【指導参考事項】
小型冷蔵庫による豚肉の凍結貯蔵について
滝川畜産試験場 飼養科
(昭和41〜43年)

・ 目 的
 農家において、生産畜肉を自家貯蔵して利用することは、経済的にも、また、食生活を合理的に改善する面からも有効と考えられる。本試験では小型冷蔵庫による豚肉の凍結貯蔵法および解凍方法について検討する。

・ 試験方法
 試験Ⅰ  普通冷蔵庫による貯蔵との比較試験
 試験Ⅱ  小型冷蔵庫による豚肉の凍結貯蔵と肉質について
 試験Ⅲ  凍結貯蔵肉の解凍方法について
  供試材料
 1. 小型冷蔵庫:ボックス型、上ぶた式、125L×2(-21℃±1℃)
 2. 供試肉:豚の背肉

・ 試験成果の概要
 1. 普通冷蔵庫による貯蔵の場合の貯蔵限界は15日程度であった。一方、小型冷蔵庫による貯蔵では6ヵ月間何ら腐敗の徴候を示さなかった。
 2. 小型冷蔵庫による凍結貯蔵肉の品質は、PH値、T・B・A値においては6ヵ月間変化せず、保水力では3ヵ月以後に僅かに増加する傾向を示した。しかし、色調では貯蔵が進むに従って悪化する傾向がみられ、叉、官能検査の結果でも6ヵ月間の貯蔵肉は3ヵ月目までの肉に対して不良であった。
  したがって、小型冷蔵庫による豚肉の凍結貯蔵は貯蔵期間が3ヵ月までは問題はないが、6ヵ月では問題が残る。
 3. 凍結貯蔵肉の解凍方法としては、普通冷蔵庫内で徐々に行うのが室温水、温水等の条件下で行なうよりも良かった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 試験Ⅰ
区 分 測定項目 0 2 5 10 15 20 25 30日
普 通
冷蔵庫
PH 5.42 5.53 5.33 5.53 5.77 5.88 6.14 6.16
揮発性塩基態窒素 9.1 9.1 9.5 10.8 16.0 17.8 20.5 21.6
保水力 60.0 61.0 65.0 66.0 70.0 71.0 72.5 74.0
分離液汁量 3.0 4.7 5.5 6.3 6.3 7.0 8.2
小 型
冷蔵庫
PH 5.42 5.50 5.53 5.58 5.50 5.51 5.63 5.50
揮発性塩基態窒素 9.1 9.1 9.1 9.1 10.0 10.0 10.0 10.0
保水力 60.0 62.5 62.0 63.5 64.0 65.0 64.2 64.0
分離液汁量 4.5 3.5 4.0 4.7 5.0 4.0 3.8

 試験Ⅱ
測定項目 凍結前 0 1 3 6月
PH 5.52 5.52 5.54 5.52 5.33
保水力 59.0 60.0 60.0 60.0 63.0
ドリップ量   12.0 14.0 12.3 13.0
T・B・A値 0.08 0.08 0.13 0.13 0.13
色調 明度 43.5 41.8 41.0 38.5 39.5
彩度 8.6 8.4 8.4 8.1 8.1
色調 0.25 0.30 0.30 0.30 3.38

 試験Ⅲ
測定項目 凍結前 普通冷蔵庫 室温 冷水 温水
解凍に要した時間   18時間 4 3 50分
PH 5.51 5.54 5.54 5.53 5.54
保水力 56.0 61.0 63.0 62.0 63.0
ドリップ量   12.0 17.0 15.0 12.0
色調 明度 46.0 38.0 40.2 40.2 42.5
彩度 8.0 7.8 6.8 5.0 7.0
色調 0.42 0.27 0.44 0.38 0.46

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 1. 冷蔵庫への豚肉の貯蔵量は1kg当り1〜1.5Lとして決める。
 2. 貯蔵肉1個当りの重量は1回に用いる量を基準とする。
 3. 貯蔵肉の包装には気密なビニ−ル袋を用いる。
 4. 他食品との混入は出来る限り控える方が良いが、混入する時は中仕切をすることが望ましい。
 5. 解凍は冷蔵庫内で行うのが良いが、急速解凍を要する場合でも冷水中での解凍にとどめるべきである。