.8 72.2 97.0 59.4 88.4 134.6 81.2
B区H種 90.5 129.8 81.8
 〃R種 78.9 116.9 72.1

 試験Ⅲ
  養分摂取量
区分品種 養分摂取割合(分娩前) 養分摂取割合(分娩後) 全期養分摂取割合(対比)
DM DCP TDN DM DCP TDN DM DCP TDN
A区H種 100.8 153.4 93.9 82.8 105.3 63.7 97.8 139.8 85.0
B区H種 97.4 156.9 94.1 88.1 134.1 74.2 97.0 151.6 88.8

 指導参考上の注意事項
 (1) 冬期妊娠雌牛の分娩前(春3〜4月)粗飼料単用給与では、所要乾物量を100%摂取が期待される。
 (2) 冬期妊娠雌牛の分娩後要求量は極めてたかく粗飼料並質程度(採食量体重の20%)では濃厚飼料給与が必要である。分娩後1ヵ月程度で放牧可能な場合は或る程度補助飼料を節減しうる。