【指導参考事項】
豚の雑種利用に関する試験成績
滝川畜産試験場 養豚科
(昭和38〜44年)

・ 目 的
 効率的な子豚生産と産肉性の高い肉豚生産を目的とした雑種利用方式をあきらかにするために、ランドレ−スを母体とする1代雑種の産肉性。1代雑種雌豚の繁殖性および3元雑種の産肉性について、一連の試験を行った。

・ 試験方法
 1代雑種の産肉性は、46腹、延べ180頭の子豚を供試し、1代雑種雌豚の繁殖性は、延べ81腹の1代雑種母豚と対照として同数の中ヨ−クシャ−およびランドレ−ス母豚を供試し、叉3元雑種の産肉性は57腹、延べ226頭の子豚を供試してそれぞれ調査した。

・ 試験成果の概要
 1. ランドレ−スを母体とする1代雑種生産品種として、ハンフシャ−が適し、中ヨ−クシャ−およびパ−クシャ−は不適であった。大ヨ−クシャ−の適正は不明であったが、他の試験機関の成績等をも考慮するならば、ある程度は認めてよいものと思われた。
 2. 1代雑種雌豚は高い繁殖性を有することが明らかであった。
 3. 3元雑種の産肉性は、品種の組合せにより大きな差異がみられ、中ではLW、H、LH・WおよびYL・Wの3組の3元雑種が高い産肉性を示した。
 4. 以上のようなことから、今後の雑種利用方式として、ランドレ−スを母体とするL・H、L・Wならびにこれらを母体とするLH・W、LW・Hの方向が考えられた。また、一部には中ヨ−クシャ−を母体としたY・Lならびにこれを母体としたYL・Wも残るものと考えられる。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 ランドレ−スを母体とする1代雑種の産肉性
期別 区分 列数
(頭)
90kg
日令
(日)
1日平均
増体量
(g)
飼料
要求率
と肉
歩留
(%)
背腰量

(cm)
ロ−ス
断面積
(cm)
背脂肪
層の厚さ
(cm)
ハムの
割合
(%)

1
L・Y 14 181 645 3.55 73.3 67.9 15.3 3.31 30.4
L・E 16 187 645 3.50 73.6 67.3 16.1 3.00 30.2
L・H 15 185 654 3.42 72.9 68.2 16.0 2.60 31.2
L 16 200 623 3.60 73.3 71.0 14.8 2.75 31.4

3
L・H 31 177 680 3.34 72.9 68.1 17.0 2.70 31.7
L・W 28 183 655 3.47 72.2 71.0 14.3 2.90 31.6
L 32 186 658 3.43 72.9 70.3 16.2 2.74 32.5
  注) 第2期試験の成績は省略

 1代雑種雌豚の繁殖性
期別 区分 列数
(頭)
産子数
(頭)
哺育開
始頭数
(頭)
7週令
頭数
(頭)
哺育率
(%)
生時平
均体重
(kg)
3週令 7週令平
均体重
(kg)
総体重
(kg)
平均体重
(kg)

2
1代雑種 46 10.2 9.3 8.3 89.3 1.44 44.31 5.11 11.68
中ヨ−クシャ− 46 10.3 9.2 7.7 83.5 1.19 35.21 4.43 8.67
ランドレ−ス 46 9.9 9.3 7.4 80.3 1.39 40.02 5.13 11.23
  注) 第1期試験の成績は省略

 3元雑種雌豚の産肉性
期別 区分 例数
(頭)
90kg
日令
1日平均
増体量
(g)
飼料
要求量
と肉
歩留
(%)
背腰量

(cm)
ロ−ス
断面積
(cm)
背脂肪
層の厚さ
(cm)
ハムの
割合
(%)

1
YL・H 12 195 610 3.59 74.0 66.9 16.7 2.75 38.2
LH・Y 12 200 572 3.82 73.8 66.3 17.8 3.14 30.9

2
YL・W 46 177 688 3.35 71.6 69.1 14.4 3.15 30.9
LH・W 64 178 674 3.37 72.0 68.7 14.6 3.02 31.9
LW・H 60 173 699 3.24 72.4 67.3 15.0 3.04 31.6
L 56 183 667 3.40 73.0 70.6 16.3 2.74 32.2
  注) 第1期試験の他の8組は省略

・ 指導参考事項の注意事項
 1. ランドレ−スの新規導入に際しては、飼養管理法の改善をはかる。
 2. 品種の選択と同時に個畜の選定にも十分な注意を払う。
 3. 品種の選択ならびに組合せ方式は、地域ブロック単位で考慮すべきであり、そのための指導体制の強化が望ましい。
 4. 雑種生産の基礎となる純粋豚の確保と改良増殖のための組織の確立が必要である。